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023 : 暁の女王
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「ローブ様、万歳!!」
「ローブ様、万歳!!」
群集は、バルコニーに立つ少女に手を振り、声を揃えて彼女を賛美する。
そんな様子を、少女は無表情でただ見下ろすばかりだった。
まだ十歳になったばかりの少女には、彼らがなぜ自分をそれほど崇めるのさえわからない。
大波のように押し寄せる歓声に、恐怖すら感じていた。
少女はわからないことを考えることはとうにやめていた。
考えても、誰も少女の期待する答えを与えてはくれない。
その度に、絶望し暗い気持ちになるだけだとわかっていた。
何も考えず、側近達の言う通りにしておけば、皆が幸せになれる。
贅沢なものを食べ、美しいドレスを着て、迷子になりそうな広い屋敷に住まい、欲しいものはなんでも手に入る。
誰もが少女の言うことを聞く。
誰もが羨む夢のような暮らし…
それは、少女が自由と今までの短い人生をなくしたことへの代償によって得たものだった。
「ローブ様、お疲れ様です。
後はごゆっくりお休み下さい。」
少女の祖父よりも年上に見える側近が、少女に恭しく頭を下げた。
(私は疲れてなんていないわ。
ほんの少しバルコニーに立っただけじゃない…)
そんな気持ちのせいで、少女は眉をひそめ、側近から顔を背けた。
(つまらない…何もかもつまらない…)
少女は、花瓶の花を引き抜き、その場に放り投げた。
そんなことをしても、何も変わらない事は、少女には重々わかっていることだが時折どうしようもない癇癪が起こってしまうのだ。
投げ捨てられた花の傍に身をかがめ、少女は顔を覆って涙を流した。
(帰りたい…
あんなこと、しなきゃ良かった…)
「ローブ様、万歳!!」
「ローブ様、万歳!!」
群集は、バルコニーに立つ少女に手を振り、声を揃えて彼女を賛美する。
そんな様子を、少女は無表情でただ見下ろすばかりだった。
まだ十歳になったばかりの少女には、彼らがなぜ自分をそれほど崇めるのさえわからない。
大波のように押し寄せる歓声に、恐怖すら感じていた。
少女はわからないことを考えることはとうにやめていた。
考えても、誰も少女の期待する答えを与えてはくれない。
その度に、絶望し暗い気持ちになるだけだとわかっていた。
何も考えず、側近達の言う通りにしておけば、皆が幸せになれる。
贅沢なものを食べ、美しいドレスを着て、迷子になりそうな広い屋敷に住まい、欲しいものはなんでも手に入る。
誰もが少女の言うことを聞く。
誰もが羨む夢のような暮らし…
それは、少女が自由と今までの短い人生をなくしたことへの代償によって得たものだった。
「ローブ様、お疲れ様です。
後はごゆっくりお休み下さい。」
少女の祖父よりも年上に見える側近が、少女に恭しく頭を下げた。
(私は疲れてなんていないわ。
ほんの少しバルコニーに立っただけじゃない…)
そんな気持ちのせいで、少女は眉をひそめ、側近から顔を背けた。
(つまらない…何もかもつまらない…)
少女は、花瓶の花を引き抜き、その場に放り投げた。
そんなことをしても、何も変わらない事は、少女には重々わかっていることだが時折どうしようもない癇癪が起こってしまうのだ。
投げ捨てられた花の傍に身をかがめ、少女は顔を覆って涙を流した。
(帰りたい…
あんなこと、しなきゃ良かった…)
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