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080. 優しい悪魔
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「やぁ、ロッシュ…」
奴の仕事が終わるのを待ち、私は町のはずれで彼を待ち伏せた。
「……あなたは?」
「少し君と話がしたい。
どうかね、酒場で一杯飲みながら…」
「僕は酒は飲みませんので、お話なら今ここで伺います。」
無粋な男だ。
だが、私もどうしても酒が飲みたいわけではなかった。
「では、単刀直入に言わせていただく。
ロッシュ…君は、今、大変金に困ってるようだが…金が欲しいとは思わんかね?」
「そりゃあ、思いますが、今はザイラスさんの酒屋で働かせていただいてますから。」
「君のような華奢な者に、あの仕事は辛いだろう?
しかも、賃金もそう高いとは思えない。
そんな苦しい想いをしなくとも、私は君に欲しいだけの金を与えることが出来る。
それだけじゃない、君の失った名誉も回復してやれる。」
「……どういうことです?」
ロッシュの瞳には、明らかに疑いと嫌悪の色が浮かんでいた。
「はっきりと言う。
私は、悪魔だ。
君に、金と名誉を与える…その代わり…」
「魂をくれと言うのですね?」
ロッシュの口調が急に強いものに変わった。
「……その通りだ。
悪い取引ではないと思うが…」
「見損なわないで下さい。
僕は、どんなに苦しくとも、悪魔に魂を売ったりはしない。」
ロッシュは、踵を返し、歩き去ってしまった。
「私は町の宿屋にいる。
気が変わったら、いつでも来てくれ。」
ロッシュは私の言葉に振り向くこともなかった。
(……面白い。)
さすがに高潔な魂の持ち主だ。
ここまできっぱりと断られるとは思ってもみなかった。
少しくらい、心が動くかと思ったが、ああも頑なに私を拒むとは…
どこまで強気でいられるか、楽しみだ。
奴が音を上げ、私の前に跪く日のことを想うと、笑いが止まらなくなった。
「やぁ、ロッシュ…」
奴の仕事が終わるのを待ち、私は町のはずれで彼を待ち伏せた。
「……あなたは?」
「少し君と話がしたい。
どうかね、酒場で一杯飲みながら…」
「僕は酒は飲みませんので、お話なら今ここで伺います。」
無粋な男だ。
だが、私もどうしても酒が飲みたいわけではなかった。
「では、単刀直入に言わせていただく。
ロッシュ…君は、今、大変金に困ってるようだが…金が欲しいとは思わんかね?」
「そりゃあ、思いますが、今はザイラスさんの酒屋で働かせていただいてますから。」
「君のような華奢な者に、あの仕事は辛いだろう?
しかも、賃金もそう高いとは思えない。
そんな苦しい想いをしなくとも、私は君に欲しいだけの金を与えることが出来る。
それだけじゃない、君の失った名誉も回復してやれる。」
「……どういうことです?」
ロッシュの瞳には、明らかに疑いと嫌悪の色が浮かんでいた。
「はっきりと言う。
私は、悪魔だ。
君に、金と名誉を与える…その代わり…」
「魂をくれと言うのですね?」
ロッシュの口調が急に強いものに変わった。
「……その通りだ。
悪い取引ではないと思うが…」
「見損なわないで下さい。
僕は、どんなに苦しくとも、悪魔に魂を売ったりはしない。」
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少しくらい、心が動くかと思ったが、ああも頑なに私を拒むとは…
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奴が音を上げ、私の前に跪く日のことを想うと、笑いが止まらなくなった。
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