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045 : 盗み聞きの値段
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*
「う、嘘だ!
だ、だって、母さんはだんだん元気になって来てて……
昨日、花のことを楽しみにしてるって笑ったばかりで……」
その報せがあったのは、まだ夜も明けきらない早朝の頃だった。
私達が駆け付けた時には、カトリーヌはすでに事切れており、その傍らに赤い目をしたカールとクロワが立ち尽していた。
「兄さん……ごめんなさい。
僕が付いてたのに…こんなことになって……」
カールが顔を伏せ、か細い声でそう言った。
「カール!どうしたんだ!
なぜこんなことに……」
「テリー…すまない。
突然の発作で……私達にもどうすることも出来なかった……」
「そ、そんな……」
いつも冷静なクロードが、珍しく感情を表に現していた。
その様子から、彼にとっても全く予想外の事態だったのだと私は感じた。
私が予想していたテリー達の幸せな未来は、実現することなく砕け散った。
悲しみに打ちひしがれる彼らの嗚咽を耳にしながら、私にはかける言葉さえみつけられず、ただカトリーヌの冥福を祈る事しか出来なかった。
*
「……いろいろと、どうもありがとうございました。」
カトリーヌの葬儀が済み、慌しく数日の時が流れた。
テリー兄弟は、ようやく落ちつきを取り戻した。
むろん、心の中はまだ整理が出来てないだろうが、二人はこれ以上私達に面倒はかけられない、もう大丈夫だと、子供らしくない気遣いを見せた。
「本当に二人で大丈夫なのか?」
「大丈夫です。
僕も病院の下働きをさせてもらえることになりましたし、これからは兄さんと二人で力を合わせて暮らしていきます。」
「そうか……」
カールは母親の死後、また一段と大人びた雰囲気を感じさせるようになっていた。
「う、嘘だ!
だ、だって、母さんはだんだん元気になって来てて……
昨日、花のことを楽しみにしてるって笑ったばかりで……」
その報せがあったのは、まだ夜も明けきらない早朝の頃だった。
私達が駆け付けた時には、カトリーヌはすでに事切れており、その傍らに赤い目をしたカールとクロワが立ち尽していた。
「兄さん……ごめんなさい。
僕が付いてたのに…こんなことになって……」
カールが顔を伏せ、か細い声でそう言った。
「カール!どうしたんだ!
なぜこんなことに……」
「テリー…すまない。
突然の発作で……私達にもどうすることも出来なかった……」
「そ、そんな……」
いつも冷静なクロードが、珍しく感情を表に現していた。
その様子から、彼にとっても全く予想外の事態だったのだと私は感じた。
私が予想していたテリー達の幸せな未来は、実現することなく砕け散った。
悲しみに打ちひしがれる彼らの嗚咽を耳にしながら、私にはかける言葉さえみつけられず、ただカトリーヌの冥福を祈る事しか出来なかった。
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「……いろいろと、どうもありがとうございました。」
カトリーヌの葬儀が済み、慌しく数日の時が流れた。
テリー兄弟は、ようやく落ちつきを取り戻した。
むろん、心の中はまだ整理が出来てないだろうが、二人はこれ以上私達に面倒はかけられない、もう大丈夫だと、子供らしくない気遣いを見せた。
「本当に二人で大丈夫なのか?」
「大丈夫です。
僕も病院の下働きをさせてもらえることになりましたし、これからは兄さんと二人で力を合わせて暮らしていきます。」
「そうか……」
カールは母親の死後、また一段と大人びた雰囲気を感じさせるようになっていた。
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