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057. 陽炎
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「……わかったわ。
じゃあ、あたし、トカゲの国をあんたと一緒に探すことにする!
それが、口止め料の代わりよ。
良いわね!」
僕が頷くと、妖精は僕にその場に真っ直ぐ立っているように言いつけた。
「じゃあ、行くわよ!」
そう言うなり、妖精は僕の胸元目掛けて矢のように飛び出し、ぶつかる衝撃を感じると思った瞬間、妖精の身体は僕の身体をすり抜けた。
「はい、これで契約完了!」
振り向くと、妖精は何事もなかったかのように微笑んでいた。
僕には今のが何なのかよくはわからなかったけど、とりあえず、妖精がこれから僕と一緒にトカゲの国を探してくれるのは間違い無さそうだ。
僕達は、お互いのことを少し話しあった。
彼女の名はフェリーシア、自称、妖精一の人間通。
妖精の村を追放されたのは今度で四度目のことで、つまりすでに三百年はどっぷりと人間界にいたことになる。
長老様でもそんなに長く暮らしたことはないと、フェリーシアは得意げに胸を張った。
「なんで、そんなに何度も…」
僕が話しかけた時、遠くで何者かの声が聞こえた。
「誰か来るわ!」
フェリーシアは、険しい表情をして木の茂みに身を潜める。
「まさか……」
その声はなんだか聞いたことのある声で…声と共に、軽やかな蹄の音がして…
「ケンタロウ!!」
僕は堪えきれずに立ちあがり、叫んでいた。
「トカチェン!!」
名前を間違えられたことで一瞬気をそがれたけど、ケンタロウにがっしりと抱き締められて、僕は胸がいっぱいになってしまった。
「ごめん!さっきは本当にごめん!!」
ケンタロウは、何度も何度も僕に向かって頭を下げた。
もう良いって言ってるのに、それでも謝り続けた。
「ケンタロウ、そんなことより、君に話したいことがあるんだ。」
「話したいこと…?何かあったのか?」
その時、ケンタロウの腹の虫が鳴いた。
「あ……」
ケンタロウは決まり悪そうに、ぼりぼりと頭をかいた。
「何か食べながら話そうか。
実は、君に紹介したい人もいるんだ。」
「えっ!紹介したい人?」
ケンタロウは口を開けたまま、大きな目で僕をみつめてる。
フェリーシアのことを聞いたら、この目はもっと大きくなるだろう。
そんなことを考えると、おかしくて僕の口許に小さな笑いが宿った。
ケンタロウはきっと気付いてないと思うけど…
じゃあ、あたし、トカゲの国をあんたと一緒に探すことにする!
それが、口止め料の代わりよ。
良いわね!」
僕が頷くと、妖精は僕にその場に真っ直ぐ立っているように言いつけた。
「じゃあ、行くわよ!」
そう言うなり、妖精は僕の胸元目掛けて矢のように飛び出し、ぶつかる衝撃を感じると思った瞬間、妖精の身体は僕の身体をすり抜けた。
「はい、これで契約完了!」
振り向くと、妖精は何事もなかったかのように微笑んでいた。
僕には今のが何なのかよくはわからなかったけど、とりあえず、妖精がこれから僕と一緒にトカゲの国を探してくれるのは間違い無さそうだ。
僕達は、お互いのことを少し話しあった。
彼女の名はフェリーシア、自称、妖精一の人間通。
妖精の村を追放されたのは今度で四度目のことで、つまりすでに三百年はどっぷりと人間界にいたことになる。
長老様でもそんなに長く暮らしたことはないと、フェリーシアは得意げに胸を張った。
「なんで、そんなに何度も…」
僕が話しかけた時、遠くで何者かの声が聞こえた。
「誰か来るわ!」
フェリーシアは、険しい表情をして木の茂みに身を潜める。
「まさか……」
その声はなんだか聞いたことのある声で…声と共に、軽やかな蹄の音がして…
「ケンタロウ!!」
僕は堪えきれずに立ちあがり、叫んでいた。
「トカチェン!!」
名前を間違えられたことで一瞬気をそがれたけど、ケンタロウにがっしりと抱き締められて、僕は胸がいっぱいになってしまった。
「ごめん!さっきは本当にごめん!!」
ケンタロウは、何度も何度も僕に向かって頭を下げた。
もう良いって言ってるのに、それでも謝り続けた。
「ケンタロウ、そんなことより、君に話したいことがあるんだ。」
「話したいこと…?何かあったのか?」
その時、ケンタロウの腹の虫が鳴いた。
「あ……」
ケンタロウは決まり悪そうに、ぼりぼりと頭をかいた。
「何か食べながら話そうか。
実は、君に紹介したい人もいるんだ。」
「えっ!紹介したい人?」
ケンタロウは口を開けたまま、大きな目で僕をみつめてる。
フェリーシアのことを聞いたら、この目はもっと大きくなるだろう。
そんなことを考えると、おかしくて僕の口許に小さな笑いが宿った。
ケンタロウはきっと気付いてないと思うけど…
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