625 / 697
090. 一千年
2
しおりを挟む
「ジョッシュ、本当に行くつもりなのか?」
「当たり前だろ!僕は絶対に、仙人のお宝をみつけてやるんだ!」
*
15歳の時、僕は友人のハミエルと一緒に村を出た。
退屈な田舎の生活に嫌気がさし、二人でこっそり村を出て、憧れの都会に行くことにしたんだ。
着の身着のまま、たいした路銀もない無謀な旅立ちだった。
でも、僕らの心の中は、大きな期待と希望に満ち溢れ、そんなことは全く気にもならなかった。
初めての野宿も少しも心細くなんてなかった…雨が降った時と腹ペコ状態には悩まされたけど、それでも、僕らは都会に憧れ、胸をときめかせながら旅を続けた。
都会に辿り着いた時の感動は今でも忘れられない。
生まれ育った村とは比べものにならなかった。
そこにうごめく人の数も、立ち並ぶ建物の数も、町の醸し出す活気も…すべてが夢のように感じられた。
都会にいるというだけで、僕は嬉しくてたまらなかった。
僕らは仕事をみつけ、一生懸命に働いた。
時が過ぎ、少しずつ都会に馴染んで行く度に、夢は色褪せていった。
何かが違う…
あれほど憧れていた都会の町が、いつしかただの冷たいだけの町に思えるようになった。
僕らは、町はずれの掘っ立て小屋に住み、朝から晩まで辛い肉体労働をしていて…
それでも僕らは最低限の生活しか出来ず、楽しい想いなどなにもなかったのだから。
「なぁ、ジョッシュ…そろそろ村に帰らないか?」
ハミエルが度々そんなことを口にするようになった。
僕も実は同じことを考えていたのだけれど、そう言われると不思議と反発心がわき上がった。
「君はえらく意気地なしだな。僕は帰らないぞ!
都会で一旗揚げるまでは、絶対に帰らない!」
そんなことで、ハミエルとは度々気まずい想いをした。
本当は僕だって帰りたかったのに…
懐かしい両親や兄弟の顔が…生まれ育った故郷の風景が脳裏をかすめていたのに、それでも僕は素直になれなかったんだ。
そんなある日のこと…
僕らは、町の酒場で面白い話を耳にした。
トゥローバ山という険しい山に、仙人の宝があるという話だ。
その宝は、とても美しい宝石だとか、魔法の剣だとか、誰も詳しいことは知らないようだった。
そもそも、そんな話はただの噂話だと思っていた。
そう思いながらも、僕はその話にとてもひかれた。
多分…そこで何もみつけられなかったら、それを言い訳に故郷に戻れる…
そんなことを考えていたのだと思う。
僕は、ひとりでトゥローバ山に行くことを決意した。
「当たり前だろ!僕は絶対に、仙人のお宝をみつけてやるんだ!」
*
15歳の時、僕は友人のハミエルと一緒に村を出た。
退屈な田舎の生活に嫌気がさし、二人でこっそり村を出て、憧れの都会に行くことにしたんだ。
着の身着のまま、たいした路銀もない無謀な旅立ちだった。
でも、僕らの心の中は、大きな期待と希望に満ち溢れ、そんなことは全く気にもならなかった。
初めての野宿も少しも心細くなんてなかった…雨が降った時と腹ペコ状態には悩まされたけど、それでも、僕らは都会に憧れ、胸をときめかせながら旅を続けた。
都会に辿り着いた時の感動は今でも忘れられない。
生まれ育った村とは比べものにならなかった。
そこにうごめく人の数も、立ち並ぶ建物の数も、町の醸し出す活気も…すべてが夢のように感じられた。
都会にいるというだけで、僕は嬉しくてたまらなかった。
僕らは仕事をみつけ、一生懸命に働いた。
時が過ぎ、少しずつ都会に馴染んで行く度に、夢は色褪せていった。
何かが違う…
あれほど憧れていた都会の町が、いつしかただの冷たいだけの町に思えるようになった。
僕らは、町はずれの掘っ立て小屋に住み、朝から晩まで辛い肉体労働をしていて…
それでも僕らは最低限の生活しか出来ず、楽しい想いなどなにもなかったのだから。
「なぁ、ジョッシュ…そろそろ村に帰らないか?」
ハミエルが度々そんなことを口にするようになった。
僕も実は同じことを考えていたのだけれど、そう言われると不思議と反発心がわき上がった。
「君はえらく意気地なしだな。僕は帰らないぞ!
都会で一旗揚げるまでは、絶対に帰らない!」
そんなことで、ハミエルとは度々気まずい想いをした。
本当は僕だって帰りたかったのに…
懐かしい両親や兄弟の顔が…生まれ育った故郷の風景が脳裏をかすめていたのに、それでも僕は素直になれなかったんだ。
そんなある日のこと…
僕らは、町の酒場で面白い話を耳にした。
トゥローバ山という険しい山に、仙人の宝があるという話だ。
その宝は、とても美しい宝石だとか、魔法の剣だとか、誰も詳しいことは知らないようだった。
そもそも、そんな話はただの噂話だと思っていた。
そう思いながらも、僕はその話にとてもひかれた。
多分…そこで何もみつけられなかったら、それを言い訳に故郷に戻れる…
そんなことを考えていたのだと思う。
僕は、ひとりでトゥローバ山に行くことを決意した。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
最愛から2番目の恋
Mimi
恋愛
カリスレキアの第2王女ガートルードは、相手有責で婚約を破棄した。
彼女は醜女として有名であったが、それを厭う婚約者のクロスティア王国第1王子ユーシスに男娼を送り込まれて、ハニートラップを仕掛けられたのだった。
以前から婚約者の気持ちを知っていたガートルードが傷付く事は無かったが、周囲は彼女に気を遣う。
そんな折り、中央大陸で唯一の獣人の国、アストリッツァ国から婚姻の打診が届く。
王太子クラシオンとの、婚約ではなく一気に婚姻とは……
彼には最愛の番が居るのだが、その女性の身分が低いために正妃には出来ないらしい。
その事情から、醜女のガートルードをお飾りの妃にするつもりだと激怒する両親や兄姉を諌めて、クラシオンとの婚姻を決めたガートルードだった……
※ 『きみは、俺のただひとり~神様からのギフト』の番外編となります
ヒロインは本編では名前も出ない『カリスレキアの王女』と呼ばれるだけの設定のみで、登場しておりません
ですが、本編終了後の話ですので、そちらの登場人物達の顔出しネタバレが有ります
女神様の使い、5歳からやってます
めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。
「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」
女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに?
優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕!
基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。
戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。
海と風の王国
梨香
ファンタジー
ショウは海洋王国・東南諸島連合王国を治めるアスラン王の第六王子に転生した。第六王子なら王位に就くこともないだろうと呑気に構えていたが、兄王子達の諍いに巻き込まれていく。
スローライフと同じ世界ですが、国と時代が変わります。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
10秒で読めるちょっと怖い話。
絢郷水沙
ホラー
ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
いずれ最強の錬金術師?
小狐丸
ファンタジー
テンプレのごとく勇者召喚に巻き込まれたアラフォーサラリーマン入間 巧。何の因果か、女神様に勇者とは別口で異世界へと送られる事になる。
女神様の過保護なサポートで若返り、外見も日本人とはかけ離れたイケメンとなって異世界へと降り立つ。
けれど男の希望は生産職を営みながらのスローライフ。それを許さない女神特性の身体と能力。
はたして巧は異世界で平穏な生活を送れるのか。
**************
本編終了しました。
只今、暇つぶしに蛇足をツラツラ書き殴っています。
お暇でしたらどうぞ。
書籍版一巻〜七巻発売中です。
コミック版一巻〜二巻発売中です。
よろしくお願いします。
**************
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる