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062 : さかむけ
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ユルドへの道のりはそれなりに遠かったが、これといった問題もなく、順調に進んだ。
三つ程の小さな町を通り過ぎ、ついに明日にはユルドに着くはずだ。
「ついに明日だな。」
「はい、わくわくします。
もしカトリーヌに会えたら…あ!いたっ!」
「どうしたんだ?」
「え…あぁ、いつものさかむけです。」
そう言って、マーフィは自分の指先をじっと見た。
「いつもの?」
「はい、カトリーヌが良く言うんです。
野菜を食べないから、あなたはさかむけが出来るのよって。」
「野菜を食べないとさかむけが出来るのか?」
「わからないですが、彼女はそう言ってました。
確かに僕はしょっちゅうさかむけが出来ますし、野菜が嫌いです。
あながち、嘘でもないかもしれませんね。」
「へぇ…そうなのか。」
私もそんな話を聞いたのは初めてだった。
それがカトリーヌの作り話なのかどうかはわからないが、カトリーヌがマーフィの体を案じていたことは間違いないだろう。
*
「ユルドに着いたら、何かわかるだろうか?」
「さぁな、行ってみなきゃわからないが、少なくとも手がかりはみつかりそうな気がするな。」
このところ、マーフィとは同部屋ではないので、気兼ねせずに、リュックと話すことが出来た。
「なんだか気が重いな。」
「確かにそうだな。でも、どんな形であれ、早くマーフィとカトリーヌをあわせてやりたいからな。」
その気持ちは私も同じだった。
結婚の約束をしていた相手が亡くなっていたら、それは大きな悲しみだが、死んだことを知らずに探し続けるのは気の毒な話だし、カトリーヌも浮かばれないだろうから。
リュックは人一倍、面倒見の良い性格だが、だからこそ、こんな辛い役目を背負わされているのだろうか?
私はふと、そんなことを思った。
三つ程の小さな町を通り過ぎ、ついに明日にはユルドに着くはずだ。
「ついに明日だな。」
「はい、わくわくします。
もしカトリーヌに会えたら…あ!いたっ!」
「どうしたんだ?」
「え…あぁ、いつものさかむけです。」
そう言って、マーフィは自分の指先をじっと見た。
「いつもの?」
「はい、カトリーヌが良く言うんです。
野菜を食べないから、あなたはさかむけが出来るのよって。」
「野菜を食べないとさかむけが出来るのか?」
「わからないですが、彼女はそう言ってました。
確かに僕はしょっちゅうさかむけが出来ますし、野菜が嫌いです。
あながち、嘘でもないかもしれませんね。」
「へぇ…そうなのか。」
私もそんな話を聞いたのは初めてだった。
それがカトリーヌの作り話なのかどうかはわからないが、カトリーヌがマーフィの体を案じていたことは間違いないだろう。
*
「ユルドに着いたら、何かわかるだろうか?」
「さぁな、行ってみなきゃわからないが、少なくとも手がかりはみつかりそうな気がするな。」
このところ、マーフィとは同部屋ではないので、気兼ねせずに、リュックと話すことが出来た。
「なんだか気が重いな。」
「確かにそうだな。でも、どんな形であれ、早くマーフィとカトリーヌをあわせてやりたいからな。」
その気持ちは私も同じだった。
結婚の約束をしていた相手が亡くなっていたら、それは大きな悲しみだが、死んだことを知らずに探し続けるのは気の毒な話だし、カトリーヌも浮かばれないだろうから。
リュックは人一倍、面倒見の良い性格だが、だからこそ、こんな辛い役目を背負わされているのだろうか?
私はふと、そんなことを思った。
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