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079. 扉
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*
(はっ!?)
目を開けて、すぐに見えたのは見慣れた病室の天井だった。
そのことに妙に安堵する。
あれはなんだったんだ…?
扉から始まったあのおかしな夢は…
*
「潤……おかしなことを訊くけど、岡本君って知ってる?」
「えっ!?」
馬鹿なことをしているとは思ったけど、あの夢のことが気になり、僕は潤にそう訊ねた。
潤が、岡本君を知っていることは、答えを聞かなくても、真っ青なその顔色からわかった。
「な、なんで、トシが岡本のことを…」
「今朝、おかしな夢を見たんだ。
岡本君が僕に言うんだ。
潤のせいじゃないって。
本当の原因は、真由に騙されてたからだって。」
「えっ!?」
潤の驚きようは普通じゃなかった。
目は大きく見開かれ、汗が吹き出し、僕をじっとみつめてた。
「な、なぜ、トシが岡本や真由のことを…」
「さぁ、僕は夢を見ただけだから。」
潤は、よほどショックが大きかったのか、いつもならけっこう喋っていくのに、早々に引き上げてしまった。
そして、その晩…
僕はまた夢を見た。
先日の夢と全く同じだ。
「私の言ったことが本当だとわかってもらえたかね?」
「はい。」
「それは良かった。
今度の扉は、完全に関口潤と君の体を入れ替える…
一度開いたらもうやり直すことは出来ないが…どうするかね?」
「……今度は、開けません。」
「なぜだ?入れ替われば、君はこの先も生きていられるのだぞ。」
「……そうですね。
確かにとても魅力的です。
正直言って、僕はもっと生きたい…
でも……今回のことで、きっと潤の気持ちは変わると思うんです。
彼の心の傷が少しでも癒えて、彼が死にたいと思わなくなったとしたら…
それは、もしかしたら潤の命を伸ばせたってことなのかもしれません。
自分の命はだめだったけど、潤の命だけでも伸ばせたなら…それはやっぱり嬉しいことだから…」
老人は、切ない顔をして微笑んだ。
「ならば、伸びた分は折半っていうのはどうかね?」
「……どういうことです?」
老人は何も答えず、僕の目の前で煙のように消えて行った……
(はっ!?)
目を開けて、すぐに見えたのは見慣れた病室の天井だった。
そのことに妙に安堵する。
あれはなんだったんだ…?
扉から始まったあのおかしな夢は…
*
「潤……おかしなことを訊くけど、岡本君って知ってる?」
「えっ!?」
馬鹿なことをしているとは思ったけど、あの夢のことが気になり、僕は潤にそう訊ねた。
潤が、岡本君を知っていることは、答えを聞かなくても、真っ青なその顔色からわかった。
「な、なんで、トシが岡本のことを…」
「今朝、おかしな夢を見たんだ。
岡本君が僕に言うんだ。
潤のせいじゃないって。
本当の原因は、真由に騙されてたからだって。」
「えっ!?」
潤の驚きようは普通じゃなかった。
目は大きく見開かれ、汗が吹き出し、僕をじっとみつめてた。
「な、なぜ、トシが岡本や真由のことを…」
「さぁ、僕は夢を見ただけだから。」
潤は、よほどショックが大きかったのか、いつもならけっこう喋っていくのに、早々に引き上げてしまった。
そして、その晩…
僕はまた夢を見た。
先日の夢と全く同じだ。
「私の言ったことが本当だとわかってもらえたかね?」
「はい。」
「それは良かった。
今度の扉は、完全に関口潤と君の体を入れ替える…
一度開いたらもうやり直すことは出来ないが…どうするかね?」
「……今度は、開けません。」
「なぜだ?入れ替われば、君はこの先も生きていられるのだぞ。」
「……そうですね。
確かにとても魅力的です。
正直言って、僕はもっと生きたい…
でも……今回のことで、きっと潤の気持ちは変わると思うんです。
彼の心の傷が少しでも癒えて、彼が死にたいと思わなくなったとしたら…
それは、もしかしたら潤の命を伸ばせたってことなのかもしれません。
自分の命はだめだったけど、潤の命だけでも伸ばせたなら…それはやっぱり嬉しいことだから…」
老人は、切ない顔をして微笑んだ。
「ならば、伸びた分は折半っていうのはどうかね?」
「……どういうことです?」
老人は何も答えず、僕の目の前で煙のように消えて行った……
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