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060 : 手繰りよせたなら
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「それにしても、あの酒場を継ぐ者がみつかったとはちょっと意外だったな。」
リュックの言う通りだ。
私達が留守をしているうちにそんな話が持ちあがり、商店街で酒屋をしていた者の息子夫婦がエヴァの後を引き継ぐと、半ば強引に話をまとめたのだという。
「毎週、あんなに繁盛してるのを見たら、欲が出たのかもしれないな。
しかし、それには今の状況が影響しているわけだし、エヴァの人気もあったんだと思う。
他の者がやった所で、あれほどの客は来ないんじゃないか。」
「……だろうな。
でも、まぁ、そのおかげで、ディヴィッドも週末に寂しい思いはしなくて済む。」
「いずれにせよ、エヴァは明け方まで働いてるんだし、それほどの違いはないとは思うが、隣町にいるよりは、この町にいる方が気持ちだけでもまだマシなのかもしれないな。」
「なぁ、マルタン……
酒場以外で、エヴァが働けそうな仕事はないんだろうか?」
リュックはとにかくどうにかしてエヴァに酒場勤めをやめさせたいようだ。
それは、偏にディヴィッドのことを考えてのことだろうが、エヴァにはエヴァの事情がある。
リータと再会したことで、リュックの思う方向へ進めば良いが、そう簡単にはいかないだろう。
「そりゃああるさ。
エヴァは仕事に対してはとても真面目だし、きっとどんな仕事でも出来るさ。
きっと、エヴァが酒場に勤め出したのは、夫の借金のためじゃないか?
だが、水商売が身に着くと、なかなか生活のサイクルを変えられないんだろうな。」
「そんなもん、変えようと思えばすぐに変えられるじゃないか?」
「変えようという気持ちになるのが難しいんだ。
なにかきっかけみたいなものでもなけりゃ……」
「だったら、リータさんと会えたことをきっかけに、考え直せば良いんだ!」
「……そうだな。」
彼はいつもこんな風だ。
他人のことも、まるで自分の家族のように親身になって考えてしまう。
考えるだけではなく、その人達のために骨身を惜しまず尽くして……
(そうだ……
そして…いつも、リュックのそんな想いは相手に通じるんだ……)
「……なんだよ、思い出し笑いか?」
「いや…なんでもない。」
今度もそうなれば良いなと考えながら、私はあののどかな村の大きな夕陽を思い出していた。
リュックの言う通りだ。
私達が留守をしているうちにそんな話が持ちあがり、商店街で酒屋をしていた者の息子夫婦がエヴァの後を引き継ぐと、半ば強引に話をまとめたのだという。
「毎週、あんなに繁盛してるのを見たら、欲が出たのかもしれないな。
しかし、それには今の状況が影響しているわけだし、エヴァの人気もあったんだと思う。
他の者がやった所で、あれほどの客は来ないんじゃないか。」
「……だろうな。
でも、まぁ、そのおかげで、ディヴィッドも週末に寂しい思いはしなくて済む。」
「いずれにせよ、エヴァは明け方まで働いてるんだし、それほどの違いはないとは思うが、隣町にいるよりは、この町にいる方が気持ちだけでもまだマシなのかもしれないな。」
「なぁ、マルタン……
酒場以外で、エヴァが働けそうな仕事はないんだろうか?」
リュックはとにかくどうにかしてエヴァに酒場勤めをやめさせたいようだ。
それは、偏にディヴィッドのことを考えてのことだろうが、エヴァにはエヴァの事情がある。
リータと再会したことで、リュックの思う方向へ進めば良いが、そう簡単にはいかないだろう。
「そりゃああるさ。
エヴァは仕事に対してはとても真面目だし、きっとどんな仕事でも出来るさ。
きっと、エヴァが酒場に勤め出したのは、夫の借金のためじゃないか?
だが、水商売が身に着くと、なかなか生活のサイクルを変えられないんだろうな。」
「そんなもん、変えようと思えばすぐに変えられるじゃないか?」
「変えようという気持ちになるのが難しいんだ。
なにかきっかけみたいなものでもなけりゃ……」
「だったら、リータさんと会えたことをきっかけに、考え直せば良いんだ!」
「……そうだな。」
彼はいつもこんな風だ。
他人のことも、まるで自分の家族のように親身になって考えてしまう。
考えるだけではなく、その人達のために骨身を惜しまず尽くして……
(そうだ……
そして…いつも、リュックのそんな想いは相手に通じるんだ……)
「……なんだよ、思い出し笑いか?」
「いや…なんでもない。」
今度もそうなれば良いなと考えながら、私はあののどかな村の大きな夕陽を思い出していた。
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