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064. 水に没む
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「畜生~~っっ!」
俺は、足元の小石に心の中のもやもやをぶつけるように、激しく蹴り飛ばした。
罪もない小石は、緩やかな放物線を描きながら、離れた草むらの中に消えていった。
こんなことをしてみても、苛立ちがおさまるわけもなく…
俺は、たまらない気持ちで近くの岩に腰掛け、深いため息を吐いた。
がっくりと肩を落とし、大きな溜息を吐いてる自分自身にまた腹が立ってくる。
(信じられない……
なんで、こんなことになっちまったんだ!?)
俺は今でもこの状況がどこか信じられない気分だった。
街道の傍らに座りこんでいる今の俺は、俺であって、俺ではない…
本来の俺は、陽気で自信家でパワフルな男の筈だった。
なのに、ある一人の女が原因で、俺はすっかり変わってしまった。
(メアリ……
なんで、あんな女に……)
どこにでもありそうなありふれたきっかけで俺はメアリという女と出会った。
派手で遊び好きな俺の周りにはいないタイプの女だった。
最初は、名前さえ覚えていなかったあの女が、次第に俺の心の中で大きな存在になっていった。
時の経過と共に、俺の心の中のメアリはどんどんと大きくなり、気付いた時には心の中は彼女のことで占領されていた。
目覚めてから寝るまで…いや、眠ってからは夢の中にまで彼女が現れる始末だった。
俺は、彼女に結婚を申し込んだ。
……確かにそれは性急過ぎることだったかもしれない。
「真剣につきあってくれ!」とでも言えば良かったのかもしれない。
でも、俺の気持ちはすでに伝わってると思ってた。
俺は、今まで女にふられたことはない。
自分で言うのもなんだが、俺の見た目はかなり良い方だ。
会話もうまい筈だし、女の扱いはよくわかってるつもりだ。
だからこそ、この年まで女に食べさせてもらうことが出来たんだ。
女達は言った。
「あんたには真面目に働くなんて似合わない。」と。
「あんたは、金のことなんて心配しないで良い。」と。
俺は、その言葉に従い、彼女達の望む俺でいただけだ。
だが、メアリは違った。
「あなたのような遊び人を好きにはなれない。」
そんな一言だけを残し、あっさりと俺の前から去って行った。
俺は、足元の小石に心の中のもやもやをぶつけるように、激しく蹴り飛ばした。
罪もない小石は、緩やかな放物線を描きながら、離れた草むらの中に消えていった。
こんなことをしてみても、苛立ちがおさまるわけもなく…
俺は、たまらない気持ちで近くの岩に腰掛け、深いため息を吐いた。
がっくりと肩を落とし、大きな溜息を吐いてる自分自身にまた腹が立ってくる。
(信じられない……
なんで、こんなことになっちまったんだ!?)
俺は今でもこの状況がどこか信じられない気分だった。
街道の傍らに座りこんでいる今の俺は、俺であって、俺ではない…
本来の俺は、陽気で自信家でパワフルな男の筈だった。
なのに、ある一人の女が原因で、俺はすっかり変わってしまった。
(メアリ……
なんで、あんな女に……)
どこにでもありそうなありふれたきっかけで俺はメアリという女と出会った。
派手で遊び好きな俺の周りにはいないタイプの女だった。
最初は、名前さえ覚えていなかったあの女が、次第に俺の心の中で大きな存在になっていった。
時の経過と共に、俺の心の中のメアリはどんどんと大きくなり、気付いた時には心の中は彼女のことで占領されていた。
目覚めてから寝るまで…いや、眠ってからは夢の中にまで彼女が現れる始末だった。
俺は、彼女に結婚を申し込んだ。
……確かにそれは性急過ぎることだったかもしれない。
「真剣につきあってくれ!」とでも言えば良かったのかもしれない。
でも、俺の気持ちはすでに伝わってると思ってた。
俺は、今まで女にふられたことはない。
自分で言うのもなんだが、俺の見た目はかなり良い方だ。
会話もうまい筈だし、女の扱いはよくわかってるつもりだ。
だからこそ、この年まで女に食べさせてもらうことが出来たんだ。
女達は言った。
「あんたには真面目に働くなんて似合わない。」と。
「あんたは、金のことなんて心配しないで良い。」と。
俺は、その言葉に従い、彼女達の望む俺でいただけだ。
だが、メアリは違った。
「あなたのような遊び人を好きにはなれない。」
そんな一言だけを残し、あっさりと俺の前から去って行った。
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