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ヨギラの町
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「良かった…」
フレイザーとエリオットが宿に戻った途端、二人を待ち構えるようにしてラスターがそう呟いた。
「そんなに前の服はおかしかったか?」
「え…?あぁ、俺が言ったのはそんなことじゃないんだ。
あんた達が戻って来なかったら、俺、宿賃も払えないしどうしようかと…」
「何ぃ?
俺達が、おまえを置いてどこかに行くかと思ったのか?」
「……だって、俺なんかいない方が、あんたらは楽じゃないか。
俺はあんたらから食料を奪おうとした。
物騒な奴だと思ってるだろ…?」
「そりゃあ思ってるさ!
でも、いろんなことを教えてくれたし、俺達、ほら…まだ記憶が曖昧だし、おまえには助けてもらってるんだよ。
置いていくはずないじゃないか。
俺達にはおまえが必要なんだ。」
「本当か?本当にそう思ってくれてるのか?」
ラスターの真っ直ぐな瞳に、フレイザーの心は痛んだ。
(すまん、ラスター…)
「もちろんだよ。
ラスター、これからも僕達のことよろしくね。」
「う…うん、こっちこそよろしくな!」
エリオットとラスターは、顔を見合わせて微笑んだ。
「しかし、イラズルの毒にしてはなかなか記憶が戻らないな。
何か、思い出すことはないのか?」
「さっき…君が願いの石のことを言ったよね。
僕、なんだかあの話を聞いた時、妙にひかれる気がしたんだ。
願いの石のことをもう少し詳しく教えてもらえない?」
「詳しくって言ってもなぁ…
とにかくどんなことでも願いが叶う石だってことだ。」
「もうちょっと何かないのかよ。
どんな石だとか、どこにあるとか…」
ラスターは、記憶の糸を手繰るように宙を見つめながら、願いの石について知っていることをぽつりぽつりと話し始めた。
ラスターの話によると、その石は人間の拳大の鮮やかな色の石で、その石を手に持ち願い事を言うと、どんな願いも叶うのだという。
そして、その願いが叶えられると、その石は砂のように粉々に壊れてしまうのだとか…
残念なことに、その石のありかについてはラスターも皆目わからないと言う。
「それじゃあ、探しようがないな…
何か、あてはないか?」
「あては…ないことはない…」
「あるのか?!」
ラスターはその言葉に深く頷いた。
「良かった…」
フレイザーとエリオットが宿に戻った途端、二人を待ち構えるようにしてラスターがそう呟いた。
「そんなに前の服はおかしかったか?」
「え…?あぁ、俺が言ったのはそんなことじゃないんだ。
あんた達が戻って来なかったら、俺、宿賃も払えないしどうしようかと…」
「何ぃ?
俺達が、おまえを置いてどこかに行くかと思ったのか?」
「……だって、俺なんかいない方が、あんたらは楽じゃないか。
俺はあんたらから食料を奪おうとした。
物騒な奴だと思ってるだろ…?」
「そりゃあ思ってるさ!
でも、いろんなことを教えてくれたし、俺達、ほら…まだ記憶が曖昧だし、おまえには助けてもらってるんだよ。
置いていくはずないじゃないか。
俺達にはおまえが必要なんだ。」
「本当か?本当にそう思ってくれてるのか?」
ラスターの真っ直ぐな瞳に、フレイザーの心は痛んだ。
(すまん、ラスター…)
「もちろんだよ。
ラスター、これからも僕達のことよろしくね。」
「う…うん、こっちこそよろしくな!」
エリオットとラスターは、顔を見合わせて微笑んだ。
「しかし、イラズルの毒にしてはなかなか記憶が戻らないな。
何か、思い出すことはないのか?」
「さっき…君が願いの石のことを言ったよね。
僕、なんだかあの話を聞いた時、妙にひかれる気がしたんだ。
願いの石のことをもう少し詳しく教えてもらえない?」
「詳しくって言ってもなぁ…
とにかくどんなことでも願いが叶う石だってことだ。」
「もうちょっと何かないのかよ。
どんな石だとか、どこにあるとか…」
ラスターは、記憶の糸を手繰るように宙を見つめながら、願いの石について知っていることをぽつりぽつりと話し始めた。
ラスターの話によると、その石は人間の拳大の鮮やかな色の石で、その石を手に持ち願い事を言うと、どんな願いも叶うのだという。
そして、その願いが叶えられると、その石は砂のように粉々に壊れてしまうのだとか…
残念なことに、その石のありかについてはラスターも皆目わからないと言う。
「それじゃあ、探しようがないな…
何か、あてはないか?」
「あては…ないことはない…」
「あるのか?!」
ラスターはその言葉に深く頷いた。
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