お題小説2

ルカ(聖夜月ルカ)

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060 : 手繰りよせたなら

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 「あ、な、なんで、あんたがここに!?」

 「リュックこそ、どうしたんだ?」



 次の日の朝、私達は宿で意外な人物に出会った。



 「なんだ、それじゃあ、俺達の向かいの部屋じゃないか!
なんで、来てくれなかったんだ。」

 「無理を言うなよ。
あんたらがここに泊まってるなんて、考えてもみなかったんだから。」

 宿の食堂で一緒に朝食を採ったのは、つい数日前に顔を合わせたサイモンだった。



 「だけど、一体、なんであんたがここに…?」

 「俺が出る幕じゃないとは思ったんだが、おばさんもエヴァも気が強いだろ?
もしも大喧嘩なんてことになっても困るし…それに……」

そう言ったっきり、サイモンの言葉は途切れ、そのまま彼は俯いてしまった。



 「……サイモン…どうかしたのか?」

 「え…?いや、その……」

 彼のぎこちない態度を見て、私は、サイモンが飲みこんだ言葉の意味を悟った。



 「……そうか、そういうことか。」

 「そういうことって、マルタン…
どういうことなんだ?」

 驚いたように私を見たサイモンの頬は、私の予想通り、ほんのりと赤く染まっていた。



 「……エヴァに会いたかったんだな?」

 「マ、マルタン!!」

 「え…?
そ、そうなのか?」

 問いかけたリュックから視線を逸らし、また俯いたサイモンは、ゆっくりと小さく頷いた。



 「俺……子供の頃から、ずっとエヴァのことが好きだったんだ。
だけど、エヴァは俺のことなんてまるで相手にしちゃくれなかった。
でも…あいつが村を出ても、結婚したって聞かされても……それでも、俺の想いは少しも変わらなかった。
……馬鹿みたいだろ?」

 「そんなことあるもんか。
 待ち続けた甲斐があったじゃないか!
もう一度、エヴァに告白するんだ!」

 「……俺、まだ一度も告白はしてないんだ。」

サイモンの意外な言葉に、私とリュックは思わず顔を見合わせた。



 「してない?……だって、あんた、子供の頃からずっとエヴァのことが好きだって……」

 「好きだからこそ、言えなかったんだ。
 俺は、ずっと彼女を見て来たから、エヴァのことならなんでもわかってるつもりだ。
……残念ながら、俺が、エヴァの好きなタイプじゃないってこともな。」

サイモンはそう言うと、深い溜め息を吐き出した。
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