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057. 陽炎
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「あ…あの…俺もそこに座って良いかな?」
僕は、背中からかけられた声に振り向いた。
「あ…あぁ…どうぞ。」
そこにいたのは身体が馬、上半身が人間の半獣だった。
僕は半獣に出会ったのはその日が初めてで、気持ちの動揺を隠しながらそう言うのが精一杯だった。
「ありがとう!」
半獣は意外な程、嬉しそうな顔をして僕の隣に座った。
「あ…あの、僕はトカチェアノフ。
君は?」
「トカチェアノフ?……なんだか、舌を噛みそうな名前だな。
俺は一応ケンタロウっていうんだ。」
「一応…?」
「本当の名前はわからないんだ。
俺…捨て子だったから。
気がついたら、いつの間にかまわりがそう呼んでたんだ。」
「そうなんだ…」
僕は、その話を聞いて一瞬胸が熱くなった。
だって、僕も捨て子で、この「トカチェアノフ」って名前は人間の神父様がつけてくれた名前だったから。
でも、そのことは言わなかった。
そんなことを言って、同情しあうのはいやだったから。
「あ、ケンタロウさん、僕、今からお昼ご飯を食べようと思ってたんだけど、一緒に食べる?」
「ケンタロウで良いよ。
そうだな、じゃあ、俺も食べることにしよう。」
僕達が袋から取り出したものは、計らずも似たような少し硬くなったパンと林檎で、それを見てお互いに顔を見合せて微笑んだ。
多分、僕が笑っていたことに彼は気付いてないだろうけど…
「トカチェ…アノフだっけ?
俺、実はトカゲ族と会ったのは初めてなんだ。」
「僕もだよ。
君みたいな半獣族と会ったのは初めて。」
「だろうな…
だから、俺……
話しかけても、また無視されるだろうなって思ってたんだ。
……返事してもらえて嬉しかったよ。」
彼は俯いたままでそう呟き、僕の胸はズキンと痛くなった。
話しかけても無視されるなんてことは、僕もよくあったから。
無視されるだけならまだ良い方だ。
時には、酷い言葉を投げかけられることもある。
もっと酷い時には、店に入れてもらえなかったり、石をなげつけられることだって…
だから、最近は誰にも話しかけない。
人間はもちろんだけど、人間以外の種族にも話しかけることはほとんどなくなった。
僕がたまに話しかけるのは、動物や虫や空…
彼らは、僕に酷い言葉を言ったりはしないから…
「あ…あの…俺もそこに座って良いかな?」
僕は、背中からかけられた声に振り向いた。
「あ…あぁ…どうぞ。」
そこにいたのは身体が馬、上半身が人間の半獣だった。
僕は半獣に出会ったのはその日が初めてで、気持ちの動揺を隠しながらそう言うのが精一杯だった。
「ありがとう!」
半獣は意外な程、嬉しそうな顔をして僕の隣に座った。
「あ…あの、僕はトカチェアノフ。
君は?」
「トカチェアノフ?……なんだか、舌を噛みそうな名前だな。
俺は一応ケンタロウっていうんだ。」
「一応…?」
「本当の名前はわからないんだ。
俺…捨て子だったから。
気がついたら、いつの間にかまわりがそう呼んでたんだ。」
「そうなんだ…」
僕は、その話を聞いて一瞬胸が熱くなった。
だって、僕も捨て子で、この「トカチェアノフ」って名前は人間の神父様がつけてくれた名前だったから。
でも、そのことは言わなかった。
そんなことを言って、同情しあうのはいやだったから。
「あ、ケンタロウさん、僕、今からお昼ご飯を食べようと思ってたんだけど、一緒に食べる?」
「ケンタロウで良いよ。
そうだな、じゃあ、俺も食べることにしよう。」
僕達が袋から取り出したものは、計らずも似たような少し硬くなったパンと林檎で、それを見てお互いに顔を見合せて微笑んだ。
多分、僕が笑っていたことに彼は気付いてないだろうけど…
「トカチェ…アノフだっけ?
俺、実はトカゲ族と会ったのは初めてなんだ。」
「僕もだよ。
君みたいな半獣族と会ったのは初めて。」
「だろうな…
だから、俺……
話しかけても、また無視されるだろうなって思ってたんだ。
……返事してもらえて嬉しかったよ。」
彼は俯いたままでそう呟き、僕の胸はズキンと痛くなった。
話しかけても無視されるなんてことは、僕もよくあったから。
無視されるだけならまだ良い方だ。
時には、酷い言葉を投げかけられることもある。
もっと酷い時には、店に入れてもらえなかったり、石をなげつけられることだって…
だから、最近は誰にも話しかけない。
人間はもちろんだけど、人間以外の種族にも話しかけることはほとんどなくなった。
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