お題小説2

ルカ(聖夜月ルカ)

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060 : 手繰りよせたなら

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 「リュック、もっと飲みなよ。」

 「もう良いよ。
 昨夜、いやというほど飲まされたから、もう無理だ。」

 数日後、私達は町を離れた。
 共に町の復興に汗を流して来た町の者達は、まるで、昔からの友人のように別れを惜しんでくれた。
 中でも、年老いた院長の落胆ぶりには、こちらまで同情してしまう程だった。



 町を出た私達は、その足で隣町のエヴァの家に立ち寄った。
 彼らもすでに町を離れる準備は出来ており、私達が着たら送別会をしようと待っていたとのことだった。



 「相変わらず、情け無いねぇ…
昨夜は昨夜、今日は今日だよ!」

 「エヴァ、お止しなさい。
あなたも少しずつお酒をやめるんじゃなかったの?」

リータにたしなめられ、エヴァは小さく方をすくめる。



 「……サイモン、エヴァには気持ちを伝えたのか?」

 「それが…まだなんだ。
なかなかタイミングが掴めなくてな。」

 「そうか…じゃあ、村に戻ってからになりそうだな。」

 私は隣の席に座ったサイモンと、そんなことを囁きあった。



 「ところで、皆さんはこれからどこに行かれるの?」

 「どこって…場所は決めてないんだが、とりあえず、途中まではあんたらと一緒に行こうと思ってる。」

 「行き先も決めてないとはおかしな旅だね。
 暇潰しってことなのかい?」

 「そういうわけじゃないんだが…要するにどこに行けば良いかわからないんだ。」

 「はぁ…?」

エヴァは呆れて、大きな口を開けてリュックの顔をみつめた。



 「つまりだな…俺達はちょっとした探しものをしてるんだけど、その手掛かりがみつからないんだ。」

 「何を探してるんだよ。」

 「そ、それは…だなぁ……」

 「……海底神殿です。」

 言い澱むリュックの横から、クロードがさらっと口を挟む。



 「海底神殿?
なんだ、そりゃ。
まさか、海底に神殿があるっていうんじゃないだろうね。」

 「その通りです。
リュックさんはその海底神殿を探してらっしゃるんです。」

どこか毒を含んだその言葉。
 相変わらず、クロードはそんなことを少しも信じてはいないようだ。



 「馬鹿馬鹿しい!
そんなもん、あるはずないだろう。
それじゃあ、なにかい?
 魚達が神殿を築いて、そこで毎晩お祈りでもしてるっていうのかい?」

 「エヴァ…そんな言い方、良くないわ。」

 「あんたさぁ…あたしの生活のことをいろいろ言う前に、そんな馬鹿なことを考えるのはやめて、好きな女の所に戻ったらどうなんだい?
いい若いもんが、そんな途方もない夢を追いかけるなんてどうかしてるよ。
そんなことは今日限りやめて、まともに働いてあんたの好きな女を幸せにしておやりよ。」

エヴァのきつい言い方に、リュックは何も答えずで苦々しい笑みを浮かべた。
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