お題小説２

048 ： 数珠つなぎ

７

＊



 「まぁ！もう出来たのね。あなたやっぱり器用なのね。」

クロワは、窓に近寄り、しみじみとした声をかけた。



 「しばらくの間、暗くなりますが、ガラスが入るまでのことですから我慢して下さいね。」

 「あ…あの、アンディさん……
足の方は大丈夫ですか？」

 「ええ、全然平気です。
 気遣ってくれてありがとう。」

 微笑むアンディに、リンゼイは恥ずかしそうに俯いた。



クロードが怪我をしたまま放置されていた板切れが、アンディの手によっていとも簡単に打ち付けられた。
その手際の良さに女性達は感心し、クロードは苦い笑いを浮かべる。



 指輪の話から、リンゼイも少しずつアンディに心を開き、作業の時には率先して彼を手伝うようになっていた。



 「アンディ、ここの他に裏口の鍵と、玄関の蝶番の修理も頼めるかしら？」

 「クロワさん、そんなことまでお願いしたらご迷惑だわ。」

リンゼイは焦った様子で、二人の会話に口を挟んだ。



 「いえ、そのくらい、なんでもありませんよ。
まず、裏口を見せていただけますか？」

 「リンゼイさん、アンディを裏口に案内してあげて。」

 「え…ええ……アンディさん、こちらです。」



 「……本当に良い方だわ。」

 去って行く二人の後姿をみつめながら、リンゼイの母親は小さな声で呟いた。



 「あの、奥様…
今夜、アンディをこちらに泊めてやっていただけないでしょうか？
まだいろいろとやってもらわなきゃいけないこともありますし……」

 「もちろん、そのつもりよ！
アンディさんにはご迷惑かもしれないけど……
今夜の夕食は楽しいものになりそうで楽しみだわ。
あ、そうだわ…！
ねぇ、クロワさん…今からケーキを焼くのを手伝って下さらない？」

 「ケーキですか？それは構いませんが……腰は大丈夫なんですか？」

 「……私は座って指示するだけだもの。」

 悪戯っぽく微笑むリンゼイの母親に、クロワも微笑みゆっくりと頷いた。



 「わかりました。
それじゃあ、早速取りかかりましょう。」