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おみくじ
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(よし、頑張るぞ!
今年こそ…!)
僕は、恐る恐る六角形の筒に手を伸ばす。
後ろからは小さな舌打ちの音が聞こえた。
こんなに並んでる人がいるのに、僕がさっさとやらないからだろう。
だけど、僕にとっては大切なことなんだ。
周りの人を気遣ってる余裕なんてない。
気合いを込めて、僕は六角形の筒を振る。
ラッキーセブンにあやかって振るのは七回と決めてきた。
小さな穴から飛び出た木の棒を、僕は息を飲んでじっとみつめた。
(……どうか、良い結果でりますように…!)
僕が若い巫女さんにその番号を告げると、巫女さんはにこやかな笑みと共に、内側に軽く折り曲げたおみくじを手渡してくれた。
人ごみを掻き分け、僕は少し拓けた場所に出た。
そして、恐る恐るおみくじを広げる…
(末吉……)
末吉…それが何番目に良い運勢なのか、僕にははっきりとはわからない。
ただ、特別良いものではなく、かといって特別悪いものでもないことがなんとなくわかるだけだが、僕ががっかりしたことだけは間違いない。
ここ数年の僕は、どうにもパッとしない生活が続いてた。
日常にハリがないというのか、充実感のようなものが感じられない。
同じような毎日の繰り返しに僕はつくづく飽き飽きしていた。
考えてみれば、ここ数年ひいたおみくじは確か半吉に小吉に末小吉…
おみくじのことなんて、今まではたいして気にしていなかった筈なのに、こうなってくると急に気になり始めた。
だからこそ、今年は良い運を引き当てたいと思ったのに…!
「おぅ!桜田じゃないか!」
「え……?」
振り向いた先には、知り合いの緒方がいた。
家も近く高校まで一緒だったが、年が二つ違うしそれほど仲良くしていたわけではない。
そもそも、二つ年下のくせに僕を呼び捨てにするあたりからして気に食わない。
「久しぶりだなぁ…」
「そうだね。」
本当は違う。
一週間程前、僕は駅前で緒方をみかけた。
緒方は可愛い女の子と一緒で僕の事になんて気付いてなかったけど…
「今日は…」
緒方が何かを話しかけた時携帯に着信があり、何事かを陽気に話していた。
「あぁ、じゃ、一人連れていくよ。」
電話を切ると、緒方は僕の腕を掴んだ。
「な、なんだよ。」
「合コンのメンバーが足りないらしいんだ。
桜田、これも何かの縁だ。
一緒に行こう!」
「ご、ご、合コン!?」
僕は今まで合コンなんて一度も行ったことがない。
心の中は激しく混乱していたが、僕はそれを悟られまいとにこやかに微笑んだ。
「そんな緊張しなくって大丈夫だって。
さ、行くぞ!」
「え…!?」
僕のポーズは見事に見破られていた。
今年の運は末吉だけど…少し面白い年になりそうな予感がしてきた…
今年こそ…!)
僕は、恐る恐る六角形の筒に手を伸ばす。
後ろからは小さな舌打ちの音が聞こえた。
こんなに並んでる人がいるのに、僕がさっさとやらないからだろう。
だけど、僕にとっては大切なことなんだ。
周りの人を気遣ってる余裕なんてない。
気合いを込めて、僕は六角形の筒を振る。
ラッキーセブンにあやかって振るのは七回と決めてきた。
小さな穴から飛び出た木の棒を、僕は息を飲んでじっとみつめた。
(……どうか、良い結果でりますように…!)
僕が若い巫女さんにその番号を告げると、巫女さんはにこやかな笑みと共に、内側に軽く折り曲げたおみくじを手渡してくれた。
人ごみを掻き分け、僕は少し拓けた場所に出た。
そして、恐る恐るおみくじを広げる…
(末吉……)
末吉…それが何番目に良い運勢なのか、僕にははっきりとはわからない。
ただ、特別良いものではなく、かといって特別悪いものでもないことがなんとなくわかるだけだが、僕ががっかりしたことだけは間違いない。
ここ数年の僕は、どうにもパッとしない生活が続いてた。
日常にハリがないというのか、充実感のようなものが感じられない。
同じような毎日の繰り返しに僕はつくづく飽き飽きしていた。
考えてみれば、ここ数年ひいたおみくじは確か半吉に小吉に末小吉…
おみくじのことなんて、今まではたいして気にしていなかった筈なのに、こうなってくると急に気になり始めた。
だからこそ、今年は良い運を引き当てたいと思ったのに…!
「おぅ!桜田じゃないか!」
「え……?」
振り向いた先には、知り合いの緒方がいた。
家も近く高校まで一緒だったが、年が二つ違うしそれほど仲良くしていたわけではない。
そもそも、二つ年下のくせに僕を呼び捨てにするあたりからして気に食わない。
「久しぶりだなぁ…」
「そうだね。」
本当は違う。
一週間程前、僕は駅前で緒方をみかけた。
緒方は可愛い女の子と一緒で僕の事になんて気付いてなかったけど…
「今日は…」
緒方が何かを話しかけた時携帯に着信があり、何事かを陽気に話していた。
「あぁ、じゃ、一人連れていくよ。」
電話を切ると、緒方は僕の腕を掴んだ。
「な、なんだよ。」
「合コンのメンバーが足りないらしいんだ。
桜田、これも何かの縁だ。
一緒に行こう!」
「ご、ご、合コン!?」
僕は今まで合コンなんて一度も行ったことがない。
心の中は激しく混乱していたが、僕はそれを悟られまいとにこやかに微笑んだ。
「そんな緊張しなくって大丈夫だって。
さ、行くぞ!」
「え…!?」
僕のポーズは見事に見破られていた。
今年の運は末吉だけど…少し面白い年になりそうな予感がしてきた…
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