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070. 光りさす庭
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家の中に入ると、老人はタイラーに酒をすすめたが、タイラーはそれにはほとんど手をつけず、男が話し始めるのを待っていた。
男は、名をスコットというらしい。
「実はな……」
スコットは、小引出しの中から古びた一枚の地図を取り出し、タイラーの目の前に広げて見せた。
「なんだ?
まさか、これが願いの番人のいる場所の地図だっていうのか?」
スコットは黙って頷いた。
「実は、俺はある一時期の記憶を失ってる。
なぁに、特にたいしたことじゃあない。
それが思い出せなくても、困ったことなんか今まで一つもなかった。
でも…時折、すごくもやもやした気分になるんだ。」
スコットはそう言って、昔のことを話し始めた。
彼は、若い頃、放浪の旅をしていたらしい。
これといった目的を持たず、知らない土地を見て歩くのが好きだったという。
そんなある日、スコットは、ある町の入口あたりに立っていた。
そこまでのことはしっかりと覚えているのに、今、自分がなぜそこにいるのかが皆目わからない。
まるで見えない誰かによって急にどこかからその場所に連れて来られたようなとても奇妙な感覚を覚えたらしい。
スコットは、なぜだかその町には入る気になれず、そのまま街道を歩いて隣町に行ったということだった。
それから先も何事もなく旅は続き、ある町で知り合った女性と結婚し、その後は旅をすることもなくなって平凡な人生を歩んで来たという。
「娘は5年前に嫁いだし、昨年、妻が亡くなった。
それからは、わしも寂しかったのか、つい昔のことを思い出す事が多くなってな。
この間、探し物をしてたらこれが出て来たんだ。
これが地図だってことは一目瞭然だが、どこの地図かはまるで覚えがなかった。
ところが、さっき、酒場であんたらの話を聞くとはなしに聞いてるうちに、ハッとした。
この地図は…多分、その場所のもんなんだ。
わしは…その場所に行ったことがあるんじゃないかと思うんだ。」
その言葉に、タイラーは瞳を大きく見開いた。
男は、名をスコットというらしい。
「実はな……」
スコットは、小引出しの中から古びた一枚の地図を取り出し、タイラーの目の前に広げて見せた。
「なんだ?
まさか、これが願いの番人のいる場所の地図だっていうのか?」
スコットは黙って頷いた。
「実は、俺はある一時期の記憶を失ってる。
なぁに、特にたいしたことじゃあない。
それが思い出せなくても、困ったことなんか今まで一つもなかった。
でも…時折、すごくもやもやした気分になるんだ。」
スコットはそう言って、昔のことを話し始めた。
彼は、若い頃、放浪の旅をしていたらしい。
これといった目的を持たず、知らない土地を見て歩くのが好きだったという。
そんなある日、スコットは、ある町の入口あたりに立っていた。
そこまでのことはしっかりと覚えているのに、今、自分がなぜそこにいるのかが皆目わからない。
まるで見えない誰かによって急にどこかからその場所に連れて来られたようなとても奇妙な感覚を覚えたらしい。
スコットは、なぜだかその町には入る気になれず、そのまま街道を歩いて隣町に行ったということだった。
それから先も何事もなく旅は続き、ある町で知り合った女性と結婚し、その後は旅をすることもなくなって平凡な人生を歩んで来たという。
「娘は5年前に嫁いだし、昨年、妻が亡くなった。
それからは、わしも寂しかったのか、つい昔のことを思い出す事が多くなってな。
この間、探し物をしてたらこれが出て来たんだ。
これが地図だってことは一目瞭然だが、どこの地図かはまるで覚えがなかった。
ところが、さっき、酒場であんたらの話を聞くとはなしに聞いてるうちに、ハッとした。
この地図は…多分、その場所のもんなんだ。
わしは…その場所に行ったことがあるんじゃないかと思うんだ。」
その言葉に、タイラーは瞳を大きく見開いた。
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