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ルカ(聖夜月ルカ)

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060. 犬狼星(シリウス)

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次の朝、俺が目を覚ますと、ケンが俺の身体を抱き抱えるようにして横にいた。



「うわっ!」

「やっと起きたか…
じゃ、そろそろ行くか?」

動揺する俺とは違い、ケンは何も感じてはいないようだった。
もしかしたら奴にはおかしな趣味が…?…なんてことも疑っていたのだが、そうではなかったようだ。
俺はほっと胸を撫で下ろし、彼について小屋を出た。
近くでみつけた震えあがりそうに冷たい川の水で顔を洗い、俺達は狐の追跡を再開した…









あれから、一ヶ月の時が流れた。
ケンの追跡は間違ってはいないようで、あれから数回俺も狐らしきものの姿をみかけた。
しかし、まだ捕まえる所まではいってない。



ふと気がつくと、俺の心の中から、いつの間にか死というものが消え去っていた。
消えてはいないのかもしれないが、今までよりずっと深い所へ沈んでしまったような感覚だ。
少なくとも、ケンが狐を捕まえるまで俺はケンと一緒にいなくてはならない。
その意識がきっとそうさせたのだろう。

昨日、ひさしぶりに両親に手紙を書いた。
友達と一緒にあちこち旅をしていると…
まだ、しばらくは帰れないと思うけど、元気でやってるということをしたためた。
高校はやめるということも書こうかと思ったが、今回はやめておいた。
メールで送ればすぐなのに、めったに書かない手紙にしたのはなぜなのか、自分でもよくわからない。



「翔馬、そろそろ行くぞ!
狐はあっちだ!」

「わかった、今、行くよ!」




俺は、ケンの元へ駆け出した。
今日もまた、絶対に捕まらない狐の追跡が始まる… 


 
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