417 / 697
060. 犬狼星(シリウス)
4
しおりを挟む
「ちょっと待てよ。
翔馬がそんな所にいたから、俺は狐を捕まえ損ねたんだぜ。
責任取ってもらわなくちゃな。」
またおかしなことを言っている。
しかも、いきなり俺のことを呼び捨てにしている。
彼は俺にいちゃもんを付けて金でも要求するつもりなのか?
しかし、金ですむなら楽といえば楽ではある。
そんな大金は持ってはいないが、欲しいのならくれてやる。
「じゃ、行こうか…」
「いくらだ?」と尋ねようとした時、一瞬早く彼が口を開いた。
彼は立ちあがり、懐中電灯であたりを照らし始めた。
「なぁ、翔馬、おまえ、狐を見なかったか?」
「…は?」
「だから、狐だよ!」
「狐…?」
彼は、俺に金を要求するつもりではないらしい。
そういえば、さっき口にした「じゃ、行こうか」とは何を意味する言葉なのか…
「あの…さ。
どこへ行くんだ?」
「どこって、狐探しに決まってるじゃないか。
翔馬のせいで取り逃したんだから、狐を捕まえるまで翔馬も手伝うんだぜ。」
「は……?」
「……おまえ、さっきから、は?ばっかり言ってないか?
どうした?さっき転んだ時に頭でも打ったのか?
それとも普段からぼーっとしてる奴なのか?」
また出かかった「は?」を俺は咄嗟に飲みこんだ。
そして、考えた。
今の状況を…
彼の言っている言葉の真意を…
しかし、その答えは俺にはまるでわからなかった。
なんでぶつかられた側の俺が、そんなことを手伝わされなきゃいけないのか?
そもそも、狐探しって…
そう考えた時、俺の脳裏に先程のことが甦った。
(そうだ…
星を見てた時、確かに何かが走りすぎた。
もしかしたら、あれが狐なのか?
だとしたら、狐を追っているというこの男の言ってることは本当なのか?)
「そういえば…なにかが走っていくのを見たような気がする。
君とぶつかるほんの少し前だ。」
「それだ!
それで、そいつはどっちに行った?」
「確か…あっち…」
「よし、行くぜ!」
「行くって…やっぱり、俺も行くのか?」
「当たり前だろ?
はぐれるとまずいから手を繋いで行こう!」
「え…?!」
伸ばされた彼の指を俺は反射的にふりほどいた。
同年代の男同士で手を繋いで夜道を歩いてるなんて、どう考えても気味が悪い。
そう言って断ると、俺が、彼の手首をもつことで許してくれた。
それもおかしな話だが、手を繋いでいるよりはまだ少しはマシな気がした。
誰が見てるわけではないが、やはり嫌なものは嫌だ。
しばらく進むと、彼がまたおかしなことを口にした。
「うん、間違いない。
あいつはこっちに来たんだ。」
何を根拠にそう言っているのかはわからないが、さして興味もなかったのでそのあたりのことは尋ねることはせず、俺は黙ってついて行った。
気が付けば、いつの間にか俺達は山を降りていた。
翔馬がそんな所にいたから、俺は狐を捕まえ損ねたんだぜ。
責任取ってもらわなくちゃな。」
またおかしなことを言っている。
しかも、いきなり俺のことを呼び捨てにしている。
彼は俺にいちゃもんを付けて金でも要求するつもりなのか?
しかし、金ですむなら楽といえば楽ではある。
そんな大金は持ってはいないが、欲しいのならくれてやる。
「じゃ、行こうか…」
「いくらだ?」と尋ねようとした時、一瞬早く彼が口を開いた。
彼は立ちあがり、懐中電灯であたりを照らし始めた。
「なぁ、翔馬、おまえ、狐を見なかったか?」
「…は?」
「だから、狐だよ!」
「狐…?」
彼は、俺に金を要求するつもりではないらしい。
そういえば、さっき口にした「じゃ、行こうか」とは何を意味する言葉なのか…
「あの…さ。
どこへ行くんだ?」
「どこって、狐探しに決まってるじゃないか。
翔馬のせいで取り逃したんだから、狐を捕まえるまで翔馬も手伝うんだぜ。」
「は……?」
「……おまえ、さっきから、は?ばっかり言ってないか?
どうした?さっき転んだ時に頭でも打ったのか?
それとも普段からぼーっとしてる奴なのか?」
また出かかった「は?」を俺は咄嗟に飲みこんだ。
そして、考えた。
今の状況を…
彼の言っている言葉の真意を…
しかし、その答えは俺にはまるでわからなかった。
なんでぶつかられた側の俺が、そんなことを手伝わされなきゃいけないのか?
そもそも、狐探しって…
そう考えた時、俺の脳裏に先程のことが甦った。
(そうだ…
星を見てた時、確かに何かが走りすぎた。
もしかしたら、あれが狐なのか?
だとしたら、狐を追っているというこの男の言ってることは本当なのか?)
「そういえば…なにかが走っていくのを見たような気がする。
君とぶつかるほんの少し前だ。」
「それだ!
それで、そいつはどっちに行った?」
「確か…あっち…」
「よし、行くぜ!」
「行くって…やっぱり、俺も行くのか?」
「当たり前だろ?
はぐれるとまずいから手を繋いで行こう!」
「え…?!」
伸ばされた彼の指を俺は反射的にふりほどいた。
同年代の男同士で手を繋いで夜道を歩いてるなんて、どう考えても気味が悪い。
そう言って断ると、俺が、彼の手首をもつことで許してくれた。
それもおかしな話だが、手を繋いでいるよりはまだ少しはマシな気がした。
誰が見てるわけではないが、やはり嫌なものは嫌だ。
しばらく進むと、彼がまたおかしなことを口にした。
「うん、間違いない。
あいつはこっちに来たんだ。」
何を根拠にそう言っているのかはわからないが、さして興味もなかったのでそのあたりのことは尋ねることはせず、俺は黙ってついて行った。
気が付けば、いつの間にか俺達は山を降りていた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
お人好し底辺テイマーがSSSランク聖獣たちともふもふ無双する
大福金
ファンタジー
次世代ファンタジーカップ【ユニークキャラクター賞】受賞作
《あらすじ》
この世界では12歳になると、自分に合ったジョブが決まる。これは神からのギフトとされこの時に人生が決まる。
皆、華やかなジョブを希望するが何に成るかは神次第なのだ。
そんな中俺はジョブを決める12歳の洗礼式で【魔物使い】テイマーになった。
花形のジョブではないが動物は好きだし俺は魔物使いと言うジョブを気にいっていた。
ジョブが決まれば12歳から修行にでる。15歳になるとこのジョブでお金を稼ぐ事もできるし。冒険者登録をして世界を旅しながらお金を稼ぐ事もできる。
この時俺はまだ見ぬ未来に期待していた。
だが俺は……一年たっても二年たっても一匹もテイム出来なかった。
犬や猫、底辺魔物のスライムやゴブリンでさえテイム出来ない。
俺のジョブは本当に魔物使いなのか疑うほどに。
こんな俺でも同郷のデュークが冒険者パーティー【深緑の牙】に仲間に入れてくれた。
俺はメンバーの為に必死に頑張った。
なのに……あんな形で俺を追放なんて‼︎
そんな無能な俺が後に……
SSSランクのフェンリルをテイム(使役)し無双する
主人公ティーゴの活躍とは裏腹に
深緑の牙はどんどん転落して行く……
基本ほのぼのです。可愛いもふもふフェンリルを愛でます。
たまに人の為にもふもふ無双します。
ざまぁ後は可愛いもふもふ達とのんびり旅をして行きます。
もふもふ仲間はどんどん増えて行きます。可愛いもふもふ仲間達をティーゴはドンドン無自覚にタラシこんでいきます。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

転生幼女は幸せを得る。
泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる