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095. 翼
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「どうした、トレル…」
「……いや…なんでも…」
上体を起こし、煙草をくゆらせるトレルに、エルスールがそっと身体を寄せる…
「……相変わらず、遊んでるようだな…」
小さな声で呟くエルスールに、トレルがくすりと笑う。
「焼き餅か?……おまえらしくないな。
そんなことは気にしなかったんじゃなかったのか?」
「……最近は、少し度を越しているのではないか。
私と会うのは、二週間ぶりだぞ…」
「何も毎日他の女にあってるわけじゃないさ。
イアン牧師は、けっこう人遣いが荒い男でな…」
「トレル!」
エルスールが、トレルの身体に覆い被さり、その唇を自分の唇で塞いだ。
「…危ないじゃないか、火傷する所だったぞ。」
トレルは、何事もなかったかのように短くなった煙草を灰皿に押しつけた。
「冷たい男だな…」
「おまえが情熱的過ぎるんだよ。」
「トレル…この町を出ないか?
二人でどこか遠くへ行ってみないか?」
「また、その話か…」
うんざりした声でトレルは呟き、再びベッドの中に潜りこんだ。
「そんなこと出来ないってことはわかってるだろ?」
「なぜだ?
イアンにかけられた術の解除など、造作もない。
足止めの術をはずせば、どこへでも行けるではないか…」
「おまえにはまだよくわかっていないようだな…」
独り言のようにトレルが囁く…
「私に飽きたのか?
それとも、本気で好きな女が出来たのか?」
「……そうじゃないさ。
俺がここから離れられないのは…そんなこととは関係ない…」
エルスールは、納得のいかない眼差しでトレルをみつめる。
「悔しい…
私ばかりが、なぜ、おまえにそんなに惹かれてしまうのか…」
トレルに覆い被さったエルスールが、トレルの全身に熱い口付けの雨を降らせる…
降り止まない情熱の赤い雨を…
「おい、おい…エルスール…」
ふりほどこうとしても決して離れないエルスールの火のような情熱に、次第にトレルも溶けて行く…
「どうした、トレル…」
「……いや…なんでも…」
上体を起こし、煙草をくゆらせるトレルに、エルスールがそっと身体を寄せる…
「……相変わらず、遊んでるようだな…」
小さな声で呟くエルスールに、トレルがくすりと笑う。
「焼き餅か?……おまえらしくないな。
そんなことは気にしなかったんじゃなかったのか?」
「……最近は、少し度を越しているのではないか。
私と会うのは、二週間ぶりだぞ…」
「何も毎日他の女にあってるわけじゃないさ。
イアン牧師は、けっこう人遣いが荒い男でな…」
「トレル!」
エルスールが、トレルの身体に覆い被さり、その唇を自分の唇で塞いだ。
「…危ないじゃないか、火傷する所だったぞ。」
トレルは、何事もなかったかのように短くなった煙草を灰皿に押しつけた。
「冷たい男だな…」
「おまえが情熱的過ぎるんだよ。」
「トレル…この町を出ないか?
二人でどこか遠くへ行ってみないか?」
「また、その話か…」
うんざりした声でトレルは呟き、再びベッドの中に潜りこんだ。
「そんなこと出来ないってことはわかってるだろ?」
「なぜだ?
イアンにかけられた術の解除など、造作もない。
足止めの術をはずせば、どこへでも行けるではないか…」
「おまえにはまだよくわかっていないようだな…」
独り言のようにトレルが囁く…
「私に飽きたのか?
それとも、本気で好きな女が出来たのか?」
「……そうじゃないさ。
俺がここから離れられないのは…そんなこととは関係ない…」
エルスールは、納得のいかない眼差しでトレルをみつめる。
「悔しい…
私ばかりが、なぜ、おまえにそんなに惹かれてしまうのか…」
トレルに覆い被さったエルスールが、トレルの全身に熱い口付けの雨を降らせる…
降り止まない情熱の赤い雨を…
「おい、おい…エルスール…」
ふりほどこうとしても決して離れないエルスールの火のような情熱に、次第にトレルも溶けて行く…
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