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浮気

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「カナ…ちょっとトイレに行って来るね。」

「う、うん。」

まただ……翼君がトイレに行くのは、今日一体何度目のことだろう?
しかも、その度に翼君は携帯をポケットに入れていく。



翼君の様子がおかしくなってきたのは、最近のこと。
今まで、翼君がトイレに携帯を持っていくことなんてなかったから、その時から少し妙な気がしてた。
でも、たまたまなのかもしれない…
私は辛い想像をするのがいやで、深く考えない事にした。
だけど、それからも翼君はトイレに行く時には必ず携帯を持っていくようになって、しかも、戻って来たらいつもすごく嬉しそうな笑顔を浮かべてる。
本人的にはきっと隠してるつもりなんだろうけど、翼君はすぐに顔に出るから私にはバレバレだ。



その行動が意味するもの…そのくらい、私にだってわかる。



そりゃあ、翼君は元々私にはもったいない程素敵な人だけど、だからといってもうこんなに好きになってる今、別れを切り出されたりしたら、私は……
不安が心の中を覆い尽くし、私は泣き出してしまいそうな気持ちになった。



「……お待たせ。」

戻って来た翼君の顔はやはりとても嬉しそうで、しかもなんだか落ち付かない。



「カナ…あのさ、僕、ちょっとカナに話したいことがあるんだ。」

ついに来た…翼君は、好きな人が出来たことを堪えてられなくなったんだ…
私は、死刑宣告を受けるような気持ちで、唇を噛み締めた。



「あのね…えっと…前から話そうと思ってたんだけど…」

翼君はあからさまに嬉しそうな顔で少し躊躇いがちに話し出し……私は辛くてその場から逃げ出したい気分だった。



「ねぇ、見て、この子。」

ほんのりと頬を染め、翼君が携帯の画面を差し出した。
残酷だ…きっとそれは好きな人の画像…それともその人と翼君の2ショット…?
そんなものを見せつけるなんて酷い…



「……え!?」



私は目を凝らしもう一度しっかりと画面をのぞきこんだ。
そこにいたのはもこもこした真っ白な子犬のような…モンスター?



「めちゃくちゃ可愛いでしょう~?
卵から育てたんだよ。
子供の頃はもっと可愛かったんだから!
でね、コロタンはもう大人になったんだけど、大人になったら他のモンモンとペアリングして子供が作れるんだ。
コロタンの子供は、やっぱりカナのモンモンの子供が良いから…ね?カナもモンモン飼ってみようよ!」

(……モ、モンモン…?)

私は我が目と我が耳を疑った。
なんでも、以前、翼君が私にデート中は携帯ゲームをやらないでって言ったから、その手前、自分がモンスター育成ゲームにハマってる事を言えなかったらしい。



「そ、そうなんだ。
じゃあ、やってみる。」

「わぁい、やったー!」

無邪気に喜ぶ翼君に、私はほっと胸を撫で下ろした。 
 
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