111 / 389
021 : 死線
1
しおりを挟む
「なんだね?」
老人に事情を話すと、あまり乗り気ではなさそうだったが、食料を少し渡すということでなんとか泊めてくれることになった。
「爺さん、ここらはやけに荒れ果てているみたいだが、昔なにかあったのか?」
「あぁ…ここでは、昔、戦があってな。
最初は川の水をめぐってちょっとした言い争いだったらしいのじゃが…いつのまにかその争いが大きくなってしまい…結局、大勢の人間が死に、このあたりにあった二つの村は燃え尽くされた。
どうやらこのあたりがちょうど二つの村の境あたりで、最も死者が多かった場所らしい。
亡くなった者達の怨念かなんだかわからんが、いまだこのあたりには緑さえ戻らん。
だからこそ、ここにまた町を作ろうと思う者もおらんのじゃ。」
「じゃあ、なんだって爺さんはここに住んでるんだ?」
「それは……
本当のことはもはやわからんが…争いの火種になったのがうちの先祖だったということを聞いたからじゃ。
せめて少しでも亡くなった者の供養になればと、わしはよその土地から土を運びここに花壇を作った。
その手入れをしにここに通ううちに、それならいっそここに住もうと思いついてな。
だが、ここは不便で困る。
最近はわしも足腰が悪くなって来てのう…
ちょうど食べるものも底を着いてた時だったんじゃ。
助かったよ。」
「そうか、そんなわけがあったのか。
こっちこそ助かったぜ。
泊めてもらえなかったら、野宿になる所だったよ。」
「たいていの者はこの先へは馬車で行くようじゃが、歩いて行くとは物好きじゃな。」
「こんなに遠いとわかっていたら、馬車で来るんだったよ。
遠いとは聞いてはいたが、ここまでとは思わなかったからな。」
老人は、最初の態度とは違い、けっこう話し好きのようだった。
もしかすると、長い間一人でいて人恋しかっただけなのかもしれないが…とにかくそのおかげで私達は余計な気を遣わずに済んだ。
しばらく話をした後、持って来ていた食料でクロワが簡単な食事を作り、老人が食器を用意した。
「あら、お爺さん、食器が一つ多いようですよ…」
私達が四人と老人…食器の数は五枚で良い筈だが、老人は食器を六枚取り出したのだ。
「いや、これでええんじゃ。」
クロワは、老人の言うままに料理を六つの食器に振り分けた。
老人に事情を話すと、あまり乗り気ではなさそうだったが、食料を少し渡すということでなんとか泊めてくれることになった。
「爺さん、ここらはやけに荒れ果てているみたいだが、昔なにかあったのか?」
「あぁ…ここでは、昔、戦があってな。
最初は川の水をめぐってちょっとした言い争いだったらしいのじゃが…いつのまにかその争いが大きくなってしまい…結局、大勢の人間が死に、このあたりにあった二つの村は燃え尽くされた。
どうやらこのあたりがちょうど二つの村の境あたりで、最も死者が多かった場所らしい。
亡くなった者達の怨念かなんだかわからんが、いまだこのあたりには緑さえ戻らん。
だからこそ、ここにまた町を作ろうと思う者もおらんのじゃ。」
「じゃあ、なんだって爺さんはここに住んでるんだ?」
「それは……
本当のことはもはやわからんが…争いの火種になったのがうちの先祖だったということを聞いたからじゃ。
せめて少しでも亡くなった者の供養になればと、わしはよその土地から土を運びここに花壇を作った。
その手入れをしにここに通ううちに、それならいっそここに住もうと思いついてな。
だが、ここは不便で困る。
最近はわしも足腰が悪くなって来てのう…
ちょうど食べるものも底を着いてた時だったんじゃ。
助かったよ。」
「そうか、そんなわけがあったのか。
こっちこそ助かったぜ。
泊めてもらえなかったら、野宿になる所だったよ。」
「たいていの者はこの先へは馬車で行くようじゃが、歩いて行くとは物好きじゃな。」
「こんなに遠いとわかっていたら、馬車で来るんだったよ。
遠いとは聞いてはいたが、ここまでとは思わなかったからな。」
老人は、最初の態度とは違い、けっこう話し好きのようだった。
もしかすると、長い間一人でいて人恋しかっただけなのかもしれないが…とにかくそのおかげで私達は余計な気を遣わずに済んだ。
しばらく話をした後、持って来ていた食料でクロワが簡単な食事を作り、老人が食器を用意した。
「あら、お爺さん、食器が一つ多いようですよ…」
私達が四人と老人…食器の数は五枚で良い筈だが、老人は食器を六枚取り出したのだ。
「いや、これでええんじゃ。」
クロワは、老人の言うままに料理を六つの食器に振り分けた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜
しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。
高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。
しかし父は知らないのだ。
ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。
そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。
それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。
けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。
その相手はなんと辺境伯様で——。
なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。
彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。
それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。
天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。
壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
【完結】断罪を終えた令嬢は、まだ恋を知らない。〜年下騎士から好意を向けられている?対処の仕方がわかりません⋯⋯。
福田 杜季
恋愛
母親の離縁により、プライセル公爵家の跡取り娘となったセシリアには、新しい婚約者候補が現れた。
彼の名は、エリアーシュ・ラザル。
セシリアよりも2つ年下の騎士の青年だった。
実の弟ともまともに会話をしてこなかったセシリアには、年下の彼との接し方が分からない。
それどころか彼の顔をまともに直視することすらできなくなってしまったセシリアに、エリアーシュは「まずはお互いのことをよく知ろう」と週に一度会うことを提案する。
だが、週に一度の逢瀬を重ねる度に、セシリアの症状は悪化していって⋯⋯。
断罪を終えた令嬢は、今度こそ幸せになれるのか?
※拙著『義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜』の続編ですが、前作を読んでいなくても楽しめるようにします。
※例によってふんわり設定です。なるべく毎日更新できるよう頑張ります。
※執筆時間確保とネタバレ&矛盾防止のため、ご感想への返信は簡単めになります⋯。ご容赦ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる