夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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それぞれの旅立ち

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 「おぉ…昨夜は気付かなかったが、あんなに葡萄畑が……」

 目の前に広がる葡萄畑に、ダルシャは愛しげに目を細めた。



 「ダルシャ、進むのはそっちじゃなくてこっちよ。
 暗くなると魔物の数は多くなるそうだから急がないと…
 ……でも、あなた、本当に大丈夫なの?」

 「セリナ…君はまだ若いのに、今からそんなに口うるさく言ってたら男性に煙たがられるぞ。
 魔物の数が少し増えるくらい、そんなこと私には関係ない。」

 「だけど、荷物だってそんなにあるし…」

 「なぁに、エリオットの荷物とワインが4本増えただけじゃないか。
 本当ならワインはもっと買っておきたいのだがな…」

 「それはまた旅行でここに来た時にでもしてちょうだい。
じゃあ、早く行きましょう。」

 名残惜しそうに呟くダルシャに、セリナは厳しい一言を返して歩き出す。
ダルシャは、その言葉に肩をすくめ苦笑いを浮かべながら、セリナの後に続いた。



 「ダルシャ、このあたりの魔物は強暴ではないらしいから追い払うだけにしてね。」

 「あぁ、わかっている。
 私も無駄にこの剣を血で汚したくはない。
そうピリピリしなくても大丈夫だ。
……そんなことよりも、セリナ、めったにはない二人っきりの旅を楽しもうじゃないか。」

そう言って片目を瞑るダルシャに、セリナは小さなため息を吐いた。



 「……さぁ、急ぎましょ…」



ダルシャは酔っ払ってはいたが、本人が自慢するだけのことはあり、見事に魔物達を峰打ちでなぎ払っていった。
 魔物の数が増えて来ると、セリナも棒切れを振りまわして応戦した。



 「セリナ…君はレディなんだからそんなことはやらなくて良い。
 私の後ろに控えていなさい。」

 「私はレディなんかじゃないわ。
 今までは一人で旅をしてたんだもの。
このくらいのこと、私にだって出来るわよ。
それより、ダルシャ、暗くなり始めて来たわ。
 急ぎましょう!」

セリナはそう言って足早に歩き出す。



 「セリナ…今日の君はなんだかとてもクールだね…」

 切ないダルシャの呟きは、セリナの耳には届かなかった…

 
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