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013 : 雪解の川
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*
「ここです。」
そう言ったっきり、キャロルは門の前で立ち尽していた。
ブランドンとキャロルは、マルタン達には詳しいことを告げないままに、キャロルの実家を訪ねていた。
馬車で一週間程の道程だった。
「大丈夫ですか、キャロルさん。」
「……ええ、大丈夫です。
では、行きましょうか?」
やっと決心がついたのか、キャロルは鉄の扉を押し開けた。
ステファンの屋敷には及ばないが、キャロルの実家もたいそう立派な造りの屋敷だった。
手入れの行き届いた庭を抜け、母家の扉をノックする。
「はい、どなたでしょう…?」
中から出て来たのは、品の良い白髪の老婦人だった。
「か…母さん…」
「え……あ……あなたは…
まさか…キャロル…キャロルなのっ?!」
「母さん!!」
二人は玄関で、泣きながら強く抱き合う…
二十九年ぶりの再会だった。
「母さん、どうかしたのかい?」
「に…兄さん…!」
「おまえ…キャロル…なのか?」
男性の言葉に、キャロルは頷いた。
「キャロル!」
思いがけない訪問者に、広い玄関ホールにはすすり泣きの声が響いた。
*
「今日は、なんて良い日なんでしょう…」
久しぶりの対面を果たした家族は、これまでのことをお互いに話しあった。
ただ、キャロルが一番会いたいと思っていた父親の姿はそこになかった。
キャロルが家を出て三年後に亡くなったとの知らせに、キャロルの涙は止まらなかった。
「私のせいなのね…」
「父さんは、おまえのことを一番愛していたからな。
でも、おまえのせいじゃないさ。
仕方のないことだったんだ。」
「ごめんなさい…」
キャロルはがっくりと肩を落とし、涙を拭う。
「良いのよ。
それよりも父さんが亡くなる時…あなたに詫びていたわ…
父さんは…許されないことをしてしまったの…」
「母さん、実は私、今日はそのことを父さんに聞くつもりでここに来たの。」
「そのことって…?」
「母さん…もしかして、私の赤ちゃんが死んだっていうのは…あれは嘘だったんじゃないの?」
「キャロル…どうしてそのことを…?!」
「やっぱり…」
「ここです。」
そう言ったっきり、キャロルは門の前で立ち尽していた。
ブランドンとキャロルは、マルタン達には詳しいことを告げないままに、キャロルの実家を訪ねていた。
馬車で一週間程の道程だった。
「大丈夫ですか、キャロルさん。」
「……ええ、大丈夫です。
では、行きましょうか?」
やっと決心がついたのか、キャロルは鉄の扉を押し開けた。
ステファンの屋敷には及ばないが、キャロルの実家もたいそう立派な造りの屋敷だった。
手入れの行き届いた庭を抜け、母家の扉をノックする。
「はい、どなたでしょう…?」
中から出て来たのは、品の良い白髪の老婦人だった。
「か…母さん…」
「え……あ……あなたは…
まさか…キャロル…キャロルなのっ?!」
「母さん!!」
二人は玄関で、泣きながら強く抱き合う…
二十九年ぶりの再会だった。
「母さん、どうかしたのかい?」
「に…兄さん…!」
「おまえ…キャロル…なのか?」
男性の言葉に、キャロルは頷いた。
「キャロル!」
思いがけない訪問者に、広い玄関ホールにはすすり泣きの声が響いた。
*
「今日は、なんて良い日なんでしょう…」
久しぶりの対面を果たした家族は、これまでのことをお互いに話しあった。
ただ、キャロルが一番会いたいと思っていた父親の姿はそこになかった。
キャロルが家を出て三年後に亡くなったとの知らせに、キャロルの涙は止まらなかった。
「私のせいなのね…」
「父さんは、おまえのことを一番愛していたからな。
でも、おまえのせいじゃないさ。
仕方のないことだったんだ。」
「ごめんなさい…」
キャロルはがっくりと肩を落とし、涙を拭う。
「良いのよ。
それよりも父さんが亡くなる時…あなたに詫びていたわ…
父さんは…許されないことをしてしまったの…」
「母さん、実は私、今日はそのことを父さんに聞くつもりでここに来たの。」
「そのことって…?」
「母さん…もしかして、私の赤ちゃんが死んだっていうのは…あれは嘘だったんじゃないの?」
「キャロル…どうしてそのことを…?!」
「やっぱり…」
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