555 / 697
078. 異国の歌
6
しおりを挟む
*
「アンナ…知り合ってまだそんなに経たないのに、気が早いと思われるかもしれないけど…
結婚しないか?」
「け、結婚?!」
「そうさ…いやなのかい?」
「そうじゃないけど……」
「僕のことが好きじゃないの?」
「そんなことないわ。ステファンのことは大好きよ…」
「だったら、どうして?」
「………」
「……良いよ、もう。やっぱり、君には他に好きな人がいたんだね。」
「ステファン、一体何のこと?」
ステファンは黙って部屋を出て行った。
(わからない…私、なぜ返事が出来ないんだろう?)
それは、アンナの心の底にわだかまってるものがあるからだとは気が付いていなかった。
いまだに忘れることの出来ないあの異国の歌声…
それはステファンとつきあいだしてからも、まだあの場所へ向かう事をやめることが出来ない程強いものだった。
ステファンのことは愛しているのに、どうしてもあの歌声の主に会ってみたいという気持ちがおさまらない。
そんな罪悪感にも似た気持ちが、却ってアンナの気持ちを複雑なものにしていた。
その後、アンナが何度家を訪ねてもステファンが出て来ることはなかった…
(私ってなんて馬鹿なんだろう…
ステファンのことを愛してるのに…
なのに、どうしてこんな所に来てしまうのかしら…)
アンナは自分の気持ちをコントロール出来ない事に悲しくなっていた。
知らないうちに涙がこぼれていた。
その時……どこからかあの歌声が流れて来たのだ。
あの異国の歌声が…
アンナは、じっと耳を澄ませ、神経を集中して声の元を辿る。
暗い中、身体全体を耳にして、その歌声を探し求めた。
声は確実に近くなる…
その人の息遣いまでもが聞こえる程、近くに…!
アンナの足音を聞きつけたのか、不意に声がやんだ。
「誰かいるの?」
それは聞き覚えのある声だった。
「まさか…ステファン…じゃないわよね…?」
「その声は、アンナ?」
「う、嘘!!
あなただったの?ステファン!!」
二人は腕を伸ばし、お互いの身体を抱きしめた。
「どうしたんだい?アンナ…こんな所に…」
「それは、私のセリフよ!
ステファン、どうしてあなたが?!」
闇の中で、アンナは今の歌声の主をずっと前から探していたこと、そして、幼い頃から自分もその歌を知っていた事を話した。
「アンナ…知り合ってまだそんなに経たないのに、気が早いと思われるかもしれないけど…
結婚しないか?」
「け、結婚?!」
「そうさ…いやなのかい?」
「そうじゃないけど……」
「僕のことが好きじゃないの?」
「そんなことないわ。ステファンのことは大好きよ…」
「だったら、どうして?」
「………」
「……良いよ、もう。やっぱり、君には他に好きな人がいたんだね。」
「ステファン、一体何のこと?」
ステファンは黙って部屋を出て行った。
(わからない…私、なぜ返事が出来ないんだろう?)
それは、アンナの心の底にわだかまってるものがあるからだとは気が付いていなかった。
いまだに忘れることの出来ないあの異国の歌声…
それはステファンとつきあいだしてからも、まだあの場所へ向かう事をやめることが出来ない程強いものだった。
ステファンのことは愛しているのに、どうしてもあの歌声の主に会ってみたいという気持ちがおさまらない。
そんな罪悪感にも似た気持ちが、却ってアンナの気持ちを複雑なものにしていた。
その後、アンナが何度家を訪ねてもステファンが出て来ることはなかった…
(私ってなんて馬鹿なんだろう…
ステファンのことを愛してるのに…
なのに、どうしてこんな所に来てしまうのかしら…)
アンナは自分の気持ちをコントロール出来ない事に悲しくなっていた。
知らないうちに涙がこぼれていた。
その時……どこからかあの歌声が流れて来たのだ。
あの異国の歌声が…
アンナは、じっと耳を澄ませ、神経を集中して声の元を辿る。
暗い中、身体全体を耳にして、その歌声を探し求めた。
声は確実に近くなる…
その人の息遣いまでもが聞こえる程、近くに…!
アンナの足音を聞きつけたのか、不意に声がやんだ。
「誰かいるの?」
それは聞き覚えのある声だった。
「まさか…ステファン…じゃないわよね…?」
「その声は、アンナ?」
「う、嘘!!
あなただったの?ステファン!!」
二人は腕を伸ばし、お互いの身体を抱きしめた。
「どうしたんだい?アンナ…こんな所に…」
「それは、私のセリフよ!
ステファン、どうしてあなたが?!」
闇の中で、アンナは今の歌声の主をずっと前から探していたこと、そして、幼い頃から自分もその歌を知っていた事を話した。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
来訪神に転生させてもらえました。石長姫には不老長寿、宇迦之御魂神には豊穣を授かりました。
克全
ファンタジー
ほのぼのスローライフを目指します。賽銭泥棒を取り押さえようとした氏子の田中一郎は、事もあろうに神域である境内の、それも神殿前で殺されてしまった。情けなく申し訳なく思った氏神様は、田中一郎を異世界に転生させて第二の人生を生きられるようにした。
料理を作って異世界改革
高坂ナツキ
ファンタジー
「ふむ名前は狭間真人か。喜べ、お前は神に選ばれた」
目が覚めると謎の白い空間で人型の発行体にそう語りかけられた。
「まあ、お前にやってもらいたいのは簡単だ。異世界で料理の技術をばらまいてほしいのさ」
記憶のない俺に神を名乗る謎の発行体はそう続ける。
いやいや、記憶もないのにどうやって料理の技術を広めるのか?
まあ、でもやることもないし、困ってる人がいるならやってみてもいいか。
そう決めたものの、ゼロから料理の技術を広めるのは大変で……。
善人でも悪人でもないという理由で神様に転生させられてしまった主人公。
神様からいろいろとチートをもらったものの、転生した世界は料理という概念自体が存在しない世界。
しかも、神様からもらったチートは調味料はいくらでも手に入るが食材が無限に手に入るわけではなく……。
現地で出会った少年少女と協力して様々な料理を作っていくが、果たして神様に依頼されたようにこの世界に料理の知識を広げることは可能なのか。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました
如月 雪名
ファンタジー
★2024年9月19日に2巻発売&コミカライズ化決定!(web版とは設定が異なる部分があります)
🔷第16回ファンタジー小説大賞。5/3207位で『特別賞』を受賞しました!!応援ありがとうございます(*^_^*)
💛小説家になろう累計PV1,830万以上達成!!
※感想欄を読まれる方は、申し訳ありませんがネタバレが多いのでご注意下さい<m(__)m>
スーパーの帰り道、突然異世界へ転移させられた、椎名 沙良(しいな さら)48歳。
残された封筒には【詫び状】と書かれており、自分がカルドサリ王国のハンフリー公爵家、リーシャ・ハンフリー、第一令嬢12歳となっているのを知る。
いきなり異世界で他人とし生きる事になったが、現状が非常によろしくない。
リーシャの母親は既に亡くなっており、後妻に虐待され納屋で監禁生活を送っていたからだ。
どうにか家庭環境を改善しようと、与えられた4つの能力(ホーム・アイテムBOX・マッピング・召喚)を使用し、早々に公爵家を出て冒険者となる。
虐待されていたため貧弱な体と体力しかないが、冒険者となり自由を手にし頑張っていく。
F級冒険者となった初日の稼ぎは、肉(角ウサギ)の配達料・鉄貨2枚(200円)。
それでもE級に上がるため200回頑張る。
同じ年頃の子供達に、からかわれたりしながらも着実に依頼をこなす日々。
チートな能力(ホームで自宅に帰れる)を隠しながら、町で路上生活をしている子供達を助けていく事に。
冒険者で稼いだお金で家を購入し、住む所を与え子供達を笑顔にする。
そんな彼女の行いを見守っていた冒険者や町人達は……。
やがて支援は町中から届くようになった。
F級冒険者からC級冒険者へと、地球から勝手に召喚した兄の椎名 賢也(しいな けんや)50歳と共に頑張り続け、4年半後ダンジョンへと進む。
ダンジョンの最終深部。
ダンジョンマスターとして再会した兄の親友(享年45)旭 尚人(あさひ なおと)も加わり、ついに3人で迷宮都市へ。
テイムした仲間のシルバー(シルバーウルフ)・ハニー(ハニービー)・フォレスト(迷宮タイガー)と一緒に楽しくダンジョン攻略中。
どこか気が抜けて心温まる? そんな冒険です。
残念ながら恋愛要素は皆無です。
仮想世界β!!
音音てすぃ
ファンタジー
「死すら忘れたら、人を殺せるのか?」
これは巷のVRゲームではなかった。
──────謎の行方不明事件が多発する現代。
特に何事もなく、流れに身を任せて生きてきた少年、音目京介、18歳。
ある日、こんな僕に話しかける女性(美人)により盲目にされる?
寄生型独立デバイス『PE』を取得した僕は記憶を犠牲に「死ぬ」ことすらない世界へ行くことになる。
そこはもう一つの、独立した理想郷だった。
彼は世界の破壊の為に呼ばれた人間。
これは主人公のオトメキョウスケが何の為に剣を振るのか間違いながら考えるお話。
ーーーーーー
O0~C4はプロローグになります。
初ファンタジーです。
筆者的にはファンタジーって感じなんです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる