621 / 697
089. 寄り道
3
しおりを挟む
*
「これだけ採れば大丈夫だわ。」
リラは、明るい笑顔を浮かべた。
魔の森には、イザベラの言う通り、本当にいちごが実っていた。
村に実るいちごとは大きさも格段に違い、みずみずしく、甘い香りのする素晴らしいいちごだった。
リラは、そのいちごをかごいっぱいに集めた。
「あの言い伝えはデマだったみたいだね。
魔物なんてどこにもいない。」
「本当ね、そんな言い伝えに今まで躍らされていたなんて、なんだか悔しいわね。」
そんな会話を交わしながら、ふたりが森の出口に向かっていた時…
唐突に、低いうなり声が響き渡った。
「ガブリエル…声が…」
「そうだね…あっ!」
ふたりの前に、無数の狼たちが姿を現した。
狼たちは、鋭い牙をむき出し、ふたりを睨みつける。
「ガブリエル…!」
「リラ、僕の後ろに…!」
『この森のものはすべて主のもの。
それなのに、おまえたちはいちごを盗んだ。
おまえたちは、泥棒だ。
よって、おまえたちを征伐する!』
「えっ!?」
二人は同時に声を上げた。
「ガブリエル…今、声が…」
「あぁ、聞こえたよ!直接、頭の中に響くようだった。」
「このいちごは採っちゃいけないものだったんだわ!」
「そうだね。とにかく、そのいちごを置いて逃げよう!」
駆けだしたふたりの後を、狼の群れが追いかける。
「待って!」
狼を射ようと弓を構えたガブリエルを、リラが制した。
「悪いことをしたのは私なの。
だから、狼を殺さないで!」
「わかったよ!」
ガブリエルは、狼を傷付けないように威嚇の弓を放ちながら、走り続けた。
だが、やがて弓矢も尽き、狼の群れはふたりのすぐ近くに追いついた。
「もうだめだわ…
ガブリエル…ごめんなさい。
私のせいで、あなたをこんな目に遭わせて…」
「気にすることはないよ。
僕は自分の意志でここに来たんだ。
君のせいじゃない。」
ふたりは恐怖に身を固くして、強く抱き合った。
「これだけ採れば大丈夫だわ。」
リラは、明るい笑顔を浮かべた。
魔の森には、イザベラの言う通り、本当にいちごが実っていた。
村に実るいちごとは大きさも格段に違い、みずみずしく、甘い香りのする素晴らしいいちごだった。
リラは、そのいちごをかごいっぱいに集めた。
「あの言い伝えはデマだったみたいだね。
魔物なんてどこにもいない。」
「本当ね、そんな言い伝えに今まで躍らされていたなんて、なんだか悔しいわね。」
そんな会話を交わしながら、ふたりが森の出口に向かっていた時…
唐突に、低いうなり声が響き渡った。
「ガブリエル…声が…」
「そうだね…あっ!」
ふたりの前に、無数の狼たちが姿を現した。
狼たちは、鋭い牙をむき出し、ふたりを睨みつける。
「ガブリエル…!」
「リラ、僕の後ろに…!」
『この森のものはすべて主のもの。
それなのに、おまえたちはいちごを盗んだ。
おまえたちは、泥棒だ。
よって、おまえたちを征伐する!』
「えっ!?」
二人は同時に声を上げた。
「ガブリエル…今、声が…」
「あぁ、聞こえたよ!直接、頭の中に響くようだった。」
「このいちごは採っちゃいけないものだったんだわ!」
「そうだね。とにかく、そのいちごを置いて逃げよう!」
駆けだしたふたりの後を、狼の群れが追いかける。
「待って!」
狼を射ようと弓を構えたガブリエルを、リラが制した。
「悪いことをしたのは私なの。
だから、狼を殺さないで!」
「わかったよ!」
ガブリエルは、狼を傷付けないように威嚇の弓を放ちながら、走り続けた。
だが、やがて弓矢も尽き、狼の群れはふたりのすぐ近くに追いついた。
「もうだめだわ…
ガブリエル…ごめんなさい。
私のせいで、あなたをこんな目に遭わせて…」
「気にすることはないよ。
僕は自分の意志でここに来たんだ。
君のせいじゃない。」
ふたりは恐怖に身を固くして、強く抱き合った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています

婚約破棄を告げた瞬間に主神を祀る大聖堂が倒壊しました〜神様はお怒りのようです〜
和歌
ファンタジー
「アリシア・フィルハーリス、君の犯した罪はあまりに醜い。今日この場をもって私レオン・ウル・ゴルドとアリシア・フィルハーリスの婚約破棄を宣言する──」
王宮の夜会で王太子が声高に告げた直後に、凄まじい地響きと揺れが広間を襲った。
※恋愛要素が薄すぎる気がするので、恋愛→ファンタジーにカテゴリを変更しました(11/27)
※感想コメントありがとうございます。ネタバレせずに返信するのが難しい為、返信しておりませんが、色々予想しながら読んでいただけるのを励みにしております。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
ファントーシュ 私は魔法が使えない
かける
ファンタジー
アカネ・シズクノは小さいころから魔法が使えなかった。
自分はいつか魔女になるんだ。そう願わぬ願いを毎日信じていた。
ある日、アカネは師匠となる魔女と出会った。
アカネは魔女についていき、弟子となった。
物語はそうしたアカネが成長し、魔法使いとなったお話。
10秒で読めるちょっと怖い話。
絢郷水沙
ホラー
ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)
女神様の使い、5歳からやってます
めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。
「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」
女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに?
優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕!
基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。
戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。

魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。
imu
ファンタジー
病院の帰り道、歩くのもやっとな状態の私、花宮 凛羽 21歳。
今にも倒れそうな体に鞭を打ち、家まで15分の道を歩いていた。
あぁ、タクシーにすればよかったと、後悔し始めた時。
「—っ⁉︎」
私の体は、眩い光に包まれた。
次に目覚めた時、そこは、
「どこ…、ここ……。」
何故かずぶ濡れな私と、きらびやかな人達がいる世界でした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる