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060. 犬狼星(シリウス)
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「今日はここまでだな…
疲れただろ?どこかで休もう。
……とは言っても、休む所なんてあるのか…?」
見渡す限り、休めそうな場所はない。
あたりに広がるのは畑と野原だけのようだ。
「少し歩いてみようか…」
俺の返事を待たずに彼は歩き出した。
「……ねぇ…君は狐を探してるって言ったけど、なぜ?
何か、特別な狐なのか?」
「そうだな、特別な狐だといえるだろうな。
絶対に捕まらない狐だからな。
それとな、『君』はやめろよ。
名前で呼んでくれよ。」
「名前…?君の名前は何ていうの?」
「ケン。」
「…わかったよ。」
「それで……ケン。
絶対に捕まらないっていうのはどういうことなんだ?」
「どういうもこういうも…絶対捕まらないのは絶対捕まらないってことさ。」
絶対捕まらない狐をみつけてもそれは絶対に捕まらないのではないのか?
そういう疑問が浮かんだが、まともな答えが帰って来るとは思えなかったので、聞くのはやめておいた。
俺達は、しばらく歩いた先に農機具の小屋をみつけ、勝手にそこに泊まらせてもらうことにした。
粗末な小屋には隙間風が入り、外にいるのとあまり変わらないのではないかと思えたが、きっと幾分かはマシなのだろう。
俺は、持っていたパンを半分に割ってケンに分け与えた。
このあたりにはコンビニなんてものも期待出来ないのだから、今夜はそれで我慢するしかなかった。
そのくらいで腹が満たされる事はなかったが、早起きしたせいか、慣れない山歩きのせいかすぐに睡魔が襲って来た。
しかし、いざ、眠ろうとすると寒さで目が覚めてしまう。
「眠れないのか?」
「あぁ、寒くてな…」
ケンは寒さに強いのか、それ程寒がってはいないように見えた。
ごそごそとケンが擦り寄って来る気配に、俺は身を堅くした。
「こうしてると温かいだろ?」
ぴったりと身を寄せてくるケンに危険なものを感じ、俺は離れようとしたが、部屋の隅に座っていたため逃げ場がなかった。
それに…ケンの身体は本当に温かく気持ちが良くて…俺はついそのまま眠り込んでしまった。
疲れただろ?どこかで休もう。
……とは言っても、休む所なんてあるのか…?」
見渡す限り、休めそうな場所はない。
あたりに広がるのは畑と野原だけのようだ。
「少し歩いてみようか…」
俺の返事を待たずに彼は歩き出した。
「……ねぇ…君は狐を探してるって言ったけど、なぜ?
何か、特別な狐なのか?」
「そうだな、特別な狐だといえるだろうな。
絶対に捕まらない狐だからな。
それとな、『君』はやめろよ。
名前で呼んでくれよ。」
「名前…?君の名前は何ていうの?」
「ケン。」
「…わかったよ。」
「それで……ケン。
絶対に捕まらないっていうのはどういうことなんだ?」
「どういうもこういうも…絶対捕まらないのは絶対捕まらないってことさ。」
絶対捕まらない狐をみつけてもそれは絶対に捕まらないのではないのか?
そういう疑問が浮かんだが、まともな答えが帰って来るとは思えなかったので、聞くのはやめておいた。
俺達は、しばらく歩いた先に農機具の小屋をみつけ、勝手にそこに泊まらせてもらうことにした。
粗末な小屋には隙間風が入り、外にいるのとあまり変わらないのではないかと思えたが、きっと幾分かはマシなのだろう。
俺は、持っていたパンを半分に割ってケンに分け与えた。
このあたりにはコンビニなんてものも期待出来ないのだから、今夜はそれで我慢するしかなかった。
そのくらいで腹が満たされる事はなかったが、早起きしたせいか、慣れない山歩きのせいかすぐに睡魔が襲って来た。
しかし、いざ、眠ろうとすると寒さで目が覚めてしまう。
「眠れないのか?」
「あぁ、寒くてな…」
ケンは寒さに強いのか、それ程寒がってはいないように見えた。
ごそごそとケンが擦り寄って来る気配に、俺は身を堅くした。
「こうしてると温かいだろ?」
ぴったりと身を寄せてくるケンに危険なものを感じ、俺は離れようとしたが、部屋の隅に座っていたため逃げ場がなかった。
それに…ケンの身体は本当に温かく気持ちが良くて…俺はついそのまま眠り込んでしまった。
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