夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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それぞれの旅立ち

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 「どうだ?楽になったか?」

ジャックは、フレイザーとは視線を合わさず、ただ黙って頷いた。



 「どれどれ…」

 「あ……」

フレイザーは、自分の額をジャックの額に押し当てた。



 「まだ少し熱があるみたいだな。
 横になってろ。」

 「……大丈夫だよ。」

 「良いから寝てろって。
そうじゃなくとも、もうとっくに寝る時間だ。
 俺もそろそろ寝ようかな…今日は誰かのおかげで疲れたからな。」

フレイザーが横になるのを見ると、ジャックもおとなしく隣のベッドに身を横たえた。



 「こんなことなら、熱さましの薬ももらっとけば良かったな。
 俺はめったに熱なんか出ないからもらってないんだ。」

ジャックは、フレイザーに背を向けたまま、何も答えなかった。



 「さっきの薬な、知り合いの薬師の爺さんが作ったもんなんだけど、本当に良く効くんだ。
 俺も初めて船に乗った時は大陸に着くまで命が持たないって思う位、酷い船酔いにあったんだけど、今回はこの薬のおかげで快適に過せてるんだ。
……おまえ、ひょっとして船に乗るのは初めてなのか?」

 「……うん。」

 少年は、小さな声でそれだけ答えた。



 「そうか、そりゃあ大変だったな。
しかし、不思議だと思わないか?
 俺の仲間も初めて船に乗って全然なんともない奴もいれば、俺と一緒に死にそうになってた奴もいるんだ、
ダルシャの話によると、慣れたら酔わないってことだったけど、慣れる程船に乗るなんて金持ちだけだよな?」

ジャックからの返事はなかったが、フレイザーはなおも話し続ける。



 「だいたい、船賃も高すぎると思わないか?
かといって、船以外に移動手段はないしな。
あ、そういえば、俺の仲間に魔法使いがいるんだ。
そいつは飛行の魔法も使えるんだが、魔法っていうのは自分の体力…か、なんか知らないけど力を使うっていうじゃないか。
 俺達全員を連れて、遠い隣の大陸まで飛んで行くっていうのはいくらなんでも無理だからなぁ…」

またしてもジャックからの反応はなかった。
フレイザーが耳を澄ますと、小さな寝息が聞こえる。



 (……なんだ、寝ちまったのか…)

フレイザーは、ジャックの背中を見ながら、小さく微笑んだ。
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