お題小説2

ルカ(聖夜月ルカ)

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045 : 盗み聞きの値段

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 「やぁ、悪かった…
実は眼鏡が……誰だい?その子は…」

 宿に戻ると、玄関先で老人が照れ臭そうに眼鏡をポケットから差し出した。
 本当なら、どこにあったとか、眼鏡のことをもっと話したい所だったのだろうが、私達が見知らぬ少年を伴なっていたため、眼鏡の話は中断された。



 「爺さん、今夜は部屋で食事をしたいんだ。
こいつの分も頼む。
……あ、眼鏡のことはまた今度な。」

 「あ、あぁ、わかったよ。」



リュックは、少年を私達の部屋に連れ、長椅子に座らせた。



 「さてと…まずはおまえの名前を訊かせてもらおうか。」

リュックは、少年の向かいに座り、いつもより威厳のこもった声を出した。
 少年は深く俯き、膝の上に置いた両手は小刻みに震えていた。



 「リュック、戻ったの?」

 物音で私達が戻ったことに気付いたのか、クロワが私達の部屋を訪ねた。



 「あら…その子は?」

クロワは、長椅子の少年にすぐに気付き、不思議そうな顔をリュックに向ける。



 「クロワさん…実は、こいつ…例の薬草を摘んでたんだ。」

 「あの薬草を…!?」



 「ご、ごめんなさい…」

クロワの驚きようが大袈裟だったためか、今まで黙っていた少年が不意に口を開いた。



 「でも……ぼ、僕にはどうしてもあれが……」

 少年の小さな声は次第に涙声に変わっていった。



 「どうしてあれが必要だったの?
あなた、あれがどういうものだか知ってるの?」

クロワは、少年の横に腰を降ろし、少年の顔をのぞきこむようにしてそう訊ねた。



 「ぼ、僕の母さんが……」

 少年は、そう一言話した途端、感情が込み上げた様子で涙を零す。
クロワが少年の涙を拭ってやると、それから少年はぽつりぽつりと話を始めた。
 少年があの薬草を摘んでいたその理由を……

 
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