Gift

052. ただ欲しいと思っただけ

６

「……ん？」

グラッジのスコップが何か固いものに触れた。
掘り進めるとそこには小さな木箱があった。
木箱には、鍵もかかってはいない。
蓋を開けると、そこには指輪が１つ入っていた。



「あった！ついにみつけたぞ！」

「ほ、本当ですか？！」

グラッジの声にシモンがよろよろと立ち上がりおぼつかない足取りで歩く。



「おぉ…こ、これが魔術士の指輪…！
ついに…ついに、みつけたのですね…」

シモンは、箱におさめられた魔術士の指輪をみつめ、感動の涙を流す。



「へぇ、こいつが魔術師の指輪か！」

グラッジは、箱の中の指輪に手を伸ばすと、何の躊躇いもなくそれを自分の指にはめた。



「ぎゃあーーーーーーー！
な、な、な、な、なんてことを～～～～～っ！」

「おっ、けっこう似合うじゃないか。」

「あ…あ…あ…」

「どうしたんだ？白目むいて…」

「ど、どうしたもこうしたも…
そ、その指輪はあなたには何の価値もないはず…
なのに、なぜ…？！」

「そうなんだけどな…
でも、アクセサリーとしては良いかなと思ってな。」

グラッジは悪びれた様子もなく、シモンの肩を叩いた。



「じゃ、帰るとするか。
帰りはちゃんと魔法陣が用意してあるんだな。
便利の良いことだ。」

あまりのショックで何も言えないシモンの横でグラッジは服を着替えた。



「なんて顔してるんだ。
あ、報酬はこの指輪で良いからな。
今日は楽しかったよ、ありがとな！」

手を振りながらグラッジは魔法陣の中に入った。
空気の中に掻き消えていくグラッジに向かって、シモンの怒りの雷が落とされた。