Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

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095. 翼

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「よぅ、オルジェ!
朝っぱらから精が出るな!」

作業の手を止め、背後からかけられた声にオルジェが振り向くと、そこには煙草をくゆらせながらにやけるトレルがいた。



「あんたなぁ…」

怒りを感じさせる言葉と共にオルジェの眉間に深い皺が刻まれる。



「誰のおかげで、俺がこんなことさせられてると思うんだ!
良い気なもんなだ…俺がこんなに朝早くから働いてるのに、あんたは今日も朝帰りか…」

舌打ちを交え、オルジェが言い捨てた。



「仕方ないじゃないか。
女が俺のことを離してくれないんだから…
そういや、おまえ、ケイトとの仲は少しは進展したのか?」

「ば…馬鹿言うな!
俺は、そんな暇なんて…」

「おおっ…可愛いねぇ…
そんなに真っ赤になっちゃって…」

「トレル!!
それ以上からかったら、承知しないぞ!」

真っ赤な顔のオルジェが、持っていたくわを振り上げる。



「こらこら、サボってたらイアン牧師に叱られるぞ。
さっさと耕せよ!」

「な、な、な…
一体、誰のせいで…」

ますます赤くなったオルジェの顔を見て、トレルは家に向かって駆け出した。



「一眠りしたら手伝ってやるよ~」

駆けながら、トレルが叫ぶ。



「トレルの馬鹿野郎~~!!」

後ろから聞こえるオルジェの声に、一人微笑みながらトレルは走る…



曲がり角を曲がり、オルジェから姿が見えなくなるとトレルは足を緩めた。
その顔にはまだ笑顔が浮かんでいた…



空はどこまでも青く…
目の前に広がるのは、畑と草原と小高いラスティアの山…

気の利いたもの等何もない片田舎の町には、その代わりに都会にはない自然と平和が満ち溢れている。

ここにいれば、刺激はないが平穏な一生が送れることだろう。
きっと、十年経っても二十年…いや、五十年経ってもここの風景はほとんど変わることはなく、ただこの町に住む者達の顔ぶれがほんの少し変わるだけ…

静かで穏やかな暮らしが約束された町…



トレルの頭上を一羽の鳥が流れるように飛び去った。




(良いな、おまえは…
どこへでも好きな所へ行けて…)


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