Gift

061. 出発前夜

３

＊



 「イリヤ…この後、あなたの家に寄っても良いかしら？」

 「俺の家に？一体、何なんだ？」

 「こういうことは考えたくはないけれど…今まで八人ものパイロットがいなくなってるのよ。
もしかしたら、私達だってそうなるかもしれないわ。
だから、景気付けに乾杯がしたくて…
ちょうど、とても美味しいワインが手に入ったの。」

 「そういうことか…それならどうぞ。」

 俺は、ケイトを車に乗せ、アパートに戻った。



 ＊



 「明日は、必ず良い結果を持って帰れるように…！
 乾杯！」

 「乾杯！」

 俺達は、グラスを合わせた。



 「じゃあ、私はこれで…」

 「え？もう帰るのか？」

 「ええ、あなたと乾杯がしたかっただけだから。」

ケイトはそそくさと俺のアパートを後にした。



 （おかしな奴だな…）



 窓から、ケイトの後ろ姿を見ていた時、俺は急に腹痛を感じた。
 痛みはどんどん激しくなり、脂汗が滴る程だ。
 俺は、救急車を要請した。
 苦しみの中で、俺はぼんやりと考えていた。
こんなに急に体調が悪くなるのはおかしい…と。



 「これは、なんらかの毒物反応ですね。」

 「ど、毒…？」



ふと、ケイトのことが頭をかすめた。
だが、驚きもそこそこに、俺は薬の作用で意識を失った。