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ルカ(聖夜月ルカ)

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078. 異国の歌

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アンナは、悲しいことがあった時、辛い時、嬉しい時…いろんな想いをこの曲に乗せて歌ってきた。
ニコラスと初めて結ばれた夜にも、この曲を口ずさんだ。



「変わった歌だね。
どこの言葉なんだい?」

「わからないの…
でも、私、子供の頃からこの歌が大好きで…」

「君のご両親は異国の人なのかい?」

「いいえ、この国よ。」

「じゃあ、きっと君が小さい頃に、近所に異国の人が住んでたんだね。」

「そうなのかしら?」

「そうさ、間違いないよ!
小さい子は、意味なんか考えないで聞いたものをそのまま覚えこむからね!」

アンナにはそんな記憶はなかったが、両親だけではなく親戚にも異国に行った者等いない。
なのに、アンナがその曲を覚えているということは、ニコラスの言う通りなのかもしれないと思った。



いつか自分に子供が出来たら、アンナはその曲をそのまま子供にも教えてあげようと考えていた。
子供を膝に抱き、歌を教えるその脇には、ニコラスがいるはずだったのに…



アンナは、そっと涙を拭った。
いつも、自分に勇気を与えてくれたこの曲も、今ではニコラスを思い出す悲しみの曲となってしまった。



(ニコラスの馬鹿…!
マーシャなんて、大嫌い!!)







アンナは、ニコラスのことを思い出すこの部屋を離れる決心をした。
そうでないと立ち直れない気がしたからだ。
隣町にちょうど良い部屋をみつけ、明日、引っ越す事が決まった。



引っ越しの前日、アンナは隣町を訪れた。
ちょうど休日だったこともあり、散歩がてら町の様子を少し知っておこうと思ったのだ。
ゆっくり歩いても隣町まではそんなに遠くはなく、昼過ぎに町に着いた。
今まで住んでた町とさほど変わった感じのない静かな町だ。
少し歩いた所には商店が建ち並び、生活するにも便利そうだった。
食事をする店も何軒かあった。
アンナは、そのうちの一軒に入り、遅いランチを摂った。



(お値段もお味もまぁまぁだわ。
雰囲気も悪くはないわね。)



職場にもそれほど遠くなるわけではないから、通勤に困る事もない。
あちらこちらを見て歩いてるうちに、あたりは暗くなっていた。



(もう、こんな時間なのね…早く帰らなくっちゃ…)

アンナは暗くなった道を、一人歩き始めた。
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