お題小説2

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
381 / 389
066 : 明日をつかまえに

しおりを挟む
「そうなんですか。なんだか興奮して来ました。
もしかしたら、本当に父さんに会えるんじゃないかって。」

「あぁ、会えるさ!
きっと、婆さんの千里眼は当たってると思うぜ。」

「本当にありがとうございます。
私はお酒もあまり飲めませんし、私が行ったんじゃ、そこまで教えて貰えたかどうかわかりませんよね。
本当にお二人のおかげです。」

カトリーヌは、感極まったのか、その瞳がゆらゆらと揺れていた。



「ところで、親父さんとはいくつくらいの時に別れたんだ?」

「確か、私が5つくらいの時だったと思います。」

「5つか…じゃあ、記憶はあんまりないんじゃないか?」

「そうですね。顔はぼんやりとしか覚えてません。
声も忘れてしまいました。
でも、しっかりと覚えてることもあるんですよ。」

カトリーヌは、溢れた涙を拭い、小さく微笑んだ。



「へぇ、どんなことなんだ?」

「たいしたことじゃないんですが…町に私の誕生日プレゼントを買いに行くことが決まって…
私は毎日毎日、買い物にはまだ行かないの?と父に訊ねました。
父もうんざりしたと思いますが、それでも毎回優しく諭してくれました。
そして、ついに明日となった時、待ちきれなくなった私は、明日を探しに行く!とひとりで家を飛び出したんです。
すぐに、父が私を探しに来てくれて、よし!二人で明日を捕まえよう!って言ってくれて…
暗くなるまで私達はそこらを歩き回り、私は疲れ果てて眠ってしまいました。
でも、その時、父と過ごした時間がとても楽しくて…
二人で手を繋いで、歌を歌ったり、木に登ったりして…」

カトリーヌは、懐かしいあの日を思い出しているのか、遠い目をして、浸っていた。
きっと、カトリーヌにとって、とても大切な記憶なのだろう。



「優しい親父さんだったんだな。
明日、出発して、あんたの親父さんを必ずみつけてくるからな。」

「えっ!そんなことまで?
私の体が治ったら、自分で行きますよ。」

「乗りかかった舟だ。俺達にやらせてくれよ。」

カトリーヌは遠慮していたが、リュックがどうにか説き伏せた。
クロワももちろん異議は唱えない。
私達は、予定通り、明日、出発することに決めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

元平凡高校生の異世界英雄譚 ~転生してチートを手に入れましたが絶対に使いたくありません~

一☆一
ファンタジー
 ごく一般的なゲーム好きの少年、相良 彰人は、神様の抽選の結果、突如心臓発作で死んでしまう。  死者が少ないときに行われるその抽選によって死んでしまったものは神様によってチートを付与され、記憶を残したまま異世界で生きていくことになるのだが、彰人はチートを忌み嫌う、真面目系ゲーマーだった。  貴族、エイリアス・シーダン・ナインハイトとして生まれた彼は、一つの誓いを立てた。  【絶対にチートを使わない。】  努力を重ねるエイリアスだったが、そう簡単に理想は現実に追いつかない。  葛藤し、彼が出す結論とは。 「……生まれ直したこの世界で。後悔だけは、したくないんだ。絶対に」 ※俺TUEEEです。お察しください。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

チート転生~チートって本当にあるものですね~

水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!! そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。 亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

【完結】捨ててください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。 でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。 分かっている。 貴方は私の事を愛していない。 私は貴方の側にいるだけで良かったのに。 貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。 もういいの。 ありがとう貴方。 もう私の事は、、、 捨ててください。 続編投稿しました。 初回完結6月25日 第2回目完結7月18日

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

処理中です...