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ルカ(聖夜月ルカ)

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059. 明けの明星

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(……もう何日になるだろう?

悪魔に乗っ取られた母がこの部屋に来なくなって…)



アシュリーはいつの間にか12歳になっていた。
悪臭の漂う暗く閉ざされた部屋の中で、誰とも話す事無く時間も季節もわからない毎日…

壊れそうな心をどうにか支えられたのは、皮肉なことに、泣いても叫んでも助けは来ないとわかった時からだった。
すべてを諦めた時、アシュリーの生存本能だけがたくましく息衝いた。


しかし、あの女は不意にこの場所に来なくなった。
アシュリーはもう何日も食べるものを口にしていない。
深刻なのは食べるものよりも、むしろ水だ。



(神様、僕、このまま死んでしまうの?こんな所でひとりぼっちで?
いやだ!そんなのいやだ!)



アシュリーは力を振り絞り、椅子を持って扉を叩き続けた。
そんなことをしたらすぐに母が怒鳴りに来てひどい折檻を受けるのだが、今回は誰も来ない。
やはり、母はどこかへでかけているのだとアシュリーは思った。
今ならなんとかなるかもしれない…!
手の皮がむけ血が流れても、アシュリーは扉を叩き続けた。
やがて、疲れはて意識が遠のきそうになった頃、ようやく扉に穴が開いた。

よろめく足取りで地下室を出、父の部屋にいくと、すでに父がこの世にいないことがわかった。

アシュリーは、獣のような声で叫びながら転がるように部屋を出た。


廊下には母の亡骸があった。

「……マ…ママ……」

心臓の鼓動が異常に速い。
身体の震えが止まらない。
顔からは冷たい汗が吹き出て、アシュリーはその場に倒れた。



何があったのかはわからないが…もう両親がこの世にいないことだけははっきりとわかった…
そうだ…きっと、あの悪魔に殺されたんだ…
母にとりついていたあの悪魔に…

そして、今、自分の命も消えようとしている。

あの悪魔のせいで…
あいつのせいで…みんなが…

(神様、なぜ、こんな酷い目に遭わせるのです?…僕は死にたくない!
こんな惨めに死んでいくのはいやだ!
助けて!
僕を助けて!
神様!!
あぁ、悪魔でもなんでも良い!
僕を助けてくれるなら、誰だって…!
お願いだ…!誰か…誰か、僕を助けて…!!)



混濁した頭の中で、アシュリーは自分の身体に眩い光と真っ暗な闇が飛びこんで来るのをぼんやりと感じていた…
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