Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
537 / 697
076. 野望

しおりを挟む




「かたじけない。
ご老人のご親切には本当に感謝しております。
このご恩、某は一生忘れませんぞ。」

デザートの杏仁豆腐を食べ終えた胡燕は、李雲に向き直り、深深と頭を下げた。

キラッ!
その言葉を聞いた李雲の瞳が妖しく光る…



「頭をお上げ下さい。
そんなに喜んでいただけたら、こちらこそ恐縮してしまいます。
私はただこの国のために一生懸命働いておられる軍人さんにおいしいものを食べていただきたかっただけ…ただそれだけなのですが、あなた様のような真面目で義理堅いお方はそういうわけにもいきますまい。
何もせずに、あんな高級料理をたらふく食べさせられたのでは気になって仕方がない…
そうでしょう、そうでしょうとも!
何もおっしゃらずともこの爺にはわかります。
私は何の下心もなかったのですが、こうなったら仕方がありません!
あなた様のお心を軽くするために、無理に何かしていただくことを考えましょう。
う~ん、う~ん、う~ん、これは困った…う~ん、う~ん…」

勝手にどんどん進行する、誰が見ても不自然な猿芝居にも気付かず、胡燕は何も考えられないまま李雲のワンマンショーを見つめていた。



「そうだ!!」

わざとらしさ全開で、李雲は手を打った。



「そういえば、近々開催されるイケメンコンテストの出場者が少ないと、主催者が困っていたのを思い出したぞ。
コンテストが盛りあがらないと町興しにもならないから、この軍人さんにはそれに出場してもらうことをお願いしてみよう!」

あまりにも棒読みな独り言を呟いた李雲は、胡燕の方に向き直る。



「実は…今、思い出したのですが…」

「ご老人、イケメンコンテストとは、一体何なのですか?」

「胡燕殿、なぜ、そのことを…?
そうか、私は知らないうちに独り言を言っていたのですな。
胡燕殿、イケメンとは容姿端麗な男性のことを言うのです。」

「容姿端麗…そんなコンテストに某のような者が出場出来るわけが…」

「何をおっしゃいます!
あなた様はとてもかっこいいですぞ!
それに、問題は出場者が少ないということなのです。
優勝がどうとか優勝特典の女人島ご招待がどうとか言っておるのではありません!」

「にょ…女人島?」

「い、いえ、なんでもございません。
とにかく、コンテスト当日までに、あなた様には私がスぺシャリストの手を借りて最善を尽くさせていただきます。
あなたは、ただ、その者達の言うことを聞いておけば良いのです。
もちろん…!!……食事は毎食あなた様のお好きなものをご用意させていただきます…」

最後のその言葉に、胡燕は無意識に頷いていた。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~

ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。 城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。 速人は気づく。 この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ! この世界の攻略法を俺は知っている! そして自分のステータスを見て気づく。 そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ! こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。 一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。 そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。 順調に強くなっていく中速人は気づく。 俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。 更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。 強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』 カクヨムとアルファポリス同時掲載。

処理中です...