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060. 犬狼星(シリウス)
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俺はすでに暗くなった山道を登り続けた。
それほど高い山ではないのに、息は切れ足腰が痛み出した。
日頃の運動不足が、こんな所で堪えてくるとは…
きっと、このあたりの年寄りは俺なんかよりずっと元気で、俺のこんな姿を見たら「良い若いもんがなんてことじゃ。」なんて呆れられるのだろう…
そんなことを考えてたら、俺は自然に微笑んでいた。
やがて、俺はどうにか頂上らしき場所に辿りついた。
こんな暗がりに山に登る者も降りる者もいるはずもなく、結局、誰とも出会う事はなかった。
誰もいない、何もない場所…
「あ……」
ふと見上げると、空には見た事もないような無数の星が瞬いていた。
(星ってこんなにたくさんあるんだ…)
いかにも、都会で育った俺の考えそうな事だ。
星の数が変わるわけ等ない。
ただ、それが鮮明に見えるかどうか…ただそれだけの違いだということはわかっているのに、なぜだか俺はそんなことを感じてしまった。
誰もいない暗い闇の中で、俺は星の瞬く空をみつめていた。
頭の中が無になったような…
どう表現すれば良いのかよくわからない感覚に浸りながら、ただただ空の星をみつめていた。
その時、目の端をなにか黒いものが走りすぎた気がした。
(……動物か?
……山の動物って……まさか、熊じゃないよな?!)
柄にもなく浸りきっていたセンチメンタルな気分が一瞬のうちに弾け飛んだ。
この世からおさらばしても良いと思ってたくせに、熊のことが頭に浮かんだ途端、俺は現実感に引き戻され言い様のない恐怖を感じた。
熊にしては小さいと思ったし、熊があんな素早い動きをするとは思わなかったが、野生の熊を見たことがないため自信はない。
(どうしよう…)
そう考えた瞬間、今度は背中に何か大きなものがぶつかりその衝撃で俺はその場に倒れた。
(やっぱり熊か!?)
痛さよりも恐怖を先に感じた。
そして俺は自分でも信じられない程のスピードで後ろを振り向いた。
それほど高い山ではないのに、息は切れ足腰が痛み出した。
日頃の運動不足が、こんな所で堪えてくるとは…
きっと、このあたりの年寄りは俺なんかよりずっと元気で、俺のこんな姿を見たら「良い若いもんがなんてことじゃ。」なんて呆れられるのだろう…
そんなことを考えてたら、俺は自然に微笑んでいた。
やがて、俺はどうにか頂上らしき場所に辿りついた。
こんな暗がりに山に登る者も降りる者もいるはずもなく、結局、誰とも出会う事はなかった。
誰もいない、何もない場所…
「あ……」
ふと見上げると、空には見た事もないような無数の星が瞬いていた。
(星ってこんなにたくさんあるんだ…)
いかにも、都会で育った俺の考えそうな事だ。
星の数が変わるわけ等ない。
ただ、それが鮮明に見えるかどうか…ただそれだけの違いだということはわかっているのに、なぜだか俺はそんなことを感じてしまった。
誰もいない暗い闇の中で、俺は星の瞬く空をみつめていた。
頭の中が無になったような…
どう表現すれば良いのかよくわからない感覚に浸りながら、ただただ空の星をみつめていた。
その時、目の端をなにか黒いものが走りすぎた気がした。
(……動物か?
……山の動物って……まさか、熊じゃないよな?!)
柄にもなく浸りきっていたセンチメンタルな気分が一瞬のうちに弾け飛んだ。
この世からおさらばしても良いと思ってたくせに、熊のことが頭に浮かんだ途端、俺は現実感に引き戻され言い様のない恐怖を感じた。
熊にしては小さいと思ったし、熊があんな素早い動きをするとは思わなかったが、野生の熊を見たことがないため自信はない。
(どうしよう…)
そう考えた瞬間、今度は背中に何か大きなものがぶつかりその衝撃で俺はその場に倒れた。
(やっぱり熊か!?)
痛さよりも恐怖を先に感じた。
そして俺は自分でも信じられない程のスピードで後ろを振り向いた。
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