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ルカ(聖夜月ルカ)

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067. 手紙

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「幸治、しっかりしろ!!
目を開けろ!!」

誰かに胸倉を掴まれ、激しく頬を打たれて幸治は目を開いた。



「幸治!!俺がわかるか!」

「しゃ…社長…
どうしてここに…?」

幸治の目の前にいたのは、幸治の勤める工場の社長だった。



「良かった!俺のことがわかるんだな!
幸治!どのくらい薬を飲んだんだ!
今、救急車を呼ぶからな!」

「きゅ…救急車?
しゃ、社長!僕、薬なんて飲んでません!」

「えっ!
しかし、これは…」

社長が薬袋を幸治の目の前に差し出す。



「そ…それは……」

「何があった?…全部話してみろ!」

社長の迫力に押され、幸治はぽつりぽつりと話し始めた。




「ば、馬鹿野郎~~!!」

社長の分厚く大きな手の平が、幸治の頬を打った。



「なんで、そんなことを俺に相談しないんだ!
俺はおまえが最初に来た時に言ったはずだぞ!
俺のことは父親だと思って、困ったことがあったらなんでも相談しろって!
おまえは昔から何の心配もかけないしっかりした奴だったから、俺もついそんな風に思ってたが…
おまえはそんなに俺のことが信用出来ないのか!
俺になんか相談したって何にもならないって思ったのか!」

「そ…そうじゃありません。
ただ…これは僕がしでかした事ですから自分でなんとかしないといけないと思って…」

「なんとかするってのが死ぬことなのか?!
おまえが死んで、俺や工場の皆が何も感じないと思ったのか!
おまえは遺された者の気持ちがどんなもんだか、考えもしなかったのか?!」

「遺された者の気持ち…」

「そんな大馬鹿野郎はこうだ!」

再び、社長の大きな掌が幸治の頬を叩いた。



「しゃ…社長…」

顔をあげた幸治の目に映ったものは、涙を流し幸治をみつめる社長の顔だった。
それを見た途端…幸治の胸に熱いものが込み上げて来た。
こんなに力強い味方が、こんなに身近にいたことを今まで気付かないでいた自分が…幸治はとても情けなく思えた…

「社長…ご心配かけてすみませんでした。」

「すみませんじゃ済まないぞ!
風邪で具合が悪いって聞いたから来てみたら、こんなことで…
俺の寿命が何年縮まったと思ってるんだ!
しかも、つまらない女に騙されて借金を作るとは何事だ!
これから、いろいろ大変じゃないか!」

「いえ…このことは僕が…」

「まだそんなこと言ってやがるのか!
これはな、おまえじゃもうどうにもならんことだ。
黙って俺にまかせとけ!
それと、こんな物騒なものは没収だからな!
さ、今から俺の家に行くぞ!
かみさんにもいろんなことを相談しないといけないからな。
それと、晩飯もくわなきゃならん!
さぁ、行くぞ!!」

「は…はい…」






社長に急きたてられ、ベッドから立ちあがった幸治は、自分が手の中に何かを握り締めていることに気が付いた。

そっと開いた幸治の掌にあったもの…それは、小さな白い貝殻だった…
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