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076. 野望
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「15000」「15000」
表示された得票数を見た観客からの驚きの声が、細波のように会場に広がった。
「なんということでしょう!
28回のイケメンコンテストの歴史の中で、初めての同数です!」
司会者が電光掲示板を見上げ、興奮したように叫ぶ。
「では…優勝は……」
会場はこの結果にどよめいたまま。
司会者がどうしたものかと関係者の方へ視線を移すと、若い男が司会者に駆けよりそっと耳打ちをした。
司会者はそれを聞きながら、うんうんと頷く。
「失礼致しました。
何分、このようなことは初めてのことですので、結果が出るまでもうしばらくお待ち下さい。」
(なんと!同数とは…
で、では、優勝者はどうなるんじゃ?
ま、ま、まさか、ジャンケンで決めるのではなかろうな!?
楊俊様は天才的に後出しがうまいんじゃ!
そんなことになったら、胡燕殿の優勝はありえんぞ!!)
李雲は、舞台の袖で両手を合わせ、再び、神に祈った。
どうか、胡燕が優勝しますように…と…
会場が暗くなり、舞台には大きなスクリーンがするすると降り、歴代のイケメンコンテスト優勝者達のPVが流れ出す。
観客達は、優勝の行方を気にしながらも、美しい男達のPVで気を紛らせていた。
10分程が経過した頃、不意に客電が点き、観客達がまばゆさに目を細める中、先程の司会者が楊俊と胡燕を伴なって登場した。
「皆様、永らくお待たせいたしました!
協議の結果、今回は、楊俊さん、胡燕さん、お二人の優勝と決定致しました!
皆様、どうぞ、この二人の美しきイケメンチャンピオンに温かい拍手を…!」
「きゃあーーー!楊俊様ーーー!」
「胡燕さん、おめでとうーーー!」
会場からは割れんばかりの拍手と声援が飛び交う。
楊俊は、会場に向かって陽気に手を振り、胡燕は四方に向かって深く頭を下げた。
(やったーーーーーー!!!
ついに…ついに、これで念願の女人島へ行けるぞ…!!)
李雲の頭の中には、女人島での楽しい日々が妄想として浮かび上がる。
(て…天国がすぐ傍に……)
虚ろな目をして甘美な妄想に酔い知れる李雲の目に、目録を受け取る二人がぼんやりと映った。
「なお、今回は、優勝者が二人という思わぬ事態となりましたので、女人島ご招待はペアではなく、ご本人達のみとご招待とあいなりました。
ご了承下さい。」
(………ん………?
今………何と…何と……)
李雲は思わず舞台に飛び出した。
「す、す、す、すみません!
今、女人島のご招待のことがちょっとよく聞き取れなかったのですが…」
「なんだ、李雲、おまえがなぜこんな所に…
聞こえなかったのか?
今回は優勝者が二人になったから、ペアではなくなったってことだ。
つまり、女人島へ行くのは私とこの男の二人だけだ。」
「えええええええーーーーーーーーー!!」
李雲は、素っ頓狂な声で叫んだかと思うと、白目をむいてその場にひっくり返った。
*
*
*
かくして、李雲の野望は無残にも砕け散った。
その後、楊俊と胡燕は、女人島で夢のような数日間を過ごし、李雲はブーメランパンツを握り締めたまま一週間寝こんだという…
表示された得票数を見た観客からの驚きの声が、細波のように会場に広がった。
「なんということでしょう!
28回のイケメンコンテストの歴史の中で、初めての同数です!」
司会者が電光掲示板を見上げ、興奮したように叫ぶ。
「では…優勝は……」
会場はこの結果にどよめいたまま。
司会者がどうしたものかと関係者の方へ視線を移すと、若い男が司会者に駆けよりそっと耳打ちをした。
司会者はそれを聞きながら、うんうんと頷く。
「失礼致しました。
何分、このようなことは初めてのことですので、結果が出るまでもうしばらくお待ち下さい。」
(なんと!同数とは…
で、では、優勝者はどうなるんじゃ?
ま、ま、まさか、ジャンケンで決めるのではなかろうな!?
楊俊様は天才的に後出しがうまいんじゃ!
そんなことになったら、胡燕殿の優勝はありえんぞ!!)
李雲は、舞台の袖で両手を合わせ、再び、神に祈った。
どうか、胡燕が優勝しますように…と…
会場が暗くなり、舞台には大きなスクリーンがするすると降り、歴代のイケメンコンテスト優勝者達のPVが流れ出す。
観客達は、優勝の行方を気にしながらも、美しい男達のPVで気を紛らせていた。
10分程が経過した頃、不意に客電が点き、観客達がまばゆさに目を細める中、先程の司会者が楊俊と胡燕を伴なって登場した。
「皆様、永らくお待たせいたしました!
協議の結果、今回は、楊俊さん、胡燕さん、お二人の優勝と決定致しました!
皆様、どうぞ、この二人の美しきイケメンチャンピオンに温かい拍手を…!」
「きゃあーーー!楊俊様ーーー!」
「胡燕さん、おめでとうーーー!」
会場からは割れんばかりの拍手と声援が飛び交う。
楊俊は、会場に向かって陽気に手を振り、胡燕は四方に向かって深く頭を下げた。
(やったーーーーーー!!!
ついに…ついに、これで念願の女人島へ行けるぞ…!!)
李雲の頭の中には、女人島での楽しい日々が妄想として浮かび上がる。
(て…天国がすぐ傍に……)
虚ろな目をして甘美な妄想に酔い知れる李雲の目に、目録を受け取る二人がぼんやりと映った。
「なお、今回は、優勝者が二人という思わぬ事態となりましたので、女人島ご招待はペアではなく、ご本人達のみとご招待とあいなりました。
ご了承下さい。」
(………ん………?
今………何と…何と……)
李雲は思わず舞台に飛び出した。
「す、す、す、すみません!
今、女人島のご招待のことがちょっとよく聞き取れなかったのですが…」
「なんだ、李雲、おまえがなぜこんな所に…
聞こえなかったのか?
今回は優勝者が二人になったから、ペアではなくなったってことだ。
つまり、女人島へ行くのは私とこの男の二人だけだ。」
「えええええええーーーーーーーーー!!」
李雲は、素っ頓狂な声で叫んだかと思うと、白目をむいてその場にひっくり返った。
*
*
*
かくして、李雲の野望は無残にも砕け散った。
その後、楊俊と胡燕は、女人島で夢のような数日間を過ごし、李雲はブーメランパンツを握り締めたまま一週間寝こんだという…
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