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093. 忘れられない
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しばらく行くと、ようやく記憶の泉らしき場所が見えてきた。
どこにでもありそうな小さな泉だ。
泉の中には昨日の女性が白装束を来て肩まで浸かっているのが見えた。
泉に近付くにつれ、私は、信じられない想いを感じた。
なぜなら、その泉は、底が見える程に透き通った美しい水を湛えていたのだから…
「やっぱり、いらっしゃったのね…」
「す、すみません…お邪魔をするつもりはなかったのですが…」
「そんなこと、かまいませんよ。」
「あ…あの…ここはなぜ…」
「あなたの言いたいことはわかってますよ。
この泉はこんなに綺麗な水をしてるのに、なぜ、ここから続くあの川の水はあんなに汚く濁っているかということでしょう?」
私は黙って頷いた。
「それは、私のような者がここに入るからですわ…
心の中にどうしようもなく汚い物を持った者達が、ここにそんな想いを捨てていくからなのです。
私の心の中の汚いものは特に根が深くてね…
こんなに何回も来てるのにまだ居座っているんです。
でも、それでも最初に来た時はずっとマシ…
これでもずいぶんと綺麗になったんですよ。
……あと少しで…きっと私の心は清らかになれると思うんです。
…この泉のようにね…」
そう言った女性の微笑みは、昨夜とは違い自然な笑顔だった。
「そうですね…
きっとそうなれますよ…」
彼女達の言った通り、私には今は必要のない場所だったようだ。
私は「記憶の泉」には触れることなく、その場を後にした…
どこにでもありそうな小さな泉だ。
泉の中には昨日の女性が白装束を来て肩まで浸かっているのが見えた。
泉に近付くにつれ、私は、信じられない想いを感じた。
なぜなら、その泉は、底が見える程に透き通った美しい水を湛えていたのだから…
「やっぱり、いらっしゃったのね…」
「す、すみません…お邪魔をするつもりはなかったのですが…」
「そんなこと、かまいませんよ。」
「あ…あの…ここはなぜ…」
「あなたの言いたいことはわかってますよ。
この泉はこんなに綺麗な水をしてるのに、なぜ、ここから続くあの川の水はあんなに汚く濁っているかということでしょう?」
私は黙って頷いた。
「それは、私のような者がここに入るからですわ…
心の中にどうしようもなく汚い物を持った者達が、ここにそんな想いを捨てていくからなのです。
私の心の中の汚いものは特に根が深くてね…
こんなに何回も来てるのにまだ居座っているんです。
でも、それでも最初に来た時はずっとマシ…
これでもずいぶんと綺麗になったんですよ。
……あと少しで…きっと私の心は清らかになれると思うんです。
…この泉のようにね…」
そう言った女性の微笑みは、昨夜とは違い自然な笑顔だった。
「そうですね…
きっとそうなれますよ…」
彼女達の言った通り、私には今は必要のない場所だったようだ。
私は「記憶の泉」には触れることなく、その場を後にした…
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