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003 : 障害と剣
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ついに、格闘技の準々決勝の日がやってきた。
このあたりの客は演芸よりも格闘の方を好むらしく、会場の入りはかなり良かった。
ただ、リカールの出場した日程ではなく、客層も女性よりも男性の方が圧倒的に多い。
私達がリングを設営すると、いつものようにおかしな衣裳を身に付けたリュックが登場し、おもしろおかしく出場者の戦歴などを紹介し、最初の試合が始まった。
ほぼ休憩なしに第二試合が始まり、各試合の勝者が決まった。
そして、第三試合でリュックが不戦勝を告げ、オースティンの片手を上げようとした時、予期せぬことが起こった。
「ちょっと待った!」
広い場内に太い声が響き渡り、その場にいた全員の視線が一人の男に注がれた。
前から五列目あたりにいた若い男が声と共に立ち上がった。
短く刈り込まれた黒い髪に精悍な顔つきがとてもよく似合う。
年の頃は二十代半ばと言った所だろうか。
衣類の上からも体格の良さが窺えた。
「何なんだ?」
リング上のリュックが尋ねた。
「オースティンさんとかいったな。
俺が飛び入りであんたの相手をしてやるよ。
あんたも不戦勝なんて勝ち方はしたくないだろう?
でも、残念ながら俺と勝負したら、あんたは決勝には進めないことになるが…どうする?」
男は、片目を瞑り人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべながらそう言った。
挑発的なその態度と言葉にオースティンが乗らないはずはない。
「ようし!相手をしてやろう。
どこの田舎から出てきたのか知らないが、真の格闘家の実力を思い知らせてやろう。
明日からしばらくベッドの上でおとなしく寝てることになっても良いならあがってこい!」
男の隣の席に置いてあった大きな荷物から、彼が旅行者だということは一目瞭然だ。
それを見て、オースティンもそんなことを言ったのだろう。
しかし、男は、オースティンのその言葉にも少しも動揺した様子は見せない。
このあたりの客は演芸よりも格闘の方を好むらしく、会場の入りはかなり良かった。
ただ、リカールの出場した日程ではなく、客層も女性よりも男性の方が圧倒的に多い。
私達がリングを設営すると、いつものようにおかしな衣裳を身に付けたリュックが登場し、おもしろおかしく出場者の戦歴などを紹介し、最初の試合が始まった。
ほぼ休憩なしに第二試合が始まり、各試合の勝者が決まった。
そして、第三試合でリュックが不戦勝を告げ、オースティンの片手を上げようとした時、予期せぬことが起こった。
「ちょっと待った!」
広い場内に太い声が響き渡り、その場にいた全員の視線が一人の男に注がれた。
前から五列目あたりにいた若い男が声と共に立ち上がった。
短く刈り込まれた黒い髪に精悍な顔つきがとてもよく似合う。
年の頃は二十代半ばと言った所だろうか。
衣類の上からも体格の良さが窺えた。
「何なんだ?」
リング上のリュックが尋ねた。
「オースティンさんとかいったな。
俺が飛び入りであんたの相手をしてやるよ。
あんたも不戦勝なんて勝ち方はしたくないだろう?
でも、残念ながら俺と勝負したら、あんたは決勝には進めないことになるが…どうする?」
男は、片目を瞑り人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべながらそう言った。
挑発的なその態度と言葉にオースティンが乗らないはずはない。
「ようし!相手をしてやろう。
どこの田舎から出てきたのか知らないが、真の格闘家の実力を思い知らせてやろう。
明日からしばらくベッドの上でおとなしく寝てることになっても良いならあがってこい!」
男の隣の席に置いてあった大きな荷物から、彼が旅行者だということは一目瞭然だ。
それを見て、オースティンもそんなことを言ったのだろう。
しかし、男は、オースティンのその言葉にも少しも動揺した様子は見せない。
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