369 / 389
063 : 声にならない
2
しおりを挟む
*
「あ、あそこに町が…!
あれがきっとユルドね。」
夕方になり、私たちはようやくユルドの町に着いた。
これといった特徴のない、山間の小さな町だ。
ぱっと見渡したところでは、リュックの言っていた大きな木も診療所らしきものもなさそうだ。
「まずは宿に行ってみようか?」
「そうね。宿の人に聞いてみたら、なにかわかるかもしれないし。」
そんなことを話してるうちに宿はすぐにみつかった。
こんな小さい町なら、おそらくこの宿以外にはないのではないだろうか?
「ちょっと聞きたいんだが、この町にある宿屋はここだけか?」
「はい、左様です。
部屋ならございますよ。」
「そうか。じゃあ、泊まらせてもらうよ。
それと……」
リュックは、カトリーヌのことを宿の者に訊ねた。
「えっ!あなた方はカトリーヌさんのお知り合いで?」
「カトリーヌを知ってるのか!?」
宿の親父は、深く頷いた。
「あの方はロアンヌを訪ねて来られたんです。」
「ロアンヌ?」
「はい、良く当たると評判の占い師です。
ロアンヌは山の奥に住んでるんですが、カトリーヌさんはロアンヌの家に行く途中で、崖から足を滑らせて…」
大きな木や診療所はなかったが、やはりリュックの夢はまたしても当たっていた。
可哀想に、カトリーヌは……
「そ、それで、カトリーヌは!?」
マーフィが身を乗り出して、親父に訊ねた。
「たまたま近くに薪拾いに来ていた者がおり、カトリーヌさんは隣町の診療所に連れていかれました。
この町には診療所がありませんので。」
「それで、カトリーヌの容態は?」
「そこまではわかりません。」
「リュックさん、僕、今から隣町に行ってみます!」
マーフィは、今にも駆け出しそうな雰囲気だ。
「隣町へは近いのか?」
「いえ、今からだと着くのは真夜中になります。」
「それでも、僕は行きます!」
「わかった。じゃあ、俺はマーフィに着いて行くから、クロワさん達は明日の朝、来てくれ。
マルタンはどうする?」
「……私も一緒に行くよ。」
私が行ったところで何が出来るわけでもないが、やはり、リュックの夢の結末を知りたかった。
「じゃあ、行ってきます。」
「お気を付けて。」
私達は、クロワ達に手を振り、ユルドの町を後にした。
「あ、あそこに町が…!
あれがきっとユルドね。」
夕方になり、私たちはようやくユルドの町に着いた。
これといった特徴のない、山間の小さな町だ。
ぱっと見渡したところでは、リュックの言っていた大きな木も診療所らしきものもなさそうだ。
「まずは宿に行ってみようか?」
「そうね。宿の人に聞いてみたら、なにかわかるかもしれないし。」
そんなことを話してるうちに宿はすぐにみつかった。
こんな小さい町なら、おそらくこの宿以外にはないのではないだろうか?
「ちょっと聞きたいんだが、この町にある宿屋はここだけか?」
「はい、左様です。
部屋ならございますよ。」
「そうか。じゃあ、泊まらせてもらうよ。
それと……」
リュックは、カトリーヌのことを宿の者に訊ねた。
「えっ!あなた方はカトリーヌさんのお知り合いで?」
「カトリーヌを知ってるのか!?」
宿の親父は、深く頷いた。
「あの方はロアンヌを訪ねて来られたんです。」
「ロアンヌ?」
「はい、良く当たると評判の占い師です。
ロアンヌは山の奥に住んでるんですが、カトリーヌさんはロアンヌの家に行く途中で、崖から足を滑らせて…」
大きな木や診療所はなかったが、やはりリュックの夢はまたしても当たっていた。
可哀想に、カトリーヌは……
「そ、それで、カトリーヌは!?」
マーフィが身を乗り出して、親父に訊ねた。
「たまたま近くに薪拾いに来ていた者がおり、カトリーヌさんは隣町の診療所に連れていかれました。
この町には診療所がありませんので。」
「それで、カトリーヌの容態は?」
「そこまではわかりません。」
「リュックさん、僕、今から隣町に行ってみます!」
マーフィは、今にも駆け出しそうな雰囲気だ。
「隣町へは近いのか?」
「いえ、今からだと着くのは真夜中になります。」
「それでも、僕は行きます!」
「わかった。じゃあ、俺はマーフィに着いて行くから、クロワさん達は明日の朝、来てくれ。
マルタンはどうする?」
「……私も一緒に行くよ。」
私が行ったところで何が出来るわけでもないが、やはり、リュックの夢の結末を知りたかった。
「じゃあ、行ってきます。」
「お気を付けて。」
私達は、クロワ達に手を振り、ユルドの町を後にした。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅
散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー
2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。
人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。
主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m
天は百万分の二物しか与えなかった
木mori
ファンタジー
あらゆる分野に取柄のない中学三年生の川添鰯司には、たった二つだけ優れた能力があった。幼馴染の天才お嬢様二条院湖線と超努力秀才の小暮光葉は勉学・体育で常に1、2位を争っていたが、このふたりには決定的な弱点があり、それを無自覚に補完する鰯司が必要不可欠な存在であった。湖線と光葉にはとんでもない秘密があり、それは・・・。
ブラック・スワン ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~
碧
ファンタジー
「詰んだ…」遠い眼をして呟いた4歳の夏、カイザーはここが乙女ゲーム『亡国のレガリアと王国の秘宝』の世界だと思い出す。ゲームの俺様攻略対象者と我儘悪役令嬢の兄として転生した『無能』なモブが、ブラコン&シスコンへと華麗なるジョブチェンジを遂げモブの壁を愛と努力でぶち破る!これは優雅な白鳥ならぬ黒鳥の皮を被った彼が、無自覚に周りを誑しこんだりしながら奮闘しつつ総愛され(慕われ)する物語。生まれ持った美貌と頭脳・身体能力に努力を重ね、財力・身分と全てを活かし悪役令嬢ルート阻止に励むカイザーだがある日謎の能力が覚醒して…?!更にはそのミステリアス超絶美形っぷりから隠しキャラ扱いされたり、様々な勘違いにも拍車がかかり…。鉄壁の微笑みの裏で心の中の独り言と突っ込みが炸裂する彼の日常。(一話は短め設定です)
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた
甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。
降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。
森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。
その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。
協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。
プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる