60 / 121
ナルシスト
1
しおりを挟む
(……ん?)
俺は、ショウウィンドウにそっと近付いた。
なんだ、俺が映ってただけか。
えらくカッコイイ奴がいるなと思ったら…
俺は思わず苦笑した。
(……ん?)
通りすがりの若い女性の二人組が、俺の方を見ながら、何事かを囁きあってる。
きっと、芸能人の○○に似てるとか、彼女がいるかどうかを話しているのだろう。
そりゃあ、気にはなるだろう。
俺は優雅に手を振ってやった。
彼女達は真っ赤になって駆けて行った。
今時、純情で可愛らしいな。
俺は特定の彼女は作らないと決めている。
一人に決めたら、他の女性達が悲しむし、俺の取り合いでトラブルでも起きたら大変だからだ。
俺は諍いは嫌いだ。
だから、トラブルになりそうなことは最初から避けている。
大学でも、彼女はいらないと公言している。
バレンタインデーのチョコだって、もちろん禁止だ。
禁止と言っても聞かないだろうと思い、俺は甘いものが苦手だと触れ回った。
それなのに、今年はチョコを渡して来る者がいた。
本当なら断るところだが、幸い誰もいないところでの出来事だったから、受け取ることにした。
俺は女性の涙が苦手だからだ。
考えてみれば、悪いのはすべて俺なんだ。
俺がこんなにカッコイイんだから、女性達が夢中になるのも当然だ。
もうひとつ、厄介なイベントがある。
誕生日だ。
俺は、年を取りたくないから誕生日を祝わないと話した。
そんな無理矢理な理由にも、女性達は応じてくれた。
本当に申し訳ない。
みんな、俺にプレゼントを渡したりパーティを開きたいだろうに。
でも、そこで俺の取り合いが始まったら大変だ。
だからやっぱり出来ない。
俺のようなカッコイイ男は、孤独でいるしかないんだ。
辛いけど、皆のためだ。
そのおかげで、俺のまわりでは特にトラブルもなく、なんとか平和に過ごせている。
大変なことだが、これからも俺はこのスタンスを続けていくつもりだ。
俺を愛してくれる数多くの女性達のために。
*
「なに、あの男…すっごい趣味悪い……」
「麻里奈、知らないの?
経済学部のナル男、山田照男。有名よ。」
「え?あんな不細工でナル?」
「そうなんだよね。だから、彼女はおろか、友達もいないらしいよ。」
「へぇ~…確かにあれじゃあ、友達も出来ないわ。」
そんな現実も知らず、山田は今日も耽美な自己愛に陶酔する。
俺は、ショウウィンドウにそっと近付いた。
なんだ、俺が映ってただけか。
えらくカッコイイ奴がいるなと思ったら…
俺は思わず苦笑した。
(……ん?)
通りすがりの若い女性の二人組が、俺の方を見ながら、何事かを囁きあってる。
きっと、芸能人の○○に似てるとか、彼女がいるかどうかを話しているのだろう。
そりゃあ、気にはなるだろう。
俺は優雅に手を振ってやった。
彼女達は真っ赤になって駆けて行った。
今時、純情で可愛らしいな。
俺は特定の彼女は作らないと決めている。
一人に決めたら、他の女性達が悲しむし、俺の取り合いでトラブルでも起きたら大変だからだ。
俺は諍いは嫌いだ。
だから、トラブルになりそうなことは最初から避けている。
大学でも、彼女はいらないと公言している。
バレンタインデーのチョコだって、もちろん禁止だ。
禁止と言っても聞かないだろうと思い、俺は甘いものが苦手だと触れ回った。
それなのに、今年はチョコを渡して来る者がいた。
本当なら断るところだが、幸い誰もいないところでの出来事だったから、受け取ることにした。
俺は女性の涙が苦手だからだ。
考えてみれば、悪いのはすべて俺なんだ。
俺がこんなにカッコイイんだから、女性達が夢中になるのも当然だ。
もうひとつ、厄介なイベントがある。
誕生日だ。
俺は、年を取りたくないから誕生日を祝わないと話した。
そんな無理矢理な理由にも、女性達は応じてくれた。
本当に申し訳ない。
みんな、俺にプレゼントを渡したりパーティを開きたいだろうに。
でも、そこで俺の取り合いが始まったら大変だ。
だからやっぱり出来ない。
俺のようなカッコイイ男は、孤独でいるしかないんだ。
辛いけど、皆のためだ。
そのおかげで、俺のまわりでは特にトラブルもなく、なんとか平和に過ごせている。
大変なことだが、これからも俺はこのスタンスを続けていくつもりだ。
俺を愛してくれる数多くの女性達のために。
*
「なに、あの男…すっごい趣味悪い……」
「麻里奈、知らないの?
経済学部のナル男、山田照男。有名よ。」
「え?あんな不細工でナル?」
「そうなんだよね。だから、彼女はおろか、友達もいないらしいよ。」
「へぇ~…確かにあれじゃあ、友達も出来ないわ。」
そんな現実も知らず、山田は今日も耽美な自己愛に陶酔する。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約者様の仰られる通りの素晴らしい女性になるため、日々、精進しております!
つくも茄子
ファンタジー
伯爵令嬢のバーバラは幼くして、名門侯爵家の若君と婚約をする。
両家の顔合わせで、バーバラは婚約者に罵倒されてしまう。
どうやら婚約者はバーバラのふくよかな体形(デブ)がお気に召さなかったようだ。
父親である侯爵による「愛の鞭」にも屈しないほどに。
文句をいう婚約者は大変な美少年だ。バーバラも相手の美貌をみて頷けるものがあった。
両親は、この婚約(クソガキ)に難色を示すも、婚約は続行されることに。
帰りの馬車のなかで婚約者を罵りまくる両親。
それでも婚約を辞めることは出来ない。
なにやら複雑な理由がある模様。
幼過ぎる娘に、婚約の何たるかを話すことはないものの、バーバラは察するところがあった。
回避できないのならば、とバーバラは一大決心する。
食べることが大好きな少女は過酷なダイエットで僅か一年でスリム体形を手に入れた。
婚約者は、更なる試練ともいえることを言い放つも、未来の旦那様のため、引いては伯爵家のためにと、バーバラの奮闘が始まった。
連載開始しました。
猫ばっかり構ってるからと宮廷を追放された聖女のあたし。戻ってきてと言われてももう遅いのです。守護結界用の魔力はもう別のところで使ってます!
友坂 悠
ファンタジー
あたし、レティーナ。
聖女だけど何もお仕事してないって追放されました。。
ほんとはすっごく大事なお仕事してたのに。
孤児だったあたしは大聖女サンドラ様に拾われ聖女として育てられました。そして特別な能力があったあたしは聖獣カイヤの中に眠る魔法結晶に祈りを捧げることでこの国の聖都全体を覆う結界をはっていたのです。
でも、その大聖女様がお亡くなりになった時、あたしは王宮の中にあった聖女宮から追い出されることになったのです。
住むところもなく身寄りもないあたしはなんとか街で雇ってもらおうとしますが、そこにも意地悪な聖女長さま達の手が伸びて居ました。
聖都に居場所の無くなったあたしはカイヤを連れて森を彷徨うのでした……。
そこで出会った龍神族のレヴィアさん。
彼女から貰った魔ギア、ドラゴンオプスニルと龍のシズクを得たレティーナは、最強の能力を発揮する!
追放された聖女の冒険物語の開幕デス!
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?
名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」
「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」
「それは貴様が無能だからだ!」
「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」
「黙れ、とっととここから消えるがいい!」
それは突然の出来事だった。
SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。
そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。
「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」
「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」
「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」
ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。
その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。
「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる