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067. 手紙
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小刻みに震える手で幸治は封を切った。
その手紙はいつもより、長いものだった。
「ここはとても寂しくて暗くて寒い。
地獄なんてものはなかったけど、それ以上に辛い所だ。
ここにいる人達は、皆、泣いてるか苦しそうな顔をしてる。
僕もすごく苦しい。
こうやって手紙を書くだけでもものすごく苦しいんだ。
ここに着いた時、ちらっと父さんと母さんの姿を見た。
二人共、僕を見てとても悲しそうに泣いてたよ。
僕も母さん達も必死で手を伸ばそうとしたけど、届かなかった。
僕は、母さん達よりずいぶん下の方に落ちていった。
この便箋と封筒は、その時、父さんが投げてくれたものなんだ。
ここに来てやっと僕は自分のしたことが間違いだったと気が付いた。
楽になりたくてここに来たのに、こっちの方がずっと辛い。
間違いだった。
帰りたいよ。僕は、そこに帰りたい!
そっちの方がずっと楽だもの。
なんで、僕、こんなことをしてしまったんだろう。
母さんが病気になるほど苦労して僕を育ててくれたのに、僕はそれを全部無にしてしまった。
幸せになるようにって、父さんが付けてくれた名前なのに、そうなる前にこんな所に来てしまった。
ここに来て、間違いに気が付くなんて遅すぎるよ。
もう、どうしようもないのに…
便箋もこれで最後だ。
どうか、僕のような間違いはしないでほしい。
ここに来てしまってからじゃ、遅いんだ…」
最後の方は、いつも以上に文字が乱れ、所々が滲んでいた。
(どういうことなんだ…)
幸治は手紙を手に、何度も何度も読み返した。
この文面はどう考えても、自分のことにあてはまる。
母親が病気で亡くなったことも、父親が、幸せになれるようにとの願いを込めて「幸治」と名付けてくれたことも…
内容から考えると、まるで自殺した人間が書いているように思える。
幸治は漠然と霊のことは信じてはいたが、実際に見た事があるわけではない。
それに、今、手許にあるのは現実に存在する手紙だ。
夢でも幻でもない。
(もしかしたら、以前ここに住んでた人が自殺でもしてて、その霊が自分と似た境遇の僕を助けに?)
でも、同じ部屋に住んだだけで、そんなことまでしてくれるものなのだろうか?
いくら考えても幸治にはその答えがわからなかった。
幸治は旅行鞄の中から母親の写真と薬袋を取り出した。
(母さん、ここで逝っちゃだめかな?
やっぱり、あの町に行きたいかい?)
写真の母親はなにも答えない。
不意に手紙のことが思い出され、幸治にはその笑顔が一瞬泣き顔に見えた。
その手紙はいつもより、長いものだった。
「ここはとても寂しくて暗くて寒い。
地獄なんてものはなかったけど、それ以上に辛い所だ。
ここにいる人達は、皆、泣いてるか苦しそうな顔をしてる。
僕もすごく苦しい。
こうやって手紙を書くだけでもものすごく苦しいんだ。
ここに着いた時、ちらっと父さんと母さんの姿を見た。
二人共、僕を見てとても悲しそうに泣いてたよ。
僕も母さん達も必死で手を伸ばそうとしたけど、届かなかった。
僕は、母さん達よりずいぶん下の方に落ちていった。
この便箋と封筒は、その時、父さんが投げてくれたものなんだ。
ここに来てやっと僕は自分のしたことが間違いだったと気が付いた。
楽になりたくてここに来たのに、こっちの方がずっと辛い。
間違いだった。
帰りたいよ。僕は、そこに帰りたい!
そっちの方がずっと楽だもの。
なんで、僕、こんなことをしてしまったんだろう。
母さんが病気になるほど苦労して僕を育ててくれたのに、僕はそれを全部無にしてしまった。
幸せになるようにって、父さんが付けてくれた名前なのに、そうなる前にこんな所に来てしまった。
ここに来て、間違いに気が付くなんて遅すぎるよ。
もう、どうしようもないのに…
便箋もこれで最後だ。
どうか、僕のような間違いはしないでほしい。
ここに来てしまってからじゃ、遅いんだ…」
最後の方は、いつも以上に文字が乱れ、所々が滲んでいた。
(どういうことなんだ…)
幸治は手紙を手に、何度も何度も読み返した。
この文面はどう考えても、自分のことにあてはまる。
母親が病気で亡くなったことも、父親が、幸せになれるようにとの願いを込めて「幸治」と名付けてくれたことも…
内容から考えると、まるで自殺した人間が書いているように思える。
幸治は漠然と霊のことは信じてはいたが、実際に見た事があるわけではない。
それに、今、手許にあるのは現実に存在する手紙だ。
夢でも幻でもない。
(もしかしたら、以前ここに住んでた人が自殺でもしてて、その霊が自分と似た境遇の僕を助けに?)
でも、同じ部屋に住んだだけで、そんなことまでしてくれるものなのだろうか?
いくら考えても幸治にはその答えがわからなかった。
幸治は旅行鞄の中から母親の写真と薬袋を取り出した。
(母さん、ここで逝っちゃだめかな?
やっぱり、あの町に行きたいかい?)
写真の母親はなにも答えない。
不意に手紙のことが思い出され、幸治にはその笑顔が一瞬泣き顔に見えた。
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