Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
470 / 697
067. 手紙

しおりを挟む
「君は見る目があるね。
これはイタリアの最高級の生地で作ってあるものだから、長く着られるよ。
それに85万っていうのは、定価だよ。
亜里沙の彼氏だったら、定価ってわけにはいかないし…55万…いや、50万で良いよ!
もう仕入れ値割っちゃうけど、これも亜里沙と君のためだ!」

「ありがとう、店長!
良かったね、幸治!!
こんなに安くしてもらえるなんて!」

「でも…僕、お金が…」

幸治は渋ったが、分割で払えば良いと言われ、結局、契約してしまった。



「素敵!やっぱり幸治はスーツが似合うよ!
ヤバイよ!あたし、惚れなおしちゃう。」

新しいスーツを着た幸治はまるで別人になったかのような気持ちを感じていた。
身に付けるものを変えるだけで、こんなに気持ちが変わるとは、幸治にも意外な程だった。
それから、亜里沙にすすめられるままに時計や宝石、そして幸運が舞い込むという絵等を購入した。
それらはすべて亜里沙の紹介した店で買ったものだった。
亜里沙の伝手でより安くしてもらえること、手許に金がなくとも分割払いにしてもらえることが買い物に拍車をかけた。

そんなある日、幸治は見知らぬ男と仲良さげに腕を組んで歩く亜里沙を目撃してしまう。
きっとあの男は亜里沙の友達か、親類なんだ…そう自分に言い聞かせながら、こっそりと二人の後を着いて行くと、二人は幸治がスーツを買った店に入って行った。
しばらくすると、二人が店から出て来た。
男は手に大きな袋を持っていた。



(まさか……!)

幸治の心に不安の渦が広がった。
その不安を払拭するため、幸治は亜里沙に電話をかけた。



「あ、亜里沙、今どこにいるの?」

「あ、幸治?今、あたし、近所のスーパーでママと夕飯の買い物中なんだ。」

「…本当に?」

「うん!本当だよ!
幸治、どうしたの?なにかあった?」

「……後ろ…見て…」

振り向いた亜里沙の瞳が一瞬大きく見開き、そして怒ったような表情に変わったかと思うと、亜里沙はそのまま雑踏の中に走り出してしまった。



「亜里沙、待って!!」

幸治は懸命に追いかけたが、亜里沙の姿をみつけることは出来なかった。
そして、その次の日から、亜里沙の携帯には二度と繋がることはなかった。




騙された…
幸治がやっとそのことに気が付いた時、幸治の借金はすでに700万を超えていた。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最愛から2番目の恋

Mimi
恋愛
 カリスレキアの第2王女ガートルードは、相手有責で婚約を破棄した。  彼女は醜女として有名であったが、それを厭う婚約者のクロスティア王国第1王子ユーシスに男娼を送り込まれて、ハニートラップを仕掛けられたのだった。  以前から婚約者の気持ちを知っていたガートルードが傷付く事は無かったが、周囲は彼女に気を遣う。  そんな折り、中央大陸で唯一の獣人の国、アストリッツァ国から婚姻の打診が届く。  王太子クラシオンとの、婚約ではなく一気に婚姻とは……  彼には最愛の番が居るのだが、その女性の身分が低いために正妃には出来ないらしい。  その事情から、醜女のガートルードをお飾りの妃にするつもりだと激怒する両親や兄姉を諌めて、クラシオンとの婚姻を決めたガートルードだった……  ※ 『きみは、俺のただひとり~神様からのギフト』の番外編となります  ヒロインは本編では名前も出ない『カリスレキアの王女』と呼ばれるだけの設定のみで、登場しておりません  ですが、本編終了後の話ですので、そちらの登場人物達の顔出しネタバレが有ります

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa
ファンタジー
第5回集英社Web小説大賞、奨励賞受賞。書籍化します。 書籍化に伴い、この作品はアルファポリスから削除予定となりますので、あしからずご承知おきください。 【第七部開始】 召喚魔法陣から逃げようとした主人公は、逃げ遅れたせいで召喚に遅刻してしまう。だが他のクラスメイトと違って任意のスキルを選べるようになっていた。しかし選んだ成長率マシマシスキルは自分の得意なものが現れないスキルだったのか、召喚先の国で無職判定をされて追い出されてしまう。 一方で微妙な職業が出てしまい、肩身の狭い思いをしていたヒロインも追い出される主人公の後を追って飛び出してしまった。 だがしかし、追い出された先は平民が住まう街などではなく、危険な魔物が住まう森の中だった! 突如始まったサバイバルに、成長率マシマシスキルは果たして役に立つのか! 魔物に襲われた主人公の運命やいかに! ※小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しています。 ※カクヨムにて先行公開中

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

悪役令嬢の追放エンド………修道院が無いじゃない!(はっ!?ここを楽園にしましょう♪

naturalsoft
ファンタジー
シオン・アクエリアス公爵令嬢は転生者であった。そして、同じく転生者であるヒロインに負けて、北方にある辺境の国内で1番厳しいと呼ばれる修道院へ送られる事となった。 「きぃーーーー!!!!!私は負けておりませんわ!イベントの強制力に負けたのですわ!覚えてらっしゃいーーーー!!!!!」 そして、目的地まで運ばれて着いてみると……… 「はて?修道院がありませんわ?」 why!? えっ、領主が修道院や孤児院が無いのにあると言って、不正に補助金を着服しているって? どこの現代社会でもある不正をしてんのよーーーーー!!!!!! ※ジャンルをファンタジーに変更しました。

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

ファントーシュ 私は魔法が使えない

かける
ファンタジー
アカネ・シズクノは小さいころから魔法が使えなかった。 自分はいつか魔女になるんだ。そう願わぬ願いを毎日信じていた。 ある日、アカネは師匠となる魔女と出会った。 アカネは魔女についていき、弟子となった。 物語はそうしたアカネが成長し、魔法使いとなったお話。

婚約破棄を告げた瞬間に主神を祀る大聖堂が倒壊しました〜神様はお怒りのようです〜

和歌
ファンタジー
「アリシア・フィルハーリス、君の犯した罪はあまりに醜い。今日この場をもって私レオン・ウル・ゴルドとアリシア・フィルハーリスの婚約破棄を宣言する──」  王宮の夜会で王太子が声高に告げた直後に、凄まじい地響きと揺れが広間を襲った。 ※恋愛要素が薄すぎる気がするので、恋愛→ファンタジーにカテゴリを変更しました(11/27) ※感想コメントありがとうございます。ネタバレせずに返信するのが難しい為、返信しておりませんが、色々予想しながら読んでいただけるのを励みにしております。

処理中です...