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ルカ(聖夜月ルカ)

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090. 一千年

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僕は、町に戻り、トゥローバ山でのことをハミエルに話した。



 「作り話ならもっとうまく話せよ。」



ハミエルは、僕の話を全く信じなかった。
 確かに、僕の言うことは突拍子もない話だ。
 信じられなくても当然なのかもしれない。
 僕自身、どこか信じられないくらいなのだから。
ともかく、僕達はようやく故郷に帰る決意を固めた。



 両親にはこっ酷く叱られたけど…もう二度と馬鹿な真似はしないと誓い、どうにか許してもらった。
また刺激のない退屈な生活が始まった。
だけど、そんな穏やかな暮らしにもある頃から影が射し始めた。



それは、僕に原因があった。
 僕は、村に戻って来た16歳の頃から、少しも容姿が変わらなかったからだ。
 最初のうちは「ジョッシュは童顔だな。」と言われる程度だった。
だけど、30あたりになると、さすがに皆が戸惑い始めた。
 僕自身、何か得体の知れない薄ら寒いものを感じていた。
 僕の容姿は、あまりにも若い…そして、その原因に思い当たることもあった。
あの消えた老人だ。
あの老人の丸薬を飲んだことが、なにかこのことと関連しているような気がした。



 40近くになると、誰もが僕を避けるようになっていた。
 僕は、村を離れた。
そのまま村にいたら、家族まで被害を被りそうだと思ったからだ。



 僕はその後も年を取らなかった。
いつまで経っても、僕は16の少年のままだった。
 出来る限り人との関りを避け、僕は一所に長居はせず、町から町へ移り住んだ。



 僕は確信した。
あの老人の丸薬が、このおかしな現象の原因だと。
もっとはっきりと言うならば、僕はあの薬のせいで、不老不死になったのだと思う。



そのことに絶望して、自ら命を絶とうとしたこともあったけど、死ぬことは出来なかった。
どんな方法をとろうとも、僕の傷は癒えてしまう。
 死ぬほどの痛みや苦しみを感じながらも、決して、死ぬことは出来ないんだ。
 僕はいつしか死ぬことを諦めた。



 物事を深く考えず、何事にも執着せず…
流されるように僕は生き続けた。
そうでなければ生きられない。
いつまでも死ねないという恐怖に押し潰されてしまうから…



やがて、気の遠くなるほどの時が流れた…




 
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