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ルカ(聖夜月ルカ)

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085. 帰る場所

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「しかし、今日はほんまにええ天気やなぁ…」

『そうだな。』

「こんな日は…」

『まさか…』

「やっぱし、昼寝やな!」

『おい、早く王都に行かないとまずいんじゃないのか?
呑気に寝てる場合じゃないだろう!』

「大丈夫、大丈夫。
そんな慌てんでも、王都は逃げへんから。」

そう言うとマールは、公園のベンチにごろんと横になる。
それとほぼ同時に、マールの規則正しい寝息が聞こえてきた。

『…寝付きの良さは世界一だな…』

ノーマンがふとそんなことを想った時、隣のベンチから、男の声が聞こえた。

「面白い者がいるものだな。」

ノーマンは、とっさにそれが普通の人間ではないことを知る。
それは、理屈ではなくごく直感的な判断だったが、それが間違っているとは思えなかった。
しかし、相手の正体についてはまるでわからない。
ここは相手の出方を待つことにした。

「オレの声が聞こえているのだろう…?」

『……何者だ?』

「…オレは…刃動。」

『名を尋ねたわけではない。』

「…わかっている。」

『何か、私に用でもあるのか?』

「ずいぶんと冷たいんだな。
お前は、オレと似た境遇ではないかと想ったのだが…」

『似た境遇…?』

ノーマンは、マールの神経を操り、その瞳を開いた。
隣のベンチに座っていたのは、声から想像した通り、男性。
年齢はマールより幾分若い感じだろうか…座っているが、その長い足からして長身のようだ。

ノーマンは、再び、マールのまぶたを閉じた。

『私にはおまえのことがよくわからない。
視覚的には、普通の人間のように見えるが、そうではないのだろう?』

「オレは…言霊だ…」

『言霊…?』

「そんなこと、すぐには理解出来ないだろうな。
ところで、オレにもお前のことがわからん。
お前は実体は持たないのか?」

『あるが…今はマールの身体の中だ…』

「なんだって!?実体が、そいつの中にあるというのか!」

『そうだが…』

刃動はとても信じられないとでも言いたげに、大きく頭を振った。

「世の中には本当にいろんな者がいるんだな…」

『おまえもそのうちの1つではないか。』

「そりゃあそうだな…」

刃動の顔に小さな笑みが浮かんだ。

「1つ聞きたいのだが…」

『なんだ?』 
 
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