Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
415 / 697
060. 犬狼星(シリウス)

しおりを挟む
俺はすでに暗くなった山道を登り続けた。
それほど高い山ではないのに、息は切れ足腰が痛み出した。
日頃の運動不足が、こんな所で堪えてくるとは…
きっと、このあたりの年寄りは俺なんかよりずっと元気で、俺のこんな姿を見たら「良い若いもんがなんてことじゃ。」なんて呆れられるのだろう…
そんなことを考えてたら、俺は自然に微笑んでいた。

やがて、俺はどうにか頂上らしき場所に辿りついた。
こんな暗がりに山に登る者も降りる者もいるはずもなく、結局、誰とも出会う事はなかった。
誰もいない、何もない場所…



「あ……」



ふと見上げると、空には見た事もないような無数の星が瞬いていた。



(星ってこんなにたくさんあるんだ…)



いかにも、都会で育った俺の考えそうな事だ。
星の数が変わるわけ等ない。
ただ、それが鮮明に見えるかどうか…ただそれだけの違いだということはわかっているのに、なぜだか俺はそんなことを感じてしまった。
誰もいない暗い闇の中で、俺は星の瞬く空をみつめていた。
頭の中が無になったような…
どう表現すれば良いのかよくわからない感覚に浸りながら、ただただ空の星をみつめていた。

その時、目の端をなにか黒いものが走りすぎた気がした。



(……動物か?
……山の動物って……まさか、熊じゃないよな?!)



柄にもなく浸りきっていたセンチメンタルな気分が一瞬のうちに弾け飛んだ。
この世からおさらばしても良いと思ってたくせに、熊のことが頭に浮かんだ途端、俺は現実感に引き戻され言い様のない恐怖を感じた。
熊にしては小さいと思ったし、熊があんな素早い動きをするとは思わなかったが、野生の熊を見たことがないため自信はない。



(どうしよう…)



そう考えた瞬間、今度は背中に何か大きなものがぶつかりその衝撃で俺はその場に倒れた。



(やっぱり熊か!?)



痛さよりも恐怖を先に感じた。
そして俺は自分でも信じられない程のスピードで後ろを振り向いた。


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~

エルリア
ファンタジー
HOTランキング1位ありがとうございます! 2000年代初頭。 突如として出現したダンジョンと魔物によって人類は未曾有の危機へと陥った。 しかし、新たに獲得したスキルによって人類はその危機を乗り越え、なんならダンジョンや魔物を新たな素材、エネルギー資源として使うようになる。 人類とダンジョンが共存して数十年。 元ブラック企業勤務の主人公が一発逆転を賭け夢のタワマン生活を目指して挑んだ探索者研修。 なんとか手に入れたものの最初は外れスキルだと思われていた収奪スキルが実はものすごく優秀だと気付いたその瞬間から、彼の華々しくも生々しい日常が始まった。 これは魔物のスキルを駆使して夢と欲望を満たしつつ、そのついでに前人未到のダンジョンを攻略するある男の物語である。

本当にあった怖い話

邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。 完結としますが、体験談が追加され次第更新します。 LINEオプチャにて、体験談募集中✨ あなたの体験談、投稿してみませんか? 投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。 【邪神白猫】で検索してみてね🐱 ↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください) https://youtube.com/@yuachanRio ※登場する施設名や人物名などは全て架空です。

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

ファントーシュ 私は魔法が使えない

かける
ファンタジー
アカネ・シズクノは小さいころから魔法が使えなかった。 自分はいつか魔女になるんだ。そう願わぬ願いを毎日信じていた。 ある日、アカネは師匠となる魔女と出会った。 アカネは魔女についていき、弟子となった。 物語はそうしたアカネが成長し、魔法使いとなったお話。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

いずれ最強の錬金術師?

小狐丸
ファンタジー
 テンプレのごとく勇者召喚に巻き込まれたアラフォーサラリーマン入間 巧。何の因果か、女神様に勇者とは別口で異世界へと送られる事になる。  女神様の過保護なサポートで若返り、外見も日本人とはかけ離れたイケメンとなって異世界へと降り立つ。  けれど男の希望は生産職を営みながらのスローライフ。それを許さない女神特性の身体と能力。  はたして巧は異世界で平穏な生活を送れるのか。 **************  本編終了しました。  只今、暇つぶしに蛇足をツラツラ書き殴っています。  お暇でしたらどうぞ。  書籍版一巻〜七巻発売中です。  コミック版一巻〜二巻発売中です。  よろしくお願いします。 **************

10秒で読めるちょっと怖い話。

絢郷水沙
ホラー
 ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

処理中です...