102 / 802
魔物の森
11
しおりを挟む
「願い事?
カインがこの石に願いをかけたのか?」
カインは黙って頷いた。
「ねぇねぇ、カインは何を願ったの?」
「そ、それはだな…」
「わかったぞ!
素敵な奥さんがほしいとか…じゃないか?」
「な、な、な、なんでわかった!」
カインの驚きようは尋常なものではなかった。
「本当にそうなのか?」
冗談のつもりで言ったことが当ってしまったと知り、当のダルシャは目を丸くする。
「そいつは良いな。
カインもお年頃なんだ…」
脇腹を肘で小突くフレイザーに、カインは仏頂面をして背を向けた。
「そう言えば、カイン。
君のご家族はいないのか?」
「あぁ…おふくろも昨年亡くなっちまったからな。
元々ここには僅かの獣人達しかいなかったんだ。
しかも、子供が出来たのはうちの両親の間だけ。
年月と共に、皆、死に絶え、今ここに残ってるのは俺だけだ。」
そう呟くカインの横顔は、とても寂しいものだった。
「そうだったのか、だから、あんたは嫁さんを…
茶化してすまなかったな…」
「……良いんだ。
親父は亡くなる時に、おふくろと願い石を守っていくように俺に遺言した。
だけど、おふくろが亡くなった後、どうにも悲しくて石に願いをかけちまったんだ。
この願い石はとても大切なもの…仲間になにかあった時に使わなきゃなんねぇものなのに…」
「馬鹿だなぁ…
嫁さんをもらおうとしたのはあんたらの村のためになることじゃないか。
このまま、あんたがここに一人でいたんじゃ、この村は滅んじまうんだから。
あんたの願い事は何も間違っちゃいなかったんだ。」
「フレイザーの言う通りよ!」
皆、口々にカインに向かい励ましの言葉を投げかける。
「カインさん、すまんかったのう…
わしの先祖がつまらんもんを渡してしもうて…」
「そんなことないさ。
俺達はずっとあんたの先祖への感謝を忘れなかった。
あんたの先祖がこうして匿ってくれなかったら、俺だってこうして生きちゃなかったかもしれないんだからな。
ありがとうよ!」
カインとダグラスは、再び熱い握手を交わした。
カインがこの石に願いをかけたのか?」
カインは黙って頷いた。
「ねぇねぇ、カインは何を願ったの?」
「そ、それはだな…」
「わかったぞ!
素敵な奥さんがほしいとか…じゃないか?」
「な、な、な、なんでわかった!」
カインの驚きようは尋常なものではなかった。
「本当にそうなのか?」
冗談のつもりで言ったことが当ってしまったと知り、当のダルシャは目を丸くする。
「そいつは良いな。
カインもお年頃なんだ…」
脇腹を肘で小突くフレイザーに、カインは仏頂面をして背を向けた。
「そう言えば、カイン。
君のご家族はいないのか?」
「あぁ…おふくろも昨年亡くなっちまったからな。
元々ここには僅かの獣人達しかいなかったんだ。
しかも、子供が出来たのはうちの両親の間だけ。
年月と共に、皆、死に絶え、今ここに残ってるのは俺だけだ。」
そう呟くカインの横顔は、とても寂しいものだった。
「そうだったのか、だから、あんたは嫁さんを…
茶化してすまなかったな…」
「……良いんだ。
親父は亡くなる時に、おふくろと願い石を守っていくように俺に遺言した。
だけど、おふくろが亡くなった後、どうにも悲しくて石に願いをかけちまったんだ。
この願い石はとても大切なもの…仲間になにかあった時に使わなきゃなんねぇものなのに…」
「馬鹿だなぁ…
嫁さんをもらおうとしたのはあんたらの村のためになることじゃないか。
このまま、あんたがここに一人でいたんじゃ、この村は滅んじまうんだから。
あんたの願い事は何も間違っちゃいなかったんだ。」
「フレイザーの言う通りよ!」
皆、口々にカインに向かい励ましの言葉を投げかける。
「カインさん、すまんかったのう…
わしの先祖がつまらんもんを渡してしもうて…」
「そんなことないさ。
俺達はずっとあんたの先祖への感謝を忘れなかった。
あんたの先祖がこうして匿ってくれなかったら、俺だってこうして生きちゃなかったかもしれないんだからな。
ありがとうよ!」
カインとダグラスは、再び熱い握手を交わした。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
虐げられた武闘派伯爵令嬢は辺境伯と憧れのスローライフ目指して魔獣狩りに勤しみます!~実家から追放されましたが、今最高に幸せです!~
雲井咲穂(くもいさほ)
ファンタジー
「戦う」伯爵令嬢はお好きですか――?
私は、継母が作った借金のせいで、売られる形でこれから辺境伯に嫁ぐことになったそうです。
「お前の居場所なんてない」と継母に実家を追放された伯爵令嬢コーデリア。
多額の借金の肩代わりをしてくれた「魔獣」と怖れられている辺境伯カイルに身売り同然で嫁ぐことに。実母の死、実父の病によって継母と義妹に虐げられて育った彼女には、とある秘密があった。
そんなコーデリアに待ち受けていたのは、聖女に見捨てられた荒廃した領地と魔獣の脅威、そして最凶と恐れられる夫との悲惨な生活――、ではなく。
「今日もひと狩り行こうぜ」的なノリで親しく話しかけてくる朗らかな領民と、彼らに慕われるたくましくも心優しい「旦那様」で??
――義母が放置してくれたおかげで伸び伸びこっそりひっそり、自分で剣と魔法の腕を磨いていてよかったです。
騎士団も唸る腕前を見せる「武闘派」伯爵元令嬢は、辺境伯夫人として、夫婦二人で仲良く楽しく魔獣を狩りながら領地開拓!今日も楽しく脅威を退けながら、スローライフをまったり楽しみま…す?
ーーーーーーーーーーーー
読者様のおかげです!いつも読みに来てくださり、本当にありがとうございます!
1/18 HOT 1位 ファンタジー 9位 ありがとうございました!!!
1/17 HOT 1位 ファンタジー 12位 ありがとうございました!!!
1/16 HOT 1位 ファンタジー 15位 ありがとうございました!!!
1/15 HOT 1位 ファンタジー 21位 ありがとうございました!!!
1/14 HOT 8位 ありがとうございました!
1/13 HOT 29位 ありがとうございました!
X(旧Twitter)やっています。お気軽にフォロー&声かけていただけましたら幸いです!
@toytoinn
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる