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083. 幻想の草原
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「そうだったのか…
おまえにも世話をかけたな。
……君達、名はなんという?」
俺達の方に向けられた長の顔は、寝起きだというのにぼんやりした所は少しもなく、長だけあってどこか威厳の感じられる顔だった。
「え…えっと…俺はルーク…で、こっちはランスロットです。」
「ルークにランスロットだな。
私はシューメイヤ。
この度のこと、本当に感謝する。」
シューメイヤは俺達に手を差し出し、俺とランスロットは代わる代わる握手をした。
「シューメイヤ様、体調はいかがですか?」
「見ての通り、何事もない。
そんなことより、ジーニアス、詳しい話を聞かせてくれ。」
ジーニアスは少し心配そうだったけど、言われる通り、シューメイヤが眠りの呪いにかけられてからの説明を始めた。
目覚めの笛を取った時の俺の『能力』についても話され、シューメイヤはただ黙ってジーニアスの話を聞いていた。
*
「ルークさん、ランスロットさん、エルフの料理はお口にあいますか?」
「ええ、とてもおいしいです!」
ランスロットが目を輝かせてそう答えた。
その晩、俺達はシューメイヤの屋敷に泊めてもらうことになった。
夕食のエルフ料理は、野菜や果物のようなものが主で味付けも薄い。
はっきりいって俺にはうまいとは思えなかったが、ランスロットはお世辞ではなく本当に気に入っているようだった。
「シューメイヤ様、実は例の件をルークさん達にお願いしてはどうかと思い、こちらへお連れしたのですが…」
夕食の席で、ジーニアスが突然そんな事を言い出した。
「例の件って……あのお願いってやつのことですか?」
「そうなんです。
実は……あの宴では長が眠りの呪いをかけられただけではなく、大切なリュートを奪われてしまったのです。」
「リュートを?」
「実は、あの日、シューメイヤ様は小人達にリュートの演奏を頼まれました。
私達エルフも小人達も音楽や踊りが大好きですし、長はリュートの名手ですから、そのことには少しも不信感を感じませんでした。
……ですが、それは罠だったのです。
小人達は最初からリュートを奪うつもりでそんなことを言ったのです。」
ジーニアスの顔に暗い影が差し、シューメイヤも食事の手を停め、ジーニアスと同じような表情を浮かべていた。
二人の様子から見ても、そのリュートはずいぶんと大切なもののようだ。
「では、詳しい話を聞かせて下さい。」
何やらややこしいことになりそうな予感はしたが、乗りかかった船だ。
ここまで来たら、やるしかない!
おまえにも世話をかけたな。
……君達、名はなんという?」
俺達の方に向けられた長の顔は、寝起きだというのにぼんやりした所は少しもなく、長だけあってどこか威厳の感じられる顔だった。
「え…えっと…俺はルーク…で、こっちはランスロットです。」
「ルークにランスロットだな。
私はシューメイヤ。
この度のこと、本当に感謝する。」
シューメイヤは俺達に手を差し出し、俺とランスロットは代わる代わる握手をした。
「シューメイヤ様、体調はいかがですか?」
「見ての通り、何事もない。
そんなことより、ジーニアス、詳しい話を聞かせてくれ。」
ジーニアスは少し心配そうだったけど、言われる通り、シューメイヤが眠りの呪いにかけられてからの説明を始めた。
目覚めの笛を取った時の俺の『能力』についても話され、シューメイヤはただ黙ってジーニアスの話を聞いていた。
*
「ルークさん、ランスロットさん、エルフの料理はお口にあいますか?」
「ええ、とてもおいしいです!」
ランスロットが目を輝かせてそう答えた。
その晩、俺達はシューメイヤの屋敷に泊めてもらうことになった。
夕食のエルフ料理は、野菜や果物のようなものが主で味付けも薄い。
はっきりいって俺にはうまいとは思えなかったが、ランスロットはお世辞ではなく本当に気に入っているようだった。
「シューメイヤ様、実は例の件をルークさん達にお願いしてはどうかと思い、こちらへお連れしたのですが…」
夕食の席で、ジーニアスが突然そんな事を言い出した。
「例の件って……あのお願いってやつのことですか?」
「そうなんです。
実は……あの宴では長が眠りの呪いをかけられただけではなく、大切なリュートを奪われてしまったのです。」
「リュートを?」
「実は、あの日、シューメイヤ様は小人達にリュートの演奏を頼まれました。
私達エルフも小人達も音楽や踊りが大好きですし、長はリュートの名手ですから、そのことには少しも不信感を感じませんでした。
……ですが、それは罠だったのです。
小人達は最初からリュートを奪うつもりでそんなことを言ったのです。」
ジーニアスの顔に暗い影が差し、シューメイヤも食事の手を停め、ジーニアスと同じような表情を浮かべていた。
二人の様子から見ても、そのリュートはずいぶんと大切なもののようだ。
「では、詳しい話を聞かせて下さい。」
何やらややこしいことになりそうな予感はしたが、乗りかかった船だ。
ここまで来たら、やるしかない!
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