お題小説2

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
270 / 506
047 : 猫の目

しおりを挟む





 「い、いてぇ!」

 男は、顔を歪め痛々しい声を上げた。



 「幸いなことに骨は折れてはいません。
ですが、おそらくひびが入ってると思われます。」

 「ほ、骨にひびが!?
そ、それで、治るのかい?」

 「もちろんですよ。
ただ、すぐにというわけにはいきません。
それに、少なくとも数日は安静にしておかないと……
とにかく治療しましょう…えっと、添え木に出来るようなものはありませんか?」

 「添え木?
 薪なら家の裏にあるが……」

 「そうですか。
では、リュックさん、すみませんがそれをこのくらいの長さに切ってきていただけないでしょうか?」

クロードは、両手で木の長さを示した。



 「わかった。
 待ってろよ。」



 小さな町に着いて早々、私達は怪我人に遭遇した。
なんでも山菜を採りに行った時に岩に蹴躓いて転んだということだったが、男の痛みようは酷く、どうにか町までは辿り着いたものの、家まで歩くのもままならない状態だったらしく、華奢な老人が男に肩を貸していた。
それを見たリュックが老人に代わり、私と二人で男を両脇から抱えるようにして、彼の家に連れ戻った。



 *




 「はい、これで大丈夫ですよ。」

 「それと、これは痛み止めのお薬です。」

 「ありがとう!本当に助かったよ。
この町には医者もいないから、雪の街の診療所に運んでもらわなきゃならないところだった。
あ、俺、まだ名前も言ってなかったな。
アンディだ。よろしくな。」

 私達も彼に倣い、簡単な自己紹介をした。



 「ところで、あんた…ここには一人で住んでるのか?」

 「あぁ、そうだ。
 元は親方の家だったんだが、数年前に親方夫婦も死んじまって、それからは俺一人で住ませてもらってるんだ。
あ……そういえば、あんたら、旅をしてるって言ってたな?
 良かったら、今夜はここに泊まっていったらどうだい?」

 「良いのか?」

 「あぁ、部屋は空いてるし、こんなことくらいじゃお礼にもならないが、採ってきた山菜もあるから食べてってくれよ。
 腹減っただろ?
 今、すぐに食事の支度を……」

 「あ!あんたは座ってろ!
 食事のことなら、俺達がやるから……」

リュックが、立ち上ろうとしたアンディの肩を優しく制する。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

退屈令嬢のフィクサーな日々

ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。 直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。

【完結】灰かぶりの花嫁は、塔の中

白雨 音
恋愛
父親の再婚により、家族から小間使いとして扱われてきた、伯爵令嬢のコレット。 思いがけず結婚が決まるが、義姉クリスティナと偽る様に言われる。 愛を求めるコレットは、結婚に望みを託し、クリスティナとして夫となるアラード卿の館へ 向かうのだが、その先で、この結婚が偽りと知らされる。 アラード卿は、彼女を妻とは見ておらず、曰く付きの塔に閉じ込め、放置した。 そんな彼女を、唯一気遣ってくれたのは、自分よりも年上の義理の息子ランメルトだった___ 異世界恋愛 《完結しました》

どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」 「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」  私は思わずそう言った。  だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。  ***  私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。  お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。  だから父からも煙たがられているのは自覚があった。  しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。  「必ず仕返ししてやろう」って。  そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

離婚した彼女は死ぬことにした

はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。

幼馴染の親友のために婚約破棄になりました。裏切り者同士お幸せに

hikari
恋愛
侯爵令嬢アントニーナは王太子ジョルジョ7世に婚約破棄される。王太子の新しい婚約相手はなんと幼馴染の親友だった公爵令嬢のマルタだった。 二人は幼い時から王立学校で仲良しだった。アントニーナがいじめられていた時は身を張って守ってくれた。しかし、そんな友情にある日亀裂が入る。

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

初恋が綺麗に終わらない

わらびもち
恋愛
婚約者のエーミールにいつも放置され、蔑ろにされるベロニカ。 そんな彼の態度にウンザリし、婚約を破棄しようと行動をおこす。 今後、一度でもエーミールがベロニカ以外の女を優先することがあれば即座に婚約は破棄。 そういった契約を両家で交わすも、馬鹿なエーミールはよりにもよって夜会でやらかす。 もう呆れるしかないベロニカ。そしてそんな彼女に手を差し伸べた意外な人物。 ベロニカはこの人物に、人生で初の恋に落ちる…………。

処理中です...