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052. ただ欲しいと思っただけ
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ここはとある町の酒場。
酒場とはいえ、しっかりとした食事を採ることも出来るので食堂とも言えるかもしれない。
この酒場には、旅人達が多く集まることで有名だ。
旅人達の憩いの場とも言うべきその店は、今夜もそんな旅人達でとても賑わっていた。
ほとんどの者は幾人かでテーブルを囲んで酒を酌み交わしているが、店のカウンターの片隅でただ一人、ちびりちびりと飲んでいる男がいる。
真っ黒ななめし皮のチュニックに真っ黒な皮のズボン。
長い黒髪には、つばの広い帽子をかぶっている。
腰には見事な剣を携えている所からこの者が剣士だとわかる。
そのすぐ近くのテーブルでは、魔術士とおぼしき数人の男女が、サラダとフルーツをつつきながら何事かを熱く語り合っていた。
「そりゃあ、その気持ちもわかるわよ。
もちろん、一番大切なのは勉強だと思うわ!
でも、アイテムがあるのとないのとでは魔術の威力に大きな差が出るのは間違いないのよ!
私だって別に勉強を疎かにするつもりなんてないわ。」
いささか興奮した口調でそう語るのはまだうら若き小柄な女魔術士だ。
今時、珍しい程古典的な魔術師の扮装をしている。
「僕もクレアに同感だ。
僕達は剣士や格闘家とは違い、ほとんどの者は非力だ。
すぐに強力な術が覚えられるわけじゃないんだしアイテムがあればずいぶん助かるじゃないか。」
そう言ったのは、クレアの横に座る青年。
年の頃もクレアと同じくらいだろうか?
服装や雰囲気から、いかにも駆け出しの魔術師のようだ。
「僕はそんなものには頼りたくないね。
アイテムなんてなくても困らないからね。
いや、むしろ、そう言ったものは邪魔に思えるよ。」
クレアの向かいに座っていた青年がそう言って冷ややかな視線を二人に向けた。
「あなたの家は代々魔術士の家系だし、幼い頃から魔術の英才教育を受けてるからそんなことが言えるのよ!」
「そもそも魔術士はそうあるべきなんだ。
魔術の才能を持った者だけが、後世に魔術を伝えていけば良いのさ。」
「またそれか!」
「君達こそいいかげん諦めたらどうなんだ?
魔術は勉強や修行だけでなんとかなるもんじゃないんだ。
素質がない者には所詮は魔術の真似事しか出来ない。
いくらすごいアイテムがあろうともな。」
二人の魔術士は意地悪な高笑いを残し、その場を去っていった。
酒場とはいえ、しっかりとした食事を採ることも出来るので食堂とも言えるかもしれない。
この酒場には、旅人達が多く集まることで有名だ。
旅人達の憩いの場とも言うべきその店は、今夜もそんな旅人達でとても賑わっていた。
ほとんどの者は幾人かでテーブルを囲んで酒を酌み交わしているが、店のカウンターの片隅でただ一人、ちびりちびりと飲んでいる男がいる。
真っ黒ななめし皮のチュニックに真っ黒な皮のズボン。
長い黒髪には、つばの広い帽子をかぶっている。
腰には見事な剣を携えている所からこの者が剣士だとわかる。
そのすぐ近くのテーブルでは、魔術士とおぼしき数人の男女が、サラダとフルーツをつつきながら何事かを熱く語り合っていた。
「そりゃあ、その気持ちもわかるわよ。
もちろん、一番大切なのは勉強だと思うわ!
でも、アイテムがあるのとないのとでは魔術の威力に大きな差が出るのは間違いないのよ!
私だって別に勉強を疎かにするつもりなんてないわ。」
いささか興奮した口調でそう語るのはまだうら若き小柄な女魔術士だ。
今時、珍しい程古典的な魔術師の扮装をしている。
「僕もクレアに同感だ。
僕達は剣士や格闘家とは違い、ほとんどの者は非力だ。
すぐに強力な術が覚えられるわけじゃないんだしアイテムがあればずいぶん助かるじゃないか。」
そう言ったのは、クレアの横に座る青年。
年の頃もクレアと同じくらいだろうか?
服装や雰囲気から、いかにも駆け出しの魔術師のようだ。
「僕はそんなものには頼りたくないね。
アイテムなんてなくても困らないからね。
いや、むしろ、そう言ったものは邪魔に思えるよ。」
クレアの向かいに座っていた青年がそう言って冷ややかな視線を二人に向けた。
「あなたの家は代々魔術士の家系だし、幼い頃から魔術の英才教育を受けてるからそんなことが言えるのよ!」
「そもそも魔術士はそうあるべきなんだ。
魔術の才能を持った者だけが、後世に魔術を伝えていけば良いのさ。」
「またそれか!」
「君達こそいいかげん諦めたらどうなんだ?
魔術は勉強や修行だけでなんとかなるもんじゃないんだ。
素質がない者には所詮は魔術の真似事しか出来ない。
いくらすごいアイテムがあろうともな。」
二人の魔術士は意地悪な高笑いを残し、その場を去っていった。
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