お題小説2

ルカ(聖夜月ルカ)

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063 : 声にならない

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「あ、あそこに町が…!
あれがきっとユルドね。」



夕方になり、私たちはようやくユルドの町に着いた。
これといった特徴のない、山間の小さな町だ。
ぱっと見渡したところでは、リュックの言っていた大きな木も診療所らしきものもなさそうだ。



「まずは宿に行ってみようか?」

「そうね。宿の人に聞いてみたら、なにかわかるかもしれないし。」

そんなことを話してるうちに宿はすぐにみつかった。
こんな小さい町なら、おそらくこの宿以外にはないのではないだろうか?



「ちょっと聞きたいんだが、この町にある宿屋はここだけか?」

「はい、左様です。
部屋ならございますよ。」

「そうか。じゃあ、泊まらせてもらうよ。
それと……」

リュックは、カトリーヌのことを宿の者に訊ねた。



「えっ!あなた方はカトリーヌさんのお知り合いで?」

「カトリーヌを知ってるのか!?」

宿の親父は、深く頷いた。



「あの方はロアンヌを訪ねて来られたんです。」

「ロアンヌ?」

「はい、良く当たると評判の占い師です。
ロアンヌは山の奥に住んでるんですが、カトリーヌさんはロアンヌの家に行く途中で、崖から足を滑らせて…」



大きな木や診療所はなかったが、やはりリュックの夢はまたしても当たっていた。
可哀想に、カトリーヌは……



「そ、それで、カトリーヌは!?」

マーフィが身を乗り出して、親父に訊ねた。



「たまたま近くに薪拾いに来ていた者がおり、カトリーヌさんは隣町の診療所に連れていかれました。
この町には診療所がありませんので。」

「それで、カトリーヌの容態は?」

「そこまではわかりません。」

「リュックさん、僕、今から隣町に行ってみます!」

マーフィは、今にも駆け出しそうな雰囲気だ。



「隣町へは近いのか?」

「いえ、今からだと着くのは真夜中になります。」

「それでも、僕は行きます!」

「わかった。じゃあ、俺はマーフィに着いて行くから、クロワさん達は明日の朝、来てくれ。
マルタンはどうする?」

「……私も一緒に行くよ。」

私が行ったところで何が出来るわけでもないが、やはり、リュックの夢の結末を知りたかった。



「じゃあ、行ってきます。」

「お気を付けて。」

私達は、クロワ達に手を振り、ユルドの町を後にした。



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