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078. 異国の歌
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「アンナ…知り合ってまだそんなに経たないのに、気が早いと思われるかもしれないけど…
結婚しないか?」
「け、結婚?!」
「そうさ…いやなのかい?」
「そうじゃないけど……」
「僕のことが好きじゃないの?」
「そんなことないわ。ステファンのことは大好きよ…」
「だったら、どうして?」
「………」
「……良いよ、もう。やっぱり、君には他に好きな人がいたんだね。」
「ステファン、一体何のこと?」
ステファンは黙って部屋を出て行った。
(わからない…私、なぜ返事が出来ないんだろう?)
それは、アンナの心の底にわだかまってるものがあるからだとは気が付いていなかった。
いまだに忘れることの出来ないあの異国の歌声…
それはステファンとつきあいだしてからも、まだあの場所へ向かう事をやめることが出来ない程強いものだった。
ステファンのことは愛しているのに、どうしてもあの歌声の主に会ってみたいという気持ちがおさまらない。
そんな罪悪感にも似た気持ちが、却ってアンナの気持ちを複雑なものにしていた。
その後、アンナが何度家を訪ねてもステファンが出て来ることはなかった…
(私ってなんて馬鹿なんだろう…
ステファンのことを愛してるのに…
なのに、どうしてこんな所に来てしまうのかしら…)
アンナは自分の気持ちをコントロール出来ない事に悲しくなっていた。
知らないうちに涙がこぼれていた。
その時……どこからかあの歌声が流れて来たのだ。
あの異国の歌声が…
アンナは、じっと耳を澄ませ、神経を集中して声の元を辿る。
暗い中、身体全体を耳にして、その歌声を探し求めた。
声は確実に近くなる…
その人の息遣いまでもが聞こえる程、近くに…!
アンナの足音を聞きつけたのか、不意に声がやんだ。
「誰かいるの?」
それは聞き覚えのある声だった。
「まさか…ステファン…じゃないわよね…?」
「その声は、アンナ?」
「う、嘘!!
あなただったの?ステファン!!」
二人は腕を伸ばし、お互いの身体を抱きしめた。
「どうしたんだい?アンナ…こんな所に…」
「それは、私のセリフよ!
ステファン、どうしてあなたが?!」
闇の中で、アンナは今の歌声の主をずっと前から探していたこと、そして、幼い頃から自分もその歌を知っていた事を話した。
「アンナ…知り合ってまだそんなに経たないのに、気が早いと思われるかもしれないけど…
結婚しないか?」
「け、結婚?!」
「そうさ…いやなのかい?」
「そうじゃないけど……」
「僕のことが好きじゃないの?」
「そんなことないわ。ステファンのことは大好きよ…」
「だったら、どうして?」
「………」
「……良いよ、もう。やっぱり、君には他に好きな人がいたんだね。」
「ステファン、一体何のこと?」
ステファンは黙って部屋を出て行った。
(わからない…私、なぜ返事が出来ないんだろう?)
それは、アンナの心の底にわだかまってるものがあるからだとは気が付いていなかった。
いまだに忘れることの出来ないあの異国の歌声…
それはステファンとつきあいだしてからも、まだあの場所へ向かう事をやめることが出来ない程強いものだった。
ステファンのことは愛しているのに、どうしてもあの歌声の主に会ってみたいという気持ちがおさまらない。
そんな罪悪感にも似た気持ちが、却ってアンナの気持ちを複雑なものにしていた。
その後、アンナが何度家を訪ねてもステファンが出て来ることはなかった…
(私ってなんて馬鹿なんだろう…
ステファンのことを愛してるのに…
なのに、どうしてこんな所に来てしまうのかしら…)
アンナは自分の気持ちをコントロール出来ない事に悲しくなっていた。
知らないうちに涙がこぼれていた。
その時……どこからかあの歌声が流れて来たのだ。
あの異国の歌声が…
アンナは、じっと耳を澄ませ、神経を集中して声の元を辿る。
暗い中、身体全体を耳にして、その歌声を探し求めた。
声は確実に近くなる…
その人の息遣いまでもが聞こえる程、近くに…!
アンナの足音を聞きつけたのか、不意に声がやんだ。
「誰かいるの?」
それは聞き覚えのある声だった。
「まさか…ステファン…じゃないわよね…?」
「その声は、アンナ?」
「う、嘘!!
あなただったの?ステファン!!」
二人は腕を伸ばし、お互いの身体を抱きしめた。
「どうしたんだい?アンナ…こんな所に…」
「それは、私のセリフよ!
ステファン、どうしてあなたが?!」
闇の中で、アンナは今の歌声の主をずっと前から探していたこと、そして、幼い頃から自分もその歌を知っていた事を話した。
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